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俳句

目に良いが 祖母の口癖 蜆汁

蜆の実 寅さんの目の 如きかな

蜆狩り 飽きて子供は 泥遊び

飲兵衛の 朝の日課や 蜆汁

胴長の 腰まで浸かる 蜆漁
 
湖の名を 冠し売らるる 蜆かな

居酒屋の 締めに女将の 蜆汁

蜆汁 酒でしくじる こと多し

産土の 河口に遊ぶ 蜆狩り

縄文の 世より蜆の 食されぬ
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
 蒲郡市の竹島近辺で生まれ育った私は、
浅蜊に恵まれていて、蜆を食べるという習慣がありませんでした。

 子供の頃は潮干狩りのシーズンになると、
家族総出で竹島海岸に行き、浅蜊をしこたま取っていました。
どうも地域住民には割り当てがあり、
ある一定量まで無料だったのですが、
どうみてもその量以上のものをとっていた気がします。
子供心にも、ずるをしているという
後ろめたさがあったことを覚えています。

 潮干狩りの後は、浅蜊尽くしで、
浅蜊の味噌汁に始まり、
味噌和え、天ぷらと何日も続いたことを覚えています。
ただ浅蜊は、砂抜きがしっかりできていないと、
がりっと砂をかむことがよくあり、
それが嫌で、子供の頃はあまり好きではありませんでした。
今考えれば贅沢な話です。

 竹島の潮干狩りも、伊勢湾台風までの話で、
それ以後は堤防などができたり、汚染の問題もあり、
浅蜊が取れなくなりました。(取れても泥臭くて食べられない)
でも、努力のかいがあって、
今はまたきれいな海に戻り、浅蜊もとれるようになっています。

 そんなわけで、蜆汁は家では食べた経験がありません。
大人になって、外で食べることがありましたが、
浅蜊に比べておいしいと思ったことはありません。

 縄文の世より蜆の食されぬ

 蜆だけの貝塚もあるそうで、
縄文の時代から蜆が食べれていたことが証明されています。
蜆というと、目に良いとか、二日酔いに良いとか、
滋養に溢れた食品であることは有名で、
古代の人も経験から蜆の効用をよく知っていたのでしょう。

 目に良いが祖母の口癖蜆汁
 飲兵衛の朝の日課や蜆汁
 居酒屋の締めに女将の蜆汁

 蜆の代表的な品種である、<ヤマトシジミ>は
汽水性(海水と淡水が混じる所)で、
河川の河口部や、海水が流れ込む湖に生息します。

 潮干狩りは嫌というほど経験しているので、
よくわかるのですが、蜆狩りは一度もないので、
状況がよくわかりません。
こんな時はネットが便利で、いろいろと情報を仕入れました。

 蜆狩り飽きて子供は泥遊び
 産土の河口に遊ぶ蜆狩り

 蜆というと、島根県の宍道湖が有名です。
その漁の仕方をネットでみました。

 胴長の腰まで浸かる蜆漁

 そのほかにも、網走湖とか、琵琶湖とか、
各地の湖の名前がつけられ、
例えば宍道湖の蜆のようにして売られています。

 湖(うみ)の名を冠し売らるる蜆かな

 蜆は小さいものの例えに使われ、
蜆蝶などもそうですね。

 蜆の実寅さんの目の如きかな

 

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