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俳句

祭髪 日がな厨に 母の声

拍子木に 走る緊張 祭足袋

祭寄付 隣近所と 合わせけり

畳拭き 襖も外し 祭膳

村に住む 術も教えし 祭笛

 
引回す 山車も見得切る 祭かな

神子舞に 始まり終わる 村祭

舞終えし 神子に笑顔の 村祭

初陣の ごとき高ぶり 初祭

道検分 祭法被の 練り歩く

 

季語について



 8月3日(土)の栄句会の季語は<祭>でした。

 祭は四季を通じて行われますが、
俳句での季節は夏です。
それ以外の祭は、春祭りとか秋祭りと言って区別します。

 祭から思い出すことは
子供の頃のことです。

 私は蒲郡に生まれ、結婚するまで住んでいました。
今から40年以上前の話ですが、
その頃はどこの家(実家であると特に)でも祭りが
最大のイベントで、親戚をよんで接待をしていました。

 今のように回転寿司がある時代ではないので、
祭のご馳走といえば、巻き寿司やいなり寿司と
それに刺身などを加えたものでした。

 私の家は実家だったこともあり、
親戚が集まってくるので、大量の寿司をつくる必要がありました。
材料の仕込みは前の日からですが、
巻くのは当日で、
朝からひたすら寿司を巻く母のすがたが厨にありました。

 そのころは和服で日本髪を結った
(記憶が定かではありませんので、
違っているかもしれません……。)母が
朝から台所にこもりっきりでした。

 祭髪 日がな厨に 母の声

 昔の家は家で葬式や法事をやったので、
ふすまで仕切った連続した座敷がありました。

 お祭りになると、襖を取り外し
大きな部屋にして、畳を拭いて
物置から座卓などを引っ張り出して
祭り膳の準備したものです。

 とにかく子供の頃は刺身が大好きで、
日頃は食べられない刺身が
この時ばかりは思い切り食べらるので、
並んだお膳を見ながらわくわくしたものです。

 畳拭き 襖も外し 祭膳

 半田に越して来てからは
地元の祭りには参加していません。
ただ、つきあいで祭りの寄付だけは払っています。

 たまたま家内がいない時に、
祭りの寄付を集めに来ると、
隣近所の相場を聞いて、同じ金額を払っています。
出過ぎてもいけませんし、義理を欠いてもいけません。

 祭寄付 隣近所と 合はせけ

 祭りの俳句を作るのに、
半田の博物館に行ってきました。
そこには各組の山車の実物が順番に飾られています。
そこで祭りのビデオをみました。

 祭り囃子の稽古は、年寄りが子供へ
伝統の笛や太鼓を教えるわけですが、
その中で、村に生きていくための術まで
教えているような気がしてなりません。

 村に住む 術も教えし 祭り笛
 神子舞に 始まり終わる 祭りかな
 舞終えし 神子に笑顔の 祭りかな
 

 

俳句にまつわる話



 

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