鈴虫

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俳句


鈴虫の 他に音色の 二つ三つ

鈴虫や 眠れぬ夜の 子守唄

草ごとに 鈴虫の国 ありにけり

鈴虫の やみて酢蔵も 眠りけり

鈴虫や 初音戸惑ふ 闇の中
 

鈴虫に 初音の時も ありにけり

鈴虫の 鳴きやみ夜の 終りけり

鈴虫の 同じ音色は 太古より

良き事の ありて鈴虫 鳴く夜かな

鈴虫の 鳴くもやめるも 意のままに

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 10月3日(土)の栄句会の季語は<鈴虫>でした。
写真の鈴虫は、句会のメンバーが句会のために飼っていたものを
持ってきてくれたもので、私は初めて見ました。

 鈴の振ったように鳴くことからこの名前がつきました。
鳴くのは<オス>だけで、
羽をすりあわせて音を出しています。
目的は<メス>への求愛です(*^_^*)。

 文部省唱歌の「虫の声」には、
♪あれマツムシが鳴いている
チンチロ チンチロ チンチロリン、
あれスズムシも鳴きだした
リンリン リンリン リーンリン♪
とあります。

 秋になると、至る所で虫が鳴きます。
どの虫が鳴いているかわかりませんが、
たくさんの虫が鳴いている様を<虫時雨>といいます。
(蝉時雨と同じような状況です。)
ただ、よ〜〜〜く耳を澄まして見ると、
はっきりと音色の違う虫がいることがわかります。

 そこで一句
 鈴虫の他に音色の二つ三つ
 草ごとに鈴虫の国ありにけり

 鈴虫といえば<秋>
そして、秋は失恋が似合います(*^_^*)。
鈴虫は雄が雌への求愛のために鳴きますが、
どのようにメスはオスを判断するのでしょうか?
イケメンかどうかは暗くてわからないから、
声の良さとか音色の良さで決めるのでしょうか?
中には音痴の鈴虫もいたりして、
もてない鈴虫もいるのでしょう(^_^;)。

そこで一句

 鈴虫やあてなき恋の文書きぬ
 鈴虫や眠れぬ夜の相聞歌
恋の的射抜き鈴虫鳴やみぬ

 鈴虫を人間に見立ててみました(^_-)。

 鈴虫がなくのは本能的なことで、
練習をすることも、失敗をすることもないと思いますが、
ひょっとして、人間と同じように、
生まれて初めて鳴く時(初音)は
緊張をして、うまくいかないかもしれません(*^_^*)。
もしそうだとすると、見えない草の闇の中で
初音の鈴虫が緊張しまくっているのかもしれません、
そんなことを想像して、虫の音を聞いていると楽しくなりますね(^_-)。

 鈴虫や初音戸惑ふ闇の中
 鈴虫に初音の時もありにけり

 自分の人生をふり返って見て、
自分の人生を生きてきたのだろうか?と考えてしまいます。
そして、これから先も…………。

 自分は自由に生きているのだろうか?
いろいろなことに我慢し、相手に合わせるために、自分を抑えている。
そんな自分の生き方を考えると、
鈴虫が本能のままに、生きていることが素晴らしいことと感じます。
(もっとも、鈴虫はそんなこと考えてもいませんが……(>_<))

 鈴虫の鳴くもやめるも意のままに

 同じ虫の音色でも、良いことがあったり、
気分が良い夜には違って聞こえるものです。
食事もそうですね、
そう考えると、人生の達人とは心を調節することができる人と
言えるかもしれません。ただ、このことは非常に難しいことで、
それ故、このことが人生の達人と言われる所以でもあります。

 また、花を愛でたり、季節の移ろいを感じるたり、
虫の音に気づくには、ゆとりが必要です。
いつしか忙しさにかまけて、
その時でなければ味わえない大切なものを
見逃していることが一杯あります。

 良き事のありて鈴虫鳴く夜かな
 

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