秋刀魚
俳句 |
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激動の 昭和は遠き 秋刀魚かな 世情など 話して食す 秋刀魚かな 清濁を 合わせ還暦 秋刀魚喰ふ 七輪の 煙なつかし 秋刀魚かな はらわたの 染みる今夜の 秋刀魚かな |
還暦の 吾も旬なり 秋刀魚喰ふ 苦きこと ありて人生 秋刀魚喰ふ 働ける ことの幸せ 秋刀魚喰ふ 無沙汰なる 妻の故郷 塩秋刀魚 子の去りて 食卓広き 秋刀魚かな |
季語について |
10月6日(土)の栄句会の季語は<秋刀魚>でした。 秋の旬の食べ物と聞けば、私はすぐに秋刀魚を思い出します。 今改めて漢字を見ると、名前に秋が入っているのですから、 はるか昔から、秋の代表する魚だと、 誰もが認めていたわけですね(*^_^*)。 それと秋刀魚の姿形から、刀を持ってきた所も 見事としかいえません。 まさしく秋を代表する魚であり、 年によって値段は多少違いますが それでも昔から庶民の味方でした。 秋刀魚からは、どうしても昔のことが思い出されてしまいます。 どこの家でも道に出て、七輪で秋刀魚を焼いていました。 あの煙には、日本の夢、希望がありました。 七輪の 煙なつかし 秋刀魚かな 激動の 昭和は遠き 秋刀魚かな 子供の頃は、秋刀魚のはらわたが食べられなかったので、 しっぽの方が好きでしたが、 でも、大人になって、はらわたの美味しさを知ってからは、 頭の方が断然好きになりました。 あの苦みは大人の味ですね(*^_^*)。 はらわたの 染みる今夜の 秋刀魚かな 秋刀魚の旨さははらわたにあります。 あの苦みがあってこそ、秋刀魚の味に深みを増します。 ちょっと大げさですが、まさに秋刀魚は人生そのものですね。 苦きこと ありて人生 秋刀魚かな 不自由が自由のありがたみを感じさせ、 緊張があればこそ、それが解けた時に、弛緩の喜びを感じます。 貧乏がものの価値を知らせ、豊かさを感じます。 平穏で静かな人生を幸せに感じるのも、 波乱の時代があったればこそ。 最初から最後までなにもない人生より、 苦しみや波乱がある人生を私は望みます。 そして死ぬ時に<ああ楽しかった>と言える人生を……。 清濁を 合わせ還暦 秋刀魚喰ふ <清濁を合わせ飲む>という言葉があります。 また<水清ければ魚住まず>という言葉もあります。 このように、人間として生きていくためには、 清い水ばかりでなく、時には濁った水も 飲まなければなりません。 犯罪に関わったり、人を大きく傷つけることはだめですが……。 清濁を合わせ飲む気概が必要だと思います。 還暦をすぎて、自分の人生を振り返ると 結構<やばい>ことがありました。 でも、それが今の自分の人生を彩っていると思います(*^_^*)。 |
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