竹の秋

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俳句

雪隠の 小窓切取る 竹の秋

床の間に 野花一輪 竹の秋

白砂の 描く海原 竹の秋

毛氈に 作務衣の緑 竹の秋

添えられし 和菓子薄紅 竹の秋
 
木漏れ日を 受ける手庇 竹の秋

笹音に 心ざわめく 竹の秋

竹の秋 静寂深めし 添水(そうず)かな

鹿威し 瀬音かすかに 竹の秋

胡座かき 抹茶飲む庭 竹の秋

 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 4月20日(土)の栄句会の季語は<竹の秋>でした。

 「竹の秋」とは……ネットより
 
 筍の成長力は、親株からもらっているのです。
竹は根は意外と少ないですが、
地下は網の目のように地下茎がつながっています。
この網の目のような地下茎を伝って
親から養分をいただいてしまうのです。

 そのため、親の竹は、新緑の時期だというのに
葉っぱが黄色く枯れたようになり終には落葉してしまいます。
まるで秋の紅葉。
然るにこの現象を「竹の秋」といいます。
「竹の秋」は俳句の季語にも使われます。
字句は「秋」とありますが、季節は春を表す季語です。

 同じように麦の秋という季語もあります。
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 「竹の秋」で句を作ることになり、竹林のある所ということで
安城の丈山苑を思いだし行ってきました。
そこには丈山苑を取り囲むように、見事な竹林がありました。

 <丈山苑>とは……ネットより
 丈山苑は、三河国碧海郡泉郷(現在の安城市和泉町)出身の
江戸時代の文人石川丈山の風雅の精神を体感できる施設です。

 石川丈山は、徳川家康に仕えましたが、
33歳の時に大坂夏の陣で軍令違反となり、
武士を捨てることになりました。
その後は儒学者となり、京都一乗寺に詩仙堂を開き、
詩作を楽しむ悠々自適の生活を送りました。

 苑内の中央には、詩仙堂を彷彿させる
木造建築の「詩泉閣」が建てられ、
「詩仙の間」には丈山の賛、
探幽の画と伝えられる三十六詩仙の額(複製)が飾られています。
また、詩泉閣の周りには作庭家として丈山の代表作である
三庭園をイメージした三種の庭園を配しています。
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 雪隠の小窓切取る竹の秋

 雪隠(せっちん)とはトイレの別名ですが、今はこんな言葉は使いません。
昔のくみ取り式で臭くて暗いトイレをこういう呼び方をすると
なんとも素敵な空間に思えてきます。

 「雪隠詰め」という言葉があります。
将棋で相手の王将を、盤の隅に追い込んで詰めることから、
逃げ場のない所へ追い詰めることを言います。
ちなみに東司(とうす)とはお寺のトイレのことです。

 鹿威し静寂深めし竹の秋

 鹿威しとは、一方を切り落とした竹筒を支点でささえ、
その切り口に水を注いでためると、
重みで下がるとともに水が流れ出る。
その反動ではね上がり、
他端が下に置かれた石などを打って音を出すしかけのものです。
元来は田畑を荒らすいのししやしかなどを音で脅して追い払うためのもので、
「添水(そうず)」ともいいます。

 庭園用の鹿威しは
石川丈山が京都の詩仙堂で作ったものが最初と言われています。
音のない静寂(しじま)が包む庭園に、
決まったリズムで静寂を破る「鹿威し」の音が、
庭園の静けさを一層増すような気がします。

 白砂の描く海原竹の秋

 石庭の白砂には箒目の筋が付けられています。
置かれた石が小島を、白砂が海原を示しているそうです。

 毛氈に作務衣の緑竹の秋
 添えられし和菓子薄紅竹の秋

 丈山苑は見事な庭を眺めながら、400円で
抹茶と和菓子(饅頭)をいただくことができます。

 丈山苑の毛氈は紺色でした。
毛氈は赤が定番ですが、紺色も落ち着いた雰囲気を醸し出してくれます。
お茶を運んでくれたのは薄緑色の作務衣を着た女性でした。
新緑の庭を見ながら、このさい作法は気にせずにと、
毛氈にあぐらをかきお茶を飲みました。
 

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