蝌蚪

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俳句


新卒の ぽろりため口 蝌蚪に足

手のひらに 掬へば蝌蚪の 温きかな

蝌蚪捕る子 背丈に余る 柄杓(ひしやく)持ち

蝌蚪に足 湯船に九九の 暗記かな

蝌蚪の陣 率ゐる王の 志

 

川に花 散れば宴ぞ 蝌蚪の国

したたかに 生くる雑兵(ぞうひよう) 蝌蚪の陣

はなたれと 赤いほっぺと 蝌蚪の里

使ひ切る までが命や 蝌蚪生るる

生き下手は 今も変らじ 蝌蚪に足

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 俳句を始めなければ知らなかった言葉はいろいろとありますが、
この[蝌蚪]もそうです。
[蝌蚪]とは、おたまじゃくしのことです。

 小学校の頃は、よくおたまじゃくしを捕りに行った記憶があるのは、
きっと理科の宿題とかのためだったのでしょう。

 [蝌蚪]を今さら見る必要もないのですが、
そうなると、どうしても昔の思い出しかないので、
なんとか実物の[蝌蚪]を今見て、感じたことを俳句にしたいと思って、
南吉の彼岸花で有名な岩滑や矢勝川の辺りを散策したのですが、
収穫はありませんでした(^_^;)。

 水田に水が張られて、おたまじゃくしは繁殖をするのですから、
四月の中旬頃では、田に水が張られていなかったので、
来る時期が早かったのだと思います。

 新卒の ぽろりタメ口 蝌蚪に足

 おたまじゃくしに足が生える5月頃になると、
新卒の社員も職場になれて、
そろそろ緊張がゆるむ頃です。
なれない敬語に気を使っていたのに、
つい気が緩んで、ぽろりとタメ口を…。
すぐに気が付き反省して、落ち込んだりして……。
新卒は大変ですね(^_^;)。

 かとに足 湯船に九九の 暗記かな

 今はもの覚えが悪くて、暗記は大の苦手ですが、
今は暗記するべきものがほとんどないので助かります。

 今学校で九九を習うのは何年生なのかわかりませんが、
私は小学校の二年生の頃に習った気がします。
一の段、二の段と順に暗記して、先生の前で間違わずに暗記できると、
スタンプを押してもらうことができました。
全段の暗記を競争していたことを覚えています。

 銭湯で九九の暗記をして、正しく言えたら湯船から出る、
そんなことをして九九を覚えていました。

 九九の暗記と、蝌蚪を捕りに行った頃の年代の重なり
からこの句を作りました。

 蝌蚪の陣 率いる王の 志
 したたかに 生くる雑兵 蝌蚪の紐

 蝌蚪は固まって行動する習性があるので、[蝌蚪の紐]とか、
[蝌蚪の陣]のように、軍隊になぞらえることもあります。
どんな集団にもリーダーがいるもの、
リーダーによって、集団の運命が決まると言っても過言ではありません。

 そんな思いで、蝌蚪の集団を仕切る王の存在を想像し、
志の強く貴い王によって、
その集団の蝌蚪が一匹でも多く、蛙へと成長できることを願いました。

 池に花 散れば宴ぞ 蝌蚪の国

 人間は桜の花の美しさを咲いている時に感じますが、
蝌蚪の立場になったら、どうなのか?と思って作った句です。

 水底に住む蝌蚪にとって、
水面に散って浮かぶ桜の花はさぞ美しいものでしょう、
その美しい桜を見て、蝌蚪の国では
花見の宴が開かれているかも知れません(*^_^*)。

 

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