秋めく
俳句 |
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秋めくや 瑠璃(るり)の瓦に 金の鴟尾(しび) 見得少し 老いの矜持(きようじ)や 秋めきぬ 秋めくや 宮を小走る 巫女袴 Gパンの 並び秋めく 天を蹴る 旅路果(は)つ 秋めく浜に 空貝(うつせがい) |
秋めくや 京の老舗の 佇(たたづ)まい 茅葺の 秋めく山に 添ひて立つ 客待つや 秋めく京の 女車夫 茅葺の 秋めく村や 忌中の灯 秋めくや 瑠璃(るり)の入江に 舫舟(もやいぶね) |
季語について |
俳句にまつわる話 |
9月7日(土)の栄句会の季語は、<秋めく>でした。 この季語で俳句を作っていたのは、 八月末でまだまだ暑くて、 なかなか<秋めく>という気分にはなれませんでした。 俳句は句会が開かれる頃に、 その季節が感じられるようにするために、 少し前の季語に設定されているので、仕方がありません。 俳句の季節は、2月〜4月までが春、5月から7月までが夏、 8月〜10月までが秋、11月から1月までが冬となっています。 今の季節感とずれていますが、 これは旧暦でのことで、一ヶ月ぐらいの時差を考えると、 だいたい合ってくると思います。 秋めくや 瑠璃の瓦に 金の鴟尾 今年の夏にバスツアーで、京都の平安神宮と 清水寺に行ってきました。 この句は平安神宮を詠んだものです。 行かれた方はご存じだと思いますが、 バカでかい朱塗りの大鳥居と 慶天門の先の、大海原を思わせる真っ白な玉砂利 さらに、その向こうに壮大な神殿(大極殿)があります。 大極殿は白壁と朱の柱、深い緑色の瓦(瑠璃色)の大屋根、 そして、その両端に荘厳な金の鴟尾が鎮座しています。 神官や巫女さんも本格的で、 どこかの安っぽい神社と違って、 髪を結い、髪飾りをつけ、白の着物に袴は朱色です。 そこからは、凛とした気品が漂っています。 でも、そんな巫女さんを走らせるような ことが何かあったら……。 そうなったら彼女達は、どうするのだろか? きっと、京都の平安神宮だから、 決して走ったりせずに、気持ちを抑えて、 品よく小走りをするのではなかろうかと そんな妄想をたくましくして、次の句を作りました(*^_^*)。 秋めくや 宮を小走る 巫女袴 見栄少し 老いの矜持や 秋めきぬ 矜持(きょうじ)という言葉は、 プライドとか、誇りという意味ですが、 私はこの言葉が好きです。 そして、これから先どんどん老いていきますが、 最低限の矜持はもっていたいと思っています。 この年になって、生きることが楽になってきたのは、 見栄をはる必要がなくなってきたからだと思います。 若い時の私は、人の目を気にし、 人からよく思われたいために、無理をしていたことが多々ありました。 でも、今は見栄を張る必要もなくなり、 ありのままの自分が出せるようになってきました。 もちろん、まだまだですが……。。 それと裏腹に、すべての見栄をなくしたら、 自分を向上させる力もなくなってしまうような気もします。 豊かに年を重ね、素敵な老人になるためには、 最低限の見栄は必要で、 それによってこそ、老いの矜持が保てると思います。 |