日々の思い
<h17.7.11> |
夏の思い出 |
私の家は貧乏でした。いや、私の家だけではなくて、日本中が貧乏だった。だから、貧乏が苦にならなかった。平屋建ての狭い家は持ち家だったけど、土地は借りていました。でも、今考えると贅沢な家でした。広い庭があって、夏みかん、イチジク、キンカン、柿と一杯木がありました。特に、夏みかんの木はたくさんあり、真夏でも涼しい木陰ができました。その木の下の土の中に、蝉の幼虫がいてまだ、明けやらぬ朝方には、夏みかんの木に皮のままついています。それをとって、蚊帳の中に入れておくと、次第に脱皮して薄い透明の黄緑色の蝉の少年がでてきます。その幻想的な美しさは例えようがなく、少年時代の朔太郎は、しばし時を忘れて見入ったものです(笑)。 夏といえば、<蚊帳>でした。蚊帳をつらなくなってどのくらい経つのかな?今は部屋を閉め切って、クーラーをかけるから蚊帳は必要ないけど、私の記憶では、クーラーのない時に蚊帳をつらなくなった気がします。香取線香の発達?蚊帳が古くなった?物騒になって部屋を空けて寝られない?どんな理由からでしょう。 蚊帳の命は、蚊が入っていないこと。だから、蚊帳に入る時には、ひざを折って、身体を小さくして蚊帳をできるだけ少なくめくって、素早く入るのがこつ。でも、なかなかうまく行かない。うまく行ったと思っても、一匹や二匹の蚊はいるもの。その蚊が気になって寝られない。意識を集中して、音で蚊の位置をはかり、殺そうとする。そんな蚊との戦いで余計に神経が敏感になって寝られなくなる。柱時計の音だけが聞こえて、気がついたら朝だったなんて少年時代は、不眠症の朔太郎でした。だから、朝暗いうちからおきて、蝉の幼虫を蚊帳に入れて、時間をつぶしていました。 |