若布

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俳句

職人の 父に味濃き 若布汁

若布汁 煮干しなつかし 母の味

千年の 浜の営み 干若布

何もなき 島のもてなし 若布汁

干若布 天日育む うまさかな
 
干若布 戻せば幸の 千と増え

軒先に 海女衣干す店 干若布

若布干す 島の女の かしましき

流刑地の 島に灯台 若布舟

干若布 素足に波の 丸きかな

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 職人の 父に味濃き 若布汁

 私の父はペンキ屋(建築塗装業)でした。
小学校の頃、ペンキ屋の子と言われるのが恥ずかしくてしかたありませんでした。
汚れる仕事が子供達の中では職業蔑視になり、
いじめの対象となっていました。

 中学、高校の頃は夏休みになると、
父について住宅現場に行っていましたが、
ペンキを塗るということは予想外の重労働です。
ペンキのたっぷりついた刷毛はことのほか重く
塗っている内に右腕が利かなるので、次は左腕と
なんとか交互に腕を代えながらやっていました(*^_^*)。

 それでも限界があり、辛くてしかたありませんでした。
建築現場の職人に10時、12時、3時と、
3回の休憩があることのありがたさと、その必要な意味がよく分かりました。

 父は塗装業と共に看板屋もやっていて、
道路工事の看板などをよく書いていました。
その字のうまさと、手際の良さはすばらしいもので、
さすが書道の師範だけのことはあると関心していました。

 そんな職人の父に合わせたのか
我が家の味付けは濃い方でした。
私はその濃い味噌汁にさらにガーリックを振って、食べていました(^_^;)。
今は健康を考えて薄味にされてしまいましたが、
私は基本的には濃い味が好みなので、
昔の母の味が懐かしく思い出されます。

 若布汁 煮干しなつかし 母の味

 味噌汁の出汁に、今は「だしの素」を入れるのが一般的ですが、
私の子供の頃は、鰹節を削ったり、花がつおを入れたり、
煮干しの時もありました。
今は懐かしいおふくろの味です(*^_^*)。

 干若布 天日育む うまさかな

 昔の人の知恵は凄いですね、
若布を浜に干すことは、遙か昔から
営々と続けられて来たことで、
潮風と天日が若布に旨さを与えてくれます。
 

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