早稲

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俳句

早稲の香や 纏(まと)ふ媼(おうな)の 笑ひ皺

早稲の香や 田の字造りに 通し土間

開かずの間 開けて早稲田の 風通す

山寺へ 向かふ単線 早稲の風

山寺や 眼下黄金の 早稲田波
 
山寺の 鄙(ひな)びし駅や 早稲日和

早稲日和 働く祖母の 片笑窪

早稲の香や 包まれ眠る 小半時

早稲の香や 外雪隠に 土間竈

仙台へ 向かふやまびこ 早稲の風

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 9月18日(土)の栄句会の季語は早稲(わせ)でした。

 早稲とは、早く成熟し収穫の時期も早い
稲の品種のことで、
北日本では秋冷の訪れが早いので、
その前に収穫できる早稲種が普及しました。

 また、戦中戦後の食糧難の時代は、
早くて多収穫の早稲が盛んに作られましたが、
時代の流れと共にコシヒカリなどの味の良い、
中稲(なかて)のものが多くなりました。

 早稲に対して、
収穫期の遅いものを晩稲(おくて),
中間のものを中稲(なかて)と呼びます。

 農業の経験がない私には苦手な季語です(>_<)。
幸い、父親の実家が幸田にあり、農業をしていたので、
その家の思い出が、この季語との唯一の繋がりです。

 昔の農家といえば、田の字作りの部屋
(田の字のように、4つの和室が並んだ造り)
と通し土間(入口から裏庭まで通った土間)があり、
そこに竈(かまど)がありました。

 また外雪隠(家の外にトイレがある)であったため、
夜中にトイレに行くのに
ものすごく怖い思いをした事を覚えています。

 祖母は頑固で強く、
嫁、姑戦争で悪名が高かったのですが、
孫の私には優しく、泊まった日の朝には
必ず生卵を出してくれました。
(50年前は卵は貴重品でした)
顔に刻まれた深い皺と卵かけご飯が祖母の思い出です。

 そこで一句。
早稲の香や 田の字造りに 通し土間
開かずの間 開けて早稲田の 風通す
早稲の香に 包まれ眠る 小半時
早稲の香や 外雪隠に 土間竈

 一刻(一時)は江戸時代の時間の単位で今の2時間のこと、
半刻(半時)は1時間ですから、
小半時は30分のことです。

 

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