鶏頭花

    俳句の目次へ 

 

俳句

大地より 授かる血潮 鶏頭花

地震の地に 日々の営み 鶏頭花

地震の地に 長き黙祷 鶏頭花

残されし 人は語り部 鶏頭花

還暦や 燃ゆるものあり 鶏頭花
 
復興の 足音遠き 鶏頭花

震災や 希望は消せぬ 鶏頭花

鎮魂の 海は静まり 鶏頭花

松島に 賑わひ戻り 鶏頭花

住む人の 人柄偲ぶ 鶏頭花

 

季語について


 10月20日(土)の栄句会の季語は鶏頭でした。

 鶏頭の花は鶏のとさかに似ていることから、
この名前が付きました。
秋の季語ですが、この季節にはどこでも咲いている
一般的で誰でも知っている花です。

 でも、いざ鶏頭の花を探すとなると、
なかなか見つかりません。
本当に不思議です。

 そこで、インターネットで
鶏頭の花の咲いている公園を検索しました。
すると東浦にある<於大(おだい)公園>がヒットしました。
そこで、仕事帰りに車を走らせ(職場から車で30分くらい)
鶏頭の花を見てきました。

 於大の方(おだいのかた)とは、徳川家康の生母にあたる人で、
知多半島の東浦町の出身で、於大の方にちなんだ公園です。

 想像で俳句を作るには限界があり、
いつも同じような感じの句になってしまいます。
やはり実際のものを見て、そこから感じるものを
俳句にすることが重要です。

 公園で鶏頭の咲く花壇を
長い時間かけて眺めていると、
花だけでなく茎も赤い色であることに気がつきました。
まるで人間の血管のような……。
そこで、できた句が

 大地より授かる血潮鶏頭花

です。

 現場にいくことが良い句をつくる条件ですが、
そうとわかっていてもなかなか難しく、
特に私はめんどくさがりやだから
必要に迫られないとなかなか行けません。
反省です(;>_<;)。

 10月に2泊3日で、東北の大震災の跡を訪ねました。
その惨状を目の当たりにすると、
こみ上げてくるものがあります。
震災の句を作りたいと何度も思いましたが、
なかなか旨くできませんでした。
でも、実際に現地に立つことで、
自分なりに満足のいく句を読むことができました。
自画自賛ですが、明らかに力強さが違います。

 一般的な鶏頭は真っ赤な花です。
そこに情熱と生命力感じます。
また、鶏頭の花は供花として、
墓や仏壇に供えられると聞きました。
そこから、死者への思いが感じられました。

 地震の地に日々の営み鶏頭花

 震災から一年半が経ちましたが、
本格的な復旧はまだまだですが、
それでも、日常の生活は営まれています。
そこに人間の逞しさ、庶民の強さを感じました。
この日々の営みが何の不自由もなく、
滞りなくできることが、真の復興がなった時だと思います。

 宮城県の女川(おながわ)の蒲鉾店(高政)の
店長さんがビデオを交えて震災のことを
熱く語ってくれました。

 話の接ぎ穂がないほど、留めなく流暢に話されたことから、
同じ話を何度も何度も繰り返し話してこられたのだと思いました。

 震災で生き残った人が、死んで行った人の無念、
思いを伝える語り部になっています。

 残されし人は語り部鶏頭花
 

 

俳句にまつわる話



 

上に戻る