カンナ

    俳句の目次へ 

 

俳句

家康の 遺訓の前に 花カンナ

吹抜けの 光集めて カンナの緋

生け花の 造る宇宙や 花カンナ

職退きて 後の青春 カンナ燃ゆ

老ひて知る 時の重さや 花カンナ
 
書の中の 父の大きさ 花カンナ

一人居の 時の軽さや 花カンナ

五十から 始む小筆や 花カンナ

老ひてなお めざすものあり 花カンナ

カンナの緋 母の日記に 恋の文字

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
  10月2日(土)の栄句会の季語はカンナでした。
子供の頃身近に一杯咲いていた気がしますが、
最近はあまり見かけませんね。

 この花は、夏から秋にかけて長く咲きますが、
俳句では<秋>の季語です。

 私の父は書道の師範を取り、
自宅に書道塾を開いて近所の子供や大人に教えていました。
その関係で父が書いたたくさんの書が残っています。
その中で特に私が好きな書は、家康の遺訓です。

******
 人の一生は重荷を負って遠き道を行くが如し、
いそぐべからず。
 不自由を常と思えば不足なし。
心にのぞみおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基。
怒は敵と思え。
勝つ事ばかり知って負くる事を知らざれば、
害、その身に至る。
己を責めて人を責むるな。
及ばざるは過ぎたるより勝れり。

そこで一句。 
 家康の遺訓の前に花カンナ

 蛙の子は蛙と言いますが、
書道に全く関心がなかった私が
なぜか50を過ぎてから小筆をならい始め、
もう4年が過ぎました。
最初はぎこちなかった筆も少しずつ体になじんで
なんとか書道らしくなって来た気がしますが、
それでもやればやるほど、
自分の未熟さが分かり、まだまだ先は長いと思うこの頃です。

 書をやって見て初めて、父の書における力量を
知ることができました。

 そこで一句。
 書の中の父の大きさ花カンナ

 ある本で日本と西洋の
花の活け方の違いを読んだ事があります。
西洋は空間を花で埋め、すき間をできるだけなくし
華やかさを演出します。

 それに引き替え、日本の生け花は
花を活けることで、空間を造っていくそうです。
日本の文化は<間>の文化だと言われますが、
これもそのことをうまく言い当てていますね。

 そこで一句。
 生け花の造る宇宙や花カンナ
 

上に戻る