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姉歯建築士と構造計算書偽造問題


 私は建設業には直接タッチをしていませんが、関連した仕事をしていますのでこの大きな社会問題になっていることについて自分なりの解説と意見を述べたいと思います。

◎ 建築確認申請システム

 建築主が建築物を建てようとする時、事前に建築主事(役所)に必要な書類を揃えて検査を受ける必要があります。ただ、建築主は一般的には建築については素人ですから、建築主の代理として設計事務所(一級建築士)が行うことがほとんどです。この手続きに必要なものとして、設計図書以外に、ある規模以上の建築物には、安全を保証する構造計算書が必要です。

 構造計算書は、関東大震災程度(震度6強)や阪神淡路大震災や新潟中越地震(震度7)に耐えられるような安全性能で計算されます。また震度は、<0、1,2,3,4,5弱、5強、6弱、6強、7>の10段階で表されます。

 今回の偽造で、震度5強で倒れる恐れのあるマンションやホテルが多数建てられました。震度5強とは、<多くの人が、行動に支障を感じ、タンスなど重い家具や、屋外では自動販売機が倒れることがある。>ような地震の程度です。これで、マンションが倒れたのではたまったものではありません。

 鉄筋コンクリート構造(コンクリートの柱や梁の中に鉄筋が入っている構造)では、柱や梁の大きさと、鉄筋の太さや本数が問題となってきます。柱や梁を細くすると、外からばれてしまいますが、中に入っている鉄筋は、工事が終わればわかりません。だから、ごまかしのターゲットになりやすいわけです。大きなマンションやホテルは、膨大な数の鉄筋を使いますから、太い鉄筋を細くしたり、本数を減らすことで大幅にコストを低く抑えることができます。

 どのように構造計算をするかは、建築基準法という法律で決められています。普通は法規ぎりぎりの所で、構造計算をするのが、経済的で良い設計だと言われ、一般的に行われています。それは、建築基準法が相当の安全性に余裕を見ているからそれでもいいわけわけです。

 以前は、この膨大な構造計算という作業を手作業でしていた時代もありましたが、今は、コンピュータの構造計算ソフト(国土交通省版)で計算しそれを確認申請の時に提出をします。ソフトですから、正しいデータを入れれば正しい結果が、過ったデータを入れれば過った結果が出てきます。今回は、このソフトのデータに悪質な改ざんが行われ、それを検査機関が見破ることができませんでした。

 建築確認申請は、建物が建築基準法に適しているかどうかを事前に確認するもので、これが通らない限り建築はできません。この大事なチェック機関は従来、役所の専売特許でしたが膨大な数の申請と民営化の要請から、役所から認定された民間機関でもできるようになりました。

◎ 今回の問題点

@ 姉歯建築士の問題

  構造計算書を偽造することで、建築物の安全性が大幅に損なわれ、 人間の命や安全に影響が出ることが、十分わかっていて、法律に違反をしました。 一級建築士のモラルとか責任と言う以前に 人間として許されない犯罪行為です。

A 検査機関の問題

  民間の検査機関会社「イーホームズ」や「日本ERI」が 偽造を見破れなかったことが、最初大きく取り上げられました。 さも、民間だから悪い、手を抜いたというように……。 でも、その後、偽造を見破ることができなかったのは 役所でも一杯あることがわかりました。  

  膨大な数の申請、それを限られた時間で処理をして行かなければならない。 時間との勝負である以上、そう簡単な問題ではありません。 ただ、ここが犯罪を未然に防ぐ、最後の砦のような場所であるから、 ここの検査の充実に頼るしかないのが現状です。

B 依頼主(建築主)の問題

  マンションを売って利益を上げるには、 建物のコストを下げる必要があります。

 コストを下げるには、お客の目に見えない所で下げる。 そこで、安全を犠牲にしても鉄筋の本数を減らすという無茶が出てきます。

  まあ、今回の<ヒューザー>などは詐欺です。 詐欺は消費者がだまされないようにするしか方法はありません。 消費者の安く買いたいという心理につけ込んだ悪徳商法の一つです。

 

 

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