木の葉髪
俳句 |
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一つ知り 二つ忘るる 木の葉髪 肩書きは 賞味期限の 木の葉髪 晩成を 待ちゐし果ての 木の葉髪 降りたのか 降ろされたのか 木の葉髪 憂し絆 断てば淋しき 木の葉髪 |
木の葉髪 ムード歌謡を 十八番(おはこ)とす 歯と腰と 目まで患ふ 木の葉髪 日溜まりが 何より好きな 木の葉髪 金よりも 孤独の怖き 木の葉髪 何よりも 風を恐るる 木の葉髪 |
季語について |
俳句にまつわる話 |
俳句にはいろいろと面白い季語がありますが、 この<木の葉髪>もその一つです。 冬木の木の葉のように、寂しくなる髪のことで、 女性も多少はあるでしょうが、 ほとんど男性に関わってくる言葉です。 髪の毛は年と共に、少なくなり、薄くなるのが普通ですが、 それだからと言って、うれしいものではありません。 年輩の男の人の頭は大きく二つに分けられます。 髪は抜けずに、白髪となるいわゆるロマンスグレーの人と、 髪がぬけて禿げていく人です。 私もロマンスグレーに憧れていましたが、 禿は遺伝をするらしく、自分の父親を見てあきらめました。(^_^;) 私は一人暮らしをしていた時が、1年間だけあります。 25歳の時で、そんな秋のある日、髪を洗っていたら、 排水溝になにか得体のしれない黒い大きな物体があるので、 おそるおそる触ってみたら、自分の抜け毛でした。 それまでもきっと抜けていたと思いますが、 その時は一気に抜けたので気が付いたのでしょう。 髪は抜けたらまた生えると自分を慰めていましたが、 その後も尋常でない、抜け毛が続き、 髪を洗うことに恐怖を覚えました。 抜け毛で悩む前の私は髪の毛が多くて、 床屋にいくと、必ず梳いてもらっていました。 そのあまりの落差に愕然とし落ち込みましたが、 その後は私なりに、いろいろな禿げ対策をしました。 そんなわけで、髪の毛には人一倍神経を使って来た私ですので、 この<木の葉髪>の季語は、まさに自分のための季語だと思って 俳句を作りました。 何よりも風を恐るる木の葉髪 カツラより潔(いさぎよ)きかな木の葉髪 このように、<木の葉髪=自分の今の姿>と考えると、 こんな句もできます。 木の葉髪ムード歌謡を十八番(おはこ)とす 歯と腰と目まで患ふ木の葉髪 日溜まりが何より好きな木の葉髪 金よりも孤独の怖き木の葉髪 憂し絆絶てば寂しき木の葉髪 人の名前が出なかったり、映画のタイトルがでないなど 忘れることが多くなったことを感じ 戸惑っていましたが、やがてそれが日常となり、 当たり前のこととして、 受け入れることができるようになりました。 惚け老人に確実に一歩近づいているのでしょう。 この文章は図書館で書きましたが、 この日は本の返却日だったので、 そのついでに文章を書こうと思ったわけです。 ところが図書館に来て、 借りた本を持ってくることを、 忘れてきたことに気づき、 しかたないので、もう一度家に帰って本を取ってきました。 ノートパソコンを持って行くことに神経が行って、 何の為に図書館にいくのかを忘れてしまったためですが、 こんなことざらにあります。(^_^;) ******** 何か新しいことをしようとしても、 なかなか覚えられず苦労します。 でも、それに負けていたら、 どんどん忘れていってしまうので、 それに抵抗する意味でも、 何か常に学んでいきたいと思っています。 そんな自分の今の心境を句にすると、 一つ知り二つ忘るる木の葉髪 これでは、マイナス1となって、 どんどん忘れていってしまうので、 三つ知り、二つ忘るるとした方がいいのでは?と 句会で言う人もいました。 水前寺清子の「365歩のマーチ」の <三歩進んで、二歩さがる>と同じですね。 でも、私の実感では、やはり一つ知り二つ忘れている気がします。 しかし、なにもしなければマイナス2が、一つ知ることで、 マイナス1となるのですから、 惚けの進行を遅らせることにはなっているのでしょう。 手相に<マスカケ線>という線があります。 珍しい相で、別名天下取りの相ともいわれ、 秀吉や家康がこの相でした。 なんと私は両手ともこの相なので、 いつか大成できることを密かに願っていましたが、 果たせませんでした。 結局自分は大器ではなかったのでしょう(;>_<;)。 晩成を待ちいし果ての木の葉髪 大器晩成がいつくるかいつくるかと期待して待っていたら、 なにもはたせずこの年になってしまいました。 ****** 今年で再任用も終わり、完全な退職状況となります。 団塊の世代の男は、仕事が大事、仕事ができる男が一番と 仕事人間を煽っていた時代でした。 今は多少は違うにしても、やはり、職場での地位とか 社会的な肩書きは気になるものです。 でも、それにいつまでも縛られているのは、 不幸の源、地域や家族に愛される老人になるには、 プライドを捨てることが大事です。 でも世の中には、それができなくて苦労している (本人よりも、まわりや家族が)場合があります。 肩書きは賞味期限の木の葉髪 |