新酒

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俳句

句仲間と 褒めて褒められ 呑む新酒

娘と新酒 呑めばほっこり する夜かな

迷ふ子の 半歩を祝す 新酒かな

恋告ぐに 力借りたる 新酒かな

陣太鼓に 持てなす宿の 新酒かな
 
頑なな 心を開く 新酒かな

地震(ない)の地の 馬刺つまみに 呑む新酒

階の 磨り減る蔵の 新酒かな

姥捨の 棚田百選 新酒かな

句談義の 和気藹々と なる新酒

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話


 新酒は秋の季語です。昔(江戸の初期まで)の酒造りは
新米ができる秋にも仕込んでいましたが、
江戸の中期以降は、寒造り(冬)が主流になったので、
秋の季語と言われてもどこか違和感があります。

 農耕民族である、日本人にとって、
秋の収穫である新米と、それからつくる新酒には
特別な意味がこめられていたのでしょう。
でも、今では新酒と言っても特別なものではなく、
秋に飲む日本酒、そして飲めば目出度い気分になるお酒
そんな程度の意味で俳句を作って見ました。

 句仲間と 褒めて褒められ 呑む新酒

 私は人の俳句はどんな句であっても、
決してけなさいことをポリシーとしています。
それは、その句にはその人なりの深い思い入れがあるからです。

 そんな時は、こう直したら
もっと良くなると思いますがという言い方をします。
 中には土足で家に上がり込むような批判をする人もいますが、
私は嫌いです。

 それははっきり指摘することがその人の成長になると
考えてのことかもしれませんが、
そうならばこそ、言い方を工夫し、
配慮に配慮を重ねるべきだと思っています。

 この句は、句仲間が互いの句を
褒めて褒められ楽しい気分となっている様が、
新酒の雰囲気とよく合っていると自画自賛しています。

 娘と新酒 呑めばほっこり する夜かな

 子供は息子と娘の二人います。
でも私は息子より娘の方が断然気が合い、酒がおいしく飲めます。
息子は堅実だけど、世間知らずで趣味がほとんどありません。
それに比べて娘は、問題の多い子ですが、
社会性だけは十分にあり、ネットとか、テレビ、
映画、流行に関心があるので、酒の相手としては
面白く、ついつい饒舌になり、飲み過ぎてしまいます。

 迷ふ子の 半歩を祝す 新酒かな

 いろいろなことがあった末に、
娘が独立をして家を出て一人暮らしをする時の
心境を詠ったものです。
その巣立ちはとても一歩とは言えない、半歩程度のものです。
でもその半歩でもいかに大変であり、成長であったのか
それはそれを見つめていたものしかわからないものです。

 まあ、いろいろ言っても
その子にはその子の人生があり、
それは親の力の及ばないもの、
いや及ぼしてはいけないものであると思います。

 恋告ぐに 力借りたる 新酒かな
 頑なな 心を開く 新酒かな

 酒の力を借りて○○をするは、
気の弱い男の常套手段ですね。
私は酒を飲むと陽気になり、饒舌となり、社交的になります。
遠慮がなくなり、思ったことが言えるようになるのは、
酒の力のおかげだと思っています。

 昔(社会人になる前)は内向的でしたが、
酒を飲むと途端に外向的になれることを発見したのは、
強い武器を見つけたようなものです。

 

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