冬めく

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俳句

冬めきて 気になるレジの おでん種

容赦なく 切られ並木の 冬めきぬ

冬めきて 手持ち無沙汰な 車夫の貌

長州の 冬めく寺に 志士の部屋

冬めきて 借りるは泣ける 名画のみ
 
冬めきて 草鞋新し 仁王門

冬めくや 踵割るるは 例のごと

冬めくや 年初の誓ひ なせぬまま

冬めきて 老眼一気に 進みけり

冬めきて 並ぶ老舗の うどんすき

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
<冬めく>は冬の季語です。

 秋が終わり、冬の足音が聞こえて来る初冬、
本格的な冬にはまだ早いけど、明らかに秋とは違う肌感あり、
冬への準備、心構えをする季節でもあります。


 容赦なく伐られ並木の冬めきぬ

 職場の近くの並木が、ある日ばっさりと伐られて、
それによって、秋の空が一気に広がった感じがしました。

 並木の木々もこれほど伐られるとは思っていずに
後で気がつき唖然としていることでしょう。

 髪を切りるために床屋に行って、任せていたら、
思いがけずばっさり切られて、
自分には似合わないと、落ち込んでいた若い時がありました。
きっと木々もそんな感じなんでしょう。

 役所仕事、でもこれほど伐らなくても……。
きっと伐り方が甘いと苦情があるので、そうしたのかもしれません。

 この句が今回一番評判が良かったのは、
「容赦なく」という言葉のチョイスのためだと思います。

 冬めきて気になるレジのおでん種

 この句は、私的には気に入っていましたが、
句会では、冬の季語である<冬めく>と<おでん>が
二つ入っていることを指摘されました。

 おでんに冬の訪れを感じる感性は良いと思うのですが、
季語が二つあったことは、指摘されて初めて気が付きました。

 俳句では季語が二つ入ることは
<季重ね>と言って嫌がります。
絶対だめではないのですが、
17音しかない俳句では季重ねの5音がもったく感じます。

そこで改作

 妻の留守レジのおでんの気になりぬ
 一人居の気になるレジのおでんかな

 冬めきて手持ち無沙汰な車夫の顔

 他の季節は良いが、冬だけはだめな仕事があり、
人力車もそのひとつです。
観光シーズンが終わって
客足がまばらになり、暇を持て余しながら、
客を待っている、車夫の顔が目に浮かんできます。

 冬めくや草鞋新し仁王門

 大寺の山門には、阿吽の像や、仁王像が立っています。
その顔つきは厳しさの極みですが、
裸足なので、必ずといっていいほど、
草鞋(わらじ)が供えられています。

 昨年のものや以前のものは古びて、しなびていますが、
今年の草鞋は新しくて新鮮です。
仁王様の裸足を思いやっての優しい心遣いで、
信心のなせるわざでもあります。

 手作りの草鞋を編んで、
山門に括りつけている老婆の姿が目に浮かびます。
まさに、冬めく寺にふさわしい景です。

 冬めくや踵割るるは例のごと

 毎年必ずあることを、例年のごとしとか、
例のごとといいます。
私は毎年必ずこの時期がくると踵が割れ、
痛みを止めるために、メンタムを塗りこんで
その上からバンドエイドを貼って、
その都度凌いでいます。

 足のみが冷える、冷え性と関係があるのでしょうか?
ひび割れ、あかぎれは、子供の頃からずっと続いていること、
これによって冬が来たと実感します。
 

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