落とし文

    俳句の目次へ 

 

俳句

三成の 果たせぬ夢や 落し文

落し文 杣道(そまみち)果てて 島灯台

兵卒の 眠る戦場 落し文

義朝の 墓に木の太刀 落し文

潮騒を かき消す驟雨(しゆうう) 落し文
 
島遍路 地蔵の笑みや 落し文

落し文 島の社に 貝の絵馬

落し文 巡る離島の 文学碑

ゴン狐 届かぬ思ひ 落し文

旗印 なびく陣跡 落し文
 

 

季語について

 
 7月21日(土)の栄句会の季語は<落し文>でした。

 季語の<落し文>とは、
オトシブミ科の昆虫のことで、
クヌギやナラなどの葉を巻いて巻物の
書状に似た巣を作り、そこへ卵を産みつけます。
その後、それを切って地上に落とすものもあります。

 また<落し文>は、政治批判など
公然と言えないことを書いて、
人目につきやすい所に落としておく文書のことを意味します。

 私は<落し文>から、夏の野山を連想すると同時に、
人に言えない思いとか、無念の思いなども連想しました。

 なかなか旅行とかハイキングに行けないので、
昔行った所を思い出しながら
句を作っています(;>_<;)。

 神島に行った時は、大雨でした。
神島は三島由紀夫の「潮騒」の舞台となった島で、
それに関連する文学碑がいくつかあります。
それを巡りには、島の中の細い山道を
登ったり下ったりしなければなりません。
結構大変です(*^_^*)。

 落し文島の社に貝の絵馬

 島の神社に鮑の貝殻を絵馬にしたものが
奉納されていました。

 落し文巡る離島の文学碑
 潮騒をかき消す驟雨落し文

 今年のNHKの大河ドラマは「平清盛」です。
そのライバルである源義朝(よしとも)は、
源氏の頭領で、平治の乱で平清盛に破れ
知多半島の野間(美浜町)の長田氏を
頼って落ち延びますが、
長田氏の裏切りにあって湯殿で殺されます。

 その時、義朝が叫んだ言葉
「我に小太刀の一本なりともあれば」に、ちなんで
義朝の墓(美浜町野間の野間大望にある)には、
木の小太刀が一杯奉納されています。

 義朝の墓に木の太刀落し文

 天下分け目の関ヶ原。
 西軍は石田三成を中心に約9万、
東軍は大将の徳川家康率いる約9万、
軍勢の上では互角でした。

 しかし、西軍の小早川秀秋の裏切りによって
西軍は大敗北、石田三成はわずかな手勢と共に
自分の居城である佐和山へ落ちて行きます。
きっとその時は何で?という思いで一杯だったでしょう。

 三成の落ちし山道落し文
 佐和山へ落ちる三成落し文
 陣跡に眠る兵卒落し文
 

 

俳句にまつわる話



 

上に戻る