夕立
俳句 |
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草花に 命一献(いつこん) 夕立晴 広重の 青の冴へにし 夕立かな 夕立の 後の土塊(つちくれ) 喜びぬ 夕立の 後の逆転 勝利かな 夕立や 神保町(じんぼうちよう)に 古書漁る |
弥次喜多の 茶店かけ込む 夕立かな スタンドの 微動だにせぬ 夕立かな 夕立や 淀みし街の 暗転す 澱沈む 心洗わる 夕立かな 応援の 母は夕立 やり過ごす |
季語について |
俳句にまつわる話 |
草花に 命一献 夕立晴 一献(いっこん)とは?盃一杯の酒とか、酒をふるまうことを言います。 夕立によって水が与えられ、生き返る草花を命一献で表現しました。 広重の 青の冴えにし 夕立かな 夕立と言えば、安藤広重の<大はしあたけの夕立>という浮世絵を思い出します。 夕立を斜線で描き、その線に濃淡をつけることで、奥行きと力強さを現しています。 広重の浮世絵は<広重ブルー>といわれ、青が特徴で、ゴッホなどに影響を与えました。 この夕立の絵も、川の色に青が使われ、それによって夕立の涼しさが感じられます。 夕立の 後の土塊(つちくれ) 喜びぬ 乾ききった空気を夕立は一変してくれます。 それによって人だけでなく、草花も、土も喜んでいると思います。 土塊は、柔らかく脹らみ、その感触は子供の頃に住んでいた家の庭にあった 夏みかんの木の下の土を思い出します。 そこには無数の蝉の穴が開いていました。 夕立の 後の逆転 勝利かな 6月22日に終了したTBSドラマ<ルーズベルトゲーム>は面白かったです。 半沢直樹と同じ作家(池井戸潤)のものです。 題名の由来は、野球の試合で一番面白いのは、8対7のスコアーであると 言った、第32代アメリカ大統領、フランクリンルーズベルトの言葉からです。 中堅の電子部品メーカー「青島製作所」の命運と、その会社の野球部の 命運を同時進行の形で描いていき、逆転に継ぐ逆転は毎回楽しませてもらいました。 この句は大夕立によって、野球のゲームが一時中断され、 その後、再開されるも試合の流れが変わり逆転勝利を治めるというものです。 まあ何かのきっかけでがらりとムードが変わることは、 よくあることですが、夕立によって人の気分が変わるからなのでしょう。 夕立や 神保町に 古書漁る 東京の神田神保町は古本の街、若い頃よく出張で東京に行った時は 必ずそこへ行って、長い時間かけて古書店めぐりをしました。 なぜか今思うと夕立の匂いがよく似合い街です。 |