日々の思い

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<h16.12.25>

クリスマスカロル

 クリスマスということで、「クリスマスカロル」(イギリスの作家、ディケンズ作)の話をします。

 主人公のスクルージは、金儲け以外に興味がない、けちで強欲な老人でした。そんな彼の所へクリスマスイブの晩に、7年前死んだマーレー(共同経営者で、スクルージと同じように強欲で楽しみを知らない人間)が幽霊となって現れます。でも、マーレーはなぜか全身を重い鎖で何重にも縛られていました。スクルージが不信に思い理由を聞きます。それに対して、マーレーは、「生きている間の自分の悪い行いによって、自分で鎖を巻いたのだ」と答えます。そして、スクルージも今のままなら、私と同じ運命となると涙ながらに訴えます。そして、スクルージを改心させるために、マーレーは彼を過去へと運びます。そこでは、彼の子供の頃が映し出され、なぜ今のような強欲な老人になってしまったかの、原因を見せられます。

 マーレーは、現代の幽霊と未来の幽霊が現れることを予言して消えて行きます。続いて現れた現代の幽霊は、まず彼の所で働く書記の一家へと導きます。書記の一家は貧しいけど、父親が自分たちのために働いてくれることに心から感謝していました。また、不平不満を誰も口に出して言いません。経済的な問題のために、自分の息子の一人を手離さなければならないのに、給料が安く、その上いじめられているスクルージにも感謝をしているような家族でした。

 次に訪れたのは、彼の甥夫婦(妹の息子夫婦)の家庭でした。この甥だけがスクルージをクリスマスの祝いに招待してくれました。何度、断られても彼は諦めませんでした。それは、スクルージを招待することが、彼の使命だと知っていたからです。この暖かい家庭を見て、自分にも家族があることを実感します。そして、この2つの家族から、彼は改心し、人に優しくしよう、困った人に施しをして、人に愛されようと考えていました。

 最後に、未来の幽霊が現れ、自分の死を宣告されます。そして、死んだ時の様子を見せられます。そこでは、誰からも愛されず、それどころか、みんなに死んだことを喜ばれている自分がいました。そのあまりの恐ろしさに、もう一度生きて人生をやり直したいと、幽霊に懇願します。

 その懇願が通じたのか、彼は死んではいませんでした。それを心より喜び、感謝したスクルージは、町に出て貧しい人々に施しをします。また、甥の家に行くと大歓迎され、一緒にクリスマスを楽しみます。さらに、次の日には書記の働きを認め、彼の給料を上げてあげました。

 この小説は、まさにキリスト教的な勧善懲悪、良いことをすれば自分に良いことが返り、悪いことをすれば悪いことが返ってくる。この単純明快な事実を我々に教えてくれたものです。

 ディケンズは、シェイクスピアと同様にイギリスの代表的作家として有名ですが、苦しい少年期を過ごした彼は、若くして人間の罪の深さを知ります。しかし一年のうち、せめてクリスマスだけは、人々がお互いに優しい言葉をかけ合い、他人のために尽くすようにしようと言うのが彼の主張でした。

 「カロル」とはクリスマスの時に歌う歌のことです。だから、ディケンズは自分の願いを冬空に鳴り響く鐘の音にのせて、高らかに歌い上げたかったのでしょう。たとえ、人々の善意がクリスマスだけの一瞬であっても、ないよりはましである。もし、スクルージの身に起こったような奇跡が実現したらどんなに素晴らしいことだろう。

 

 

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