十薬

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俳句

十薬や 島の社の 鮑(あわび)絵馬
 
十薬や 巡る離島の 文学碑

十薬や 海女衣干されし 島の路地

十薬や 夕餉は妻の 胃に合わす

訳ありの 家に十薬 犇(ひし)めけり
 
十薬や 蛸飯うまき 島の宿

十薬や 宿の女将の 島訛り

十薬や 荒れ放題に 陶の路地

十薬や 医者の掛持つ 陶の寺

煙突の 墓に十薬 犇めけり
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 十薬(じゅうやく)というよりも、どくだみの方が一般的で
よく知られていると思います。
今となっては十薬は雑草としていたる所にありますが、
あまり草花に関心がなかった私はよく知りませんでした(^^;)。

 所がこの季語で俳句を作らなくてはならなくなり、
なんとか十薬のことを知ろうと、
インターネットで調べて、だいたいの感じは掴めましたが、
それでも実物は見ていませんでした。
幸い、常滑の吟行会があった時に、
メンバーの人に教えてもらいました。
その人に葉をちぎって臭いを嗅げば分かると
教えてもらいました。

 どくだみは強烈な臭気を放ち、
十薬の名のとおり薬草として根、茎、葉とも用途が多く、
ドクダミ茶として子供の頃飲んでいた記憶があります。

 7月に神島に行きました。
神島は文豪三島由紀夫の「潮騒」の舞台となった島として有名ですが、
その日はあいにくの大雨でした。
それにもまけず、島の神社、灯台、
監的硝(かんてきしょう)などを巡りましたが、
島の民宿で食べた蛸飯が特にうまかったです。
 
 島の神社では鮑の貝に願いごとを書く、絵馬がありました。
伊勢志摩にある島の神社らしい風景でした。

 そこで一句。
十薬や島の社の鮑絵馬
十薬や巡る離島の文学碑
十薬や蛸飯うまき島の宿

 俳句の会のために月に2回常滑に行っています。
常滑は今は中部国際空港(セントレア)のある町として
有名になりましたが、
かつては常滑焼きの町として栄えていました。
今は時代が変わり廃業を余儀なくされたため、
至る所に廃窯の煙突残っています。

 そんな中で常滑やきもの散歩道が
観光客で賑わっていますが、
細い路地に入るとその寂れ方がひどく、
寂しい気持ちにさせられます。

そこで一句。
 十薬や荒れ放題に陶の路地
 煙突の墓に十薬犇(ひし)めけり

 

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