藁塚

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俳句


豊かさに 失ふ矜持 藁こづみ

回忌ごと 消える確執 藁こづみ

藁塚や 祖母の額の 深き皺

藁塚に かすかに残る 青さかな

藁塚の 揺れて恋しと 人招く

 

作為なき 藁塚にある リズムかな

藁塚の 仏に似たる 祈りかな

藁塚の 先柔らかに 天を突く

藁塚に 夜目にも白き 鳥の群

残したき 日本の景や 藁こづみ
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 10月15日(土)の栄句会の季語は<藁塚>でした。
藁塚ってわかりますか?
写真を見ればわかると思います。

 辞書によれば、
脱穀後のわら束を刈田やあぜに円筒形に積み上げたものとありました。
<藁ぼっち>という言い方もします。

 私の子供の頃は、この時期になると至る所に藁塚があったので、
別になんとも思っていませんでしたが、
最近は藁塚を見ませんね。
農業の近代化とか、藁を使って何かするということが
なくなったことが原因なのでしょう。

 高度成長を成し遂げ、豊かになるという大義名分のため、
日本の農業は大きく変わりました。
 この豊かさと引き替えに、日本が失ったものは
いろいろとあると思いますが。
精神的な部分では、わきまえとか、
礼儀とか、秩序とかがあります。
戦前の古いものがすべて良いとは言いませんが、
中にはこれから先も残しておきたいもの、
大切なものがあることだけは確かです。
 
 <矜持(きょうじ)>という言葉があります。
プライドとか誇りという意味ですが、
それも失われた気がします。
それは社会の変化(農業の変化や衰退)に原因がある気がします。

 豊かさに失う矜持藁ぼっち

 父親の実家は農家でした。
祖母は夫を早くになくし、
女でひとつで6人の子供を育てました。
その23回忌が10月にありました。

 男勝りで体もごつく、頑固で
皺だらけの顔と大きな手が印象的でした。
でも孫の私には優しかった。
泊まりに行った日の朝は、必ず卵かけご飯にしてくれました。
今は卵は物価の優等生で安いですが、
今から50年も前の生卵は贅沢品でした(*^_^*)。

 頑固で融通の利かない、
昔気質の祖母だったので、
嫁と姑とのバトルは尋常ではなく、
お嫁さんは大変苦労しました。
そんな苦労話を回忌の後の宴会で聞きました。

 回忌ごと消える確執藁ぼっち

 金曜日になり明日が栄句会の日だから、
もう実物を見て俳句を作ることはできないと諦めて、
何の気なしに職場の窓から遠くを見ていたら、
かすかに藁塚らしきものが見えました。
これはどうしても見に行かねばと、
仕事が終わってから、1時間ばかりそこにいて
俳句をいくつか作りました(*^_^*)。

 その時に撮った携帯からとったのが、
写真の2と3です。
写真の1が正統派の藁塚ですが、
藁塚にもいろいろとあると知りました。

 それでも、実物を見て、
その場で作ると良い句が浮かぶものです(*^_^*)。

 その時の句です。
 藁塚にかすかに残る青さかな
 藁塚や揺れて恋しと人招く
 藁塚や先柔らかに天を突く
 

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