水温む

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俳句

米研ぎし 薄き母の背 水温む

水温む 仕事楽しと 娘のメール

水温む 父の遺品に 未完の絵

娘と酒を 酌めば饒舌 水温む

山車蔵に 出を待つ山車や 水温む
 
ミサ終へて だっこせがむ子 水温む

水温む 美空貫く 金の千木

神杉の 謂れ説く巫女 水温む

巫女髪の 隠すピアスや 水温む

水温む 行交ふ人の 背筋伸ぶ

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
 水温むとは、 春になって、水の温かさを増してくることで、春の季語です。

 米研ぎし 薄き母の背 水温む

 母親というと割烹着姿で台所に立っていた姿を思い出します。
晩年は明るくなりましたが、生活苦や体が弱かった(頭痛持ち)こともあって
若い時の母はどこか悲しげでした。
子供にはわからない何かがあったのかもしれません。

 水温む 仕事楽しと 娘のメール

 自分には責任のないことで、傷つき、つまづいた娘、
そんなこんやの相談などで、月に一度くらい
娘とのメールのやりとりが始まりました。
(娘から来たメールに私が返事を書くという形で)

 メールは自分の娘ながら、文章も内容もしっかりしていて、
要領を得たものであることに感心をしています。
このことで子供の成長を知ることができたのは不幸中の幸いです。

 <今の仕事が楽しい><今の職場は雰囲気が良く働きがいがある>
<過去のことを考えるよりも、今のことを考えて行きたい>
このようなメールの言葉から、
娘の立ち直りの兆しが見えたのはとても嬉しかったです。

 娘と酒を 酌めば饒舌 水温む

 いろいろと問題のある娘ですが、
良い所といえば、独立心が旺盛で
人や親に頼らずに自分で問題を解決することです。
(生きる力を持っていること))
そのため名古屋に住んでいても、ほとんど家には帰ってこず、
年に一度か多くて二度くらいです。

 大きな変化がなければ、連絡もしてきませんが、
昔から、便りないのは無事な知らせといいますから、
それはそれでいいのでしょう。
もっとも、家内は我慢できなくて時々電話はしているようですが……。

 なぜか娘とは話が合います。
趣味とか考え方とか、興味の方向が同じなので、
話がしやすいのでしょう。
特に酒を一緒に呑むと私は饒舌になって、熱く語ってしまいます(#^.^#)。
それは離れて暮らしているからかもしれませんね、
やはり適度な間合いは大事です。

 水温む 父の遺品に 未完の絵

 年をとると亡くなった両親が懐かしくなり、
私の句材となって頻繁に登場します。
普段は仏壇にもほとんど手を合わさない私ですが、
頻繁に親の句をつくることが、
親孝行や供養となっているのかもしれません。

 父は多才な人で、自分が書や俳句の習い事を始めて
ようやくそのすごさが分かってきました。
それは力量が分かる程度まで自分が成長をした証なのかもしれません。

書に限らず絵も上手で、水彩から油絵まで書いていました。
親戚の家に行くと父の書や絵が飾ってあり、
それを見ると、父のすごさを思い知ります。
 

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