寒鴉
俳句 |
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神前の 俄(にわか)善人 寒烏 都合良き 時だけ惚けぬ 寒烏 寒烏 寂れし島の 船問屋 蛸うまき 流人の島や 寒烏 木の小太刀 積みし古刹や 寒烏 |
寒烏 似非(えせ)善人を 睥睨(へいげい)す 寒烏 いつしか病 自慢かな 失ひし ものの大きさ 寒烏 飽食の ゴミを漁るや 寒烏 待つ人の ありて急ぎぬ 寒烏 |
季語について |
俳句にまつわる話 |
鴉(からす)は年中いますから季語にはなりませんが、 寒鴉は冬の季語になります。 鴉には悪いイメージが多く、 ずるがしこいとか、不吉とか、 人を小馬鹿にしているような感じを受けます。 童謡の<七つの子>にあるような 可愛いイメージはあまりありませんね(^^;)。 <神前の 俄善人 寒鴉> 初詣は日本の良き伝統行儀で、 普段は信仰心など全くない人も、俄(にわか)善人となって、 当たり前のように初詣に出かけます。 行かないとその年は災いが起きるような気がして……。 愛知県では熱田神宮が有名で、 三ヶ日にはものすごい人手で、 神前の遙か彼方から、 大行列ができ前に進むことができません。 混むことがわかっているのに、 何も無理して三ヶ日に行かなくてもと 木の上の鴉は笑っているのでしょう。 <都合良き 時のみ惚けぬ 寒鴉> もの忘れはひどくなるばかりで、 傘などは体から離したら、 確実に電車の中に忘れてきてしまうので、 必ず体の一部が傘に触れているようにしています。 有名な俳優の名前が出てきません。 喉まで出かかっているのに、そこから先が出てきません。 まるで喉に詰まっているようです。 <寒鴉 喉に詰まりし 役者の名> うまく忘れることは、老いの知恵でもあり、 役に立ちつこともあります。 本当に惚けた人は自分が惚けているとわからないわけですが、 都合の悪い時だけ惚けたふりを演じるのも、 体力気力の衰えた老人が、 図太く生きていくための知恵かもしれません。 今NHKの大河ドラマは、平清盛の生涯ですが、 そこに平清盛のライバルとして源義朝(玉木宏)がでてきます。 (源頼朝の父にあたる) ドラマは今後、保元、平治の乱を通して、 平家の時代へと進んで行きます。 その平治の乱の時、破れた源義朝が知多半島の野間に逃れ、 そこで風呂の入っている所を、 家来の裏切りで殺されるという事件がおきました。 義朝は裸のままであり、 その時、せめて小太刀の一つでもあればということから、 義朝の墓(南知多の野間大望にある)には 木の小太刀が沢山積まれて、彼の無念を供養しています。 <木の小太刀 積みし古刹や 寒鴉> (古刹(こさつ)とは、古いお寺のことです。) 2012年の日本、確かに昔に比べれば 経済的な豊かさは得ることができましたが、 なぜか幸せな感じは受けません。 それは豊かさを得るために、何か大切なものを 置き忘れてきたからかもしれません。 <失ひし ものの大きさ 寒鴉> 神島は志摩八丈と呼ばれ、昔流人の島だったそうです。 そこの民宿で食べた蛸飯のうまさを思い出します。 <蛸うまき 流人の島や 寒鴉> |