干柿

    俳句の目次へ 

 

俳句

干柿や 男勝りな 祖母の指

干柿や 古里墓を 残すのみ

干柿や 宿場見下ろす 木曽の関

干柿の 値札手書きの 無人店

干柿や 岐路(きろ)に標(しるべ)の 道祖神
 
干柿や 産着干さるる 茅葺家

干柿や 薪積む木曽の 樵小屋

干柿や 補助輪押して 帰る父子

干柿の 渋の如くに 人活かす

干柿や いつか晴着の 死語なりぬ
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
 柿も干柿も秋の季語です。
名鉄ハイキングなどで柿の産地を歩くと、
各家の軒下に柿が吊されています。
あの姿を柿簾というのですが、見事な表現だと思います。

 干し柿や 男勝りな 祖母の指

 父方の祖母の話です。
 祖母は若い時に夫を亡くし、
農業によって女手一つで6人の子供を育てました。
今から50年以上も前の話ですが、
今は珍しい草葺き屋根の家で、外に厠があり、
五右衛門風呂に入ったのは、懐かしい思い出です。
 
 泊まりに行くと、鶏を飼っていたので、
朝は贅沢に卵かけご飯を必ず食わせてくれました。
額や手には深い皺があり、その苦労を物語っているようです。
また、頑固で勝ち気な性格なので、
嫁姑問題は大変だったと聞いています。

 干し柿や 古里墓を 残すのみ

 私は蒲郡市に生まれ、25才で半田市に来るまで住んでいました。
長男でしたが、父が亡くなり、母を半田に引き取った時に
実家を処分し、今は墓だけが残っています。

 年に2度盆と暮れに親戚回りと墓参りをしていますが、
実家がなくなるというのは、寂しいもので、
古里までなくしたような気がします。

 干し柿の 値札手書きの 無人店

 段ボールにマジックで値段が書いてある値札は
ローカルな雰囲気があり、手作り感と人情味が感じられ
無人店には似合います。

 干し柿や 渋のごとくに 人活かす

 渋柿は、干し柿にすると甘くなります。
渋柿はそのまま食べるには都合が悪いけど
その渋が干し柿になると、甘さを増します。
それと同じように、人の欠点を活かすことで、
その人を活かす、これが肝心ですね。
 

上に戻る