月見草
俳句 |
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南吉の 命儚き 月見草 南吉の 一途な恋や 月見草 眠られぬ 夜の相聞 月見草 推敲の 行きつ戻りつ 月見草 夢の世も 待つことばかり 月見草 |
文書けば 言の葉踊る 月見草 月見草 千の臨書に 筆なじむ 記念日の 常と流れぬ 月見草 酢蔵抜け 運河出る路 月見草 ごん狐 矢勝堤に 月見草 |
季語について |
俳句にまつわる話 |
夏のたそがれ時、川原や高原などに佇んでいると、 黄色の花が見る間に咲いて行きますが、 朝方にはしぼんでしまいます。 この花は「待宵草」(まちよいぐさ)ですが、 なぜか昔から月見草と言われています。 学術的にいうと<月見草>はこれとは別種で 初め白色に開き、しぼむと紅くなる種類の花を言います。 このように一般的に言っている月見草は、 待宵草のことですが、この待宵草よりも 「宵待草」という名の方が有名なのは 竹久夢二の作詞による「宵待草」が大流行したことに由来します。 (宵待草は間違いですが、広まって定着したので使われています) ♪ 待てど暮らせどこぬひとを 宵待草のやるせなさ こよいは月も出ぬそうな このように<月見草>は <夜咲いて朝しぼむ>花であるので、 そこから「叶わぬ恋」「一途な恋」を連想しました。 また<待宵草>という花の名から <人を待つ>ことをイメージしました。 ***** 若い頃はラブレターを書くのが好きな青年で、 いろいろな人にラブレターを書いてきました(^_^;)。 ラブレターを書いた経験のある方なら気づいていると思いますが、 その時の状況、例えば夜が深まって行くにつれて、 しらずしらずの内に言葉が一人歩きをし、 どんどん過激なものになって行きます(>_<)。 まるで言葉が踊り出すようです。 それはどうすることもできず、 筆の赴くままに自分の思いを書き上げるのですが、 朝になり冷静になって読み返すと 恥ずかしくて赤面ものでした。 でも、その熱き思いは本当のものであり、 相手の気持ちを揺さぶるには これしかないということはわかっているので、 読み返さずに、夜明けと共に郵便局まで持っていき、 目を瞑って投函をしました。(*^_^*)。 そんな情熱のあった若い頃がなつかしいです。 そこで一句。 文書けば言の葉踊る月見草 童話作家新美南吉は半田市岩滑(やなべ)の生まれです。 代表作として、「ごん狐」や「おじいさんのランプ」 「手袋を買いに」等があります。 29歳の若さで亡くなった南吉は、 才能溢れる人だっただけに、悔しかったことだと思います。 もっともっと生きて、成し遂げたい大きな夢があったことでしょう。 散り急ぐ桜のように死んだ南吉。 そんな南吉にも、歯医者の受付をしていた恋人がいて、 彼女に会うためにせっせと通っていたと聞きました。 人間的でほっとさせられる話です。 そこで一句。 南吉の命儚き月見草 南吉の一途な恋や月見草 ごん狐矢勝堤に月見草 万葉集には、雑歌(ぞうか)・相聞歌(そうもん)・ 挽歌(ばんか)の三つのジャンルがありました。 その内「相聞歌」とは、恋の歌のことです。 寝苦しくて眠られぬ夜は、<初恋の人>のことや <片思いの人>のことを考えていると、 ますます目が冴えて眠られず、 気が付くと、東の空が白んできます。 そこで一句。 眠られぬ夜の相聞月見草 人生は待つことだと思います。 良いことでも悪いことでも、 それが来る日までじっと待って、その日が来てそれが終われば、 次に待つことができて、それを待つ日々が来ます。 その連続が人生だと、私には思えてなりません。 そして、人は最後には「死を待つ」わけです。 そこで一句。 夢の世も待つことばかり月見草 |