辛夷

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俳句


建前の 槌(つち)振る鳶(とび)や 花辛夷

辛夷咲く おぼこき巫女の 薄化粧

友の所作 真似て参詣 辛夷咲く

神官の 木靴に光 辛夷咲く

棟札の 美空に高し 花辛夷
 

一湾に あまねく光 辛夷咲く

若衆を 煽るかけ声 辛夷咲く

神前の 山車の軋みや 辛夷咲く

夫婦岩 かくありたしや 辛夷咲く

辛夷咲く 旅の折込 増えにけり
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 3月3日(土)の栄句会の季語は
<辛夷(こぶし)>でした。

 私は辛夷と聞くと、千昌夫の<北国の春>を思い出します(*^_^*)。
♪白樺 青空 南風
辛夷咲く あの丘 北国の春

 この歌詞の良さは、北国の人がどれほど
春を待ちこがれているか、
その心情を的確に表現していることです。

 辛夷の花の蕾が徐々に膨らんでいくことは、
春の訪れを告げる足音であり、
やがて白い大きな花を咲かせ、
北国に春がきます。

 早春の青空に、白く大きな花が
青空をキャンパスに描かれる姿は
春らしい気分を強く与えてくれます。

 家を建てる時、完成した時の喜びはひとしおですが、
建前の時も、いよいよかという思いが沸いてきて
うれしいものです。

 建前は棟上げ(上棟式)とも言われます。
また、棟札とは、建築の記録として棟木などに
取り付ける札のことです。

 建前の時にとび職が屋根の上に上がり
槌を振り上げ、梁を打つ姿は
春の風景としてぴったしのものだと思います。

 それは春はなにがなくても、
わくわくとさせ、何か良いことが起きそうな
予感を与えてくれるからです。

 平成元年(40歳の時)に、自分の家を建てた時を思い出し
この句を作りました。

 建前の 槌振るとびや 花辛夷
 棟札の 美空に高し 花辛夷

 鳥羽の浦村へ牡蠣の食べ放題の折り、
浦村に行く前に伊勢神宮の外宮にお参りした時に
作った句です。

 <おぼこい>とは、幼いとか、子供っぽいという意味ですが、
愛知県や三重県、大阪などの方言らしいので、
<おぼこい>と言わない地方もあるみたいです。

 辛夷咲く おぼこき巫女の 薄化粧
 友の所作 真似て参詣 辛夷咲く
 一湾に あまねく光 辛夷咲く
 神官の 木沓に光 辛夷咲く

 5年に一度行われる半田市の山車祭りは有名で
ちょうど今年がその年にあたります。
その時は、市内の各地区の31台の山車が一同に会します。

 半田市の春祭りの先陣を切るのが、
3月に行われる、乙川地区の祭りで、
通称<けんか祭り>と言われる、荒っぽいまつりが、
半田の春を告げます。
この祭りの特徴は、神社の前の急坂を山車が上がる
<坂上げ神事>です。

 若衆を 煽るかけ声 辛夷咲く
 神前の 山車の軋みや 花辛夷
 

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