残暑
俳句 |
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着ぐるみの 中の残暑を 思ひやる 午後二時の 隅田の残暑 川下り 今競(せ)りを 終へし築地(つきじ)の 残暑かな 股割(またわり)に 力士苦悶の 残暑かな 身ぐるみを はがれ残暑の 海の家 |
廃線の 下りぬ遮断機 秋暑し 船虫の 無為に蠢く 残暑かな 初版本 求め残暑の 神保町 西東 違(たが)へ人待つ 駅残暑 水飲み場 走る球児の 残暑かな |
季語について |
俳句にまつわる話 |
残暑とは、立秋(8月8日頃)を過ぎた後の暑さのことです。 でも、その頃は最も暑い頃で、とても残暑とは言えません。 俳句では8月は秋ですので、残暑は初秋の季語です。 また、秋暑しとも言います。 着ぐるみの 中の残暑を 思ひやる 最近はご当地ゆるキャラブームで、 くまもん、ふなっしーなどが大人気ですが、 その着ぐるみの中に入っている人の大変さを思いやっての一句です。 股割(またわり)に 力士苦悶の 残暑かな 以前東京をめぐるバスツアーで、 相撲部屋の朝稽古を見ることができました。 その部屋は十両以上の関取もいない 小さな相撲部屋でしたが、 若い力士が、ぶつかり稽古をして泥だらけになったり、 四股を踏んだり、てっぽうを打ったりしていました。 股割とは、けがをしないための柔軟性を養うことが目的ですが、 肥った人には大変な苦行です。 身ぐるみを はがれ残暑の 海の家 この句は意味がよくわからないといわれました。 夏の間は大盛況だった海の家も秋の訪れとともに、 解体され、鉄骨の骨組みだけ残して、 後は何もない状態で砂浜に放置されています。 それを身ぐるみはがされたと例えたものです。 廃線の 下りぬ遮断機 秋暑し 旧中山道の赤坂宿をハイキングで訪ねた時の情景です。 廃線のため、線路はないけど踏切と踏切小屋が残っていました。 その踏切小屋は廃屋のなり、今まで数限りなく 下りては上がる動作を繰り返してきた遮断機も 永遠に下りない遮断機となりました。 船虫の 無為に蠢く 残暑かな 海岸の堤防を歩いていると、ゴキブリに似た船虫がいます。 船虫が動いているのは、船虫ならではの意味があってのことだと思いますが、 ひょとしたら、暑くてじっとしておれなくて、 ただ動き回っているだけかもしれませんね。 今でこそクーラーがありますが、 その昔は、夕涼みと称して、人間も暑さを耐えるために、 外へでてきていました。 水飲み場 走る球児の 残暑かな 中学校では野球部でした。 その頃は、練習中は水を飲ませないというのが指導方針だったみたいで、 夏の練習の苦痛の一つは水が飲めないことでした。 今は方針が変わったみたいですが、 私の学生のころは、とにかく水が飲みたい一心で、 練習が終わると、一斉に水飲み場へ走ったものです。 |