先日、パキスタンでの旅の友だちMさんとYさんを通じて、アフガニスタンの復興再活性を行う団体の会長Sさんと話し合う機会があった。SさんはNHKや筑紫哲也等の報道番組に出演するぐらいのアフガンのキーマンでもあり、年に2度本国へ戻る際はガードを立てるぐらいの人物だ。
「僕の兄弟は全員、米軍の爆撃で死んだよ」
そんな言葉からSさんの話は始まった。
「日本ではイラクや北朝鮮で話題が持ち切りだけど、アフガニスタンの状況は最悪。現在人口の半分が難民と化し、国は崩壊状況。カルザイはブッシュが大半の資本を握るオイル会社元社員で、米国が政権を殆ど掌握していて、実質植民地状態だ」
初対面だったが、出だしからSさんの表情は高潮していた。
「熱くなってしまってごめんなさい」
Sさんの声のトーン、そして高潮しながらも寄せる顔のしわは、僕には想像もつかない人生をを背負ってきたのであろう。出会って間もないが、、言葉を発する度にこの人の懐の大きさを感じることができる。
Sさんはもう20年以上日本に住んでいて、大学で消化器に関する研究を行うお医者さんだ。もちろん言葉だけでなく、日本の文化にも精通している。、
「だめですよ・・豆腐は後から。。春菊は最後ですよ。アフガンの春菊は日本のよりも、味がしっかりしてるんだから、一度食べてほしいな」
そして日本人の僕たちよりもしっかり鍋奉行。
さて、しばらくしてから僕たちの話はお約束のように9.11の話題となった。
「君たちはあれが本当に、オサマがやったと思うのか?あれだけ最高水準の軍部を持つ米国にあんなことができるはずがないだろう。米軍の歴史を思い出してごらん。私の国も、ベトナムも、復興という大義名分の裏で、最初に一体誰が破壊したんだ!」
戦争が経済復興となるのは周知のこと。9.11のテロもその一環なのだろうか。
「自作自演・・」
僕が尋ねると、Sさんは大きくうなずいた。
「アメリカの病院でこんな事故があったんです。ある病気が院内で蔓延し始めた。原因はわからない。でも、症状は似ている。調査の結果わかりました。ある人物が患者に毒物を投与してました。その人物は、毒物による症状を治癒する薬の会社の社員でした」
アメリカという国は、インデアンの大虐殺を始め、フロンティアという名のもとに文化を破壊し続けてきた歴史をもつ。第二次大戦に関しても、開戦、終戦、原爆どれをとっても、全て彼らのが日本へ圧力をかけた結果であり、シナリオどおりの歴史が作られてきた。。
「アラファトさんはどう思いますか?」
Sさんは話の途中でそんな話題を持ち出した。
「あれも米軍に殺されたんですよ」
僕は彼が病床でなくなったとき、正直そっちの可能性のほうが高いのではないかとは思っていた。どれほど歴史上、貴重な人物が裏で暗殺されただろうか。
Sさんは話を続ける。
「私は遺伝子学も勉強しているが、遺伝には先天的なものの中で、人間の体質、性格だけでなく、それまでの染み付いた文化も遺伝子に刷り込まれるということが、医学上発見されているんだ。あの国の人間は建国以来、そういった遺伝子を持っている。米国の85%が戦争を支持しているんだからね。信じられるわけがない」
もともと生まれ持った遺伝子。昨年大ヒットした「バカの壁」は、人間を一元論で片付けるバカを戦争、宗教、科学、経済等を脳構造に当てはめて縦横無尽に斬った作品だった。
「人間というものは、結局自分の脳に入ることしか理解できない」
Sさんが言う話は遺伝子上の問題だから、それよりも更に平和とは程遠い話になる。
鍋を食べ終わった頃、僕はSさんに尋ねた。
「今のアフガンで危惧していることは?」
「完全な植民地化になってしまわないかが心配だ、、、戦後の日本のようにね…」
日本は戦後米軍の植民地と化している。米軍はアジアのベース基地となり、年間1兆円もの援助を渡し、ヘリの事故が起きても警察に捜査をす権限はない。バブル後は、グローバルスタンダードといった文句を皮切りに銀行を含めた外資参入、そして資本を搾されてきた。Sさんも同じことを口にする。
「今、アフガニスタンは10年前に比べて気温が9度上がってます。土地を追われ、作物が育たず、農業が壊滅的となり、光合成ができず、雨が降らず、土地は枯れ果ててます。だれがこんな国にしたのでしょう。復興するのに、あと何年かかるのでしょう!」
再びSさんの表情が変わり始めた。
「これ以上君たちの前で、汚い言葉を言いたくないんだが、申し訳ない。私はどうしても許せないんだ」
日本のマスコミは政府を通じて全て米国に掌握されている。アフガンの情報は何も入らない。アフガンには驚くほど水がないらしい。Sさんは日本で大量に水を使うほど躊躇することはないと言う。
何千年人類が住み続き、耕し続いてきた王国をあの国はたった25年で滅ぼしてしましまった。そして、今ターゲットとなっている「イラク」もブッシュ再選によってこのまま同じ運命をたどるのだろうか。
「テロの定義って何ですか?」
Sさんが僕たちに尋ねた。 『政治目的の暴力・脅威』辞書にはこう載っている。
「今、アフガニスタン人の人々にとって、政治目的の脅威はだれですか?」
僕たちは、言葉がでななかった。
藤原紀香が最近、アフガンのために、アフガンの子供たちの瞳を。そんなキャチフレーズで写真集を出した。
「あれは私たちをばかにしてますよ」Sさんは言う。
彼の言葉に僕はふと思い出した。僕が旅に行って、感じたひとつの大きなこと。
「我々が彼等に対して、『やってあげてる』という意識ほど、差別を生む問題はない」
同じ人間なんです。我々が助けてあげる。それこそ、今のブッシュの考えに下手すれば似通う危険な思想。
選民思想。僕がどうしてもボランティアに馴染めないのはそこにある。同じ人間。同じ人間。何も変わらない同じ人間なのに。
さて、3時間以上ひとりで話し続けていたSさんは最後に僕たちにこう言ってくれた。
「歴史上、起源も含めて文化の基礎を作ってきたのは、全てアジア人です。文字、数学、地理etc・・人間にとって大事なことに、欧米人がつくったものなんて何もない。作ったのは虐殺と侵略だけです。自力での復興は先が見えない。でも、私たち自身が教育からやらないと何もみえないのです」
アジア人が、そして日本人がこれから世界を支えていかなくてはいけない。この日ぼんやり心に感じていたこと全てSさんに言われた。しかし、彼の前で気軽に共感したとなんて、おこがましくて言えない。終始僕にはうなずくか、質問をすることしかできなかった。世の中の問題は一体どれが事実なのだろう。もちろんSさんが言うことも全てが事実であるわけはない。全てを把握することは不可能だ。しかし確実にいえることは、アフガニスタンでの25年間、Sさんは日本のメディアと自分の祖国での情報のギャップを感じ続けてきた。そのことだけは、僕の胸にしっかり刻みこまれた。