君がいれば楽園〜甲斐編〜 1
凛にカノジョができた。
昔から派手な髪色と整った容姿でモテ男だった凛。
今までだって何人も付き合ったコがいたけれど、凛は本気にならなかった。
「わんが好きにならないと意味ないさぁ」
そう呟いてた凛が自分から好きになって手に入れたのが今のカノジョ。
そりゃあもう見ちゃいられないほどの惚れっぷりでベタ甘のカレシとなってしまった。
半分は呆れ、半分は正直羨ましい。
俺も誰か好きになりたいさぁ。
そう願った俺の前に、突然現れたのがハルちゃんだった。
「夏休みにの友達が遊びに来るんだってよ。」
「男か?」
「男だったら、速攻で海に沈めるだろうな。」
「凛、それ犯罪だって」
「ありがたいことに女だってよ。犯罪者にならずに済んださぁ。」
部活の合間の他愛ない会話。
その場だけで直ぐに忘れてしまった話が俺を変えた春休みになった。
「ハルちゃんです。」
「コイツは裕次郎。」
「ど、どーも。」
「はじめまして、ハルです。」
お互いがチョイと頭を下げる。
紹介された女のコはショートヘアの小柄なコだった。
俺と目が合いニコッと微笑んだハルちゃんはに明るく話しかけた。
「甲斐君って、の話してた通りの人ね。イメージどおり!」
え〜、どう話してたんだ?
気になったけれど訊くこともできずお愛想笑いをする。
すると隣の凛が俺の肘をつつき「には負けるが可愛いだろ?」などと言う。
どこまでいっても自分のカノジョが一番かよ。
ケッと舌打ちしながらも横目で見たハルちゃんは、凛に言われなくても可愛いコだった。
は色白で目鼻立ちの整った美人系だが、彼女は人懐っこい笑顔と丸い瞳が印象的な可愛い顔立ちだ。
これから一週間はの家に泊まり春休みを過ごすという。
にベッタリの凛は当然のことながら部活以外は彼女達と行動を共にするらしい。
となると奇数よりは偶数がいいと、俺が付き合わされることになってしまった。
観光地を案内しながら、自然と俺たちはふた組に分かれてしまう。
っていうか、どう考えても凛の配慮が足りないな。
わざわざ東京から友達が来てるんだから、その間くらいを開放してやればいいのに。
「えっと、暑さ大丈夫か?東京に比べると春でも暑いだろ?」
「覚悟はしてきたけど暑いね。でも大丈夫よ。」
「ありがとう、心配してくれて」とハルちゃんが目を細める。
笑うとエクボが出来るんだと気づいて可愛いなと思った。
少し前を歩く二人ときたら、肩が触れ合うほど密着して歩いている。
絶対に俺らが居なかったら手を繋いで歩いている雰囲気だ。
あの凛が恋人の耳元で囁くように話をしている姿は、見ている俺の方が恥ずかしい。
目のやり場に困っていたら、ハルちゃんがの背中を見ながら微笑んだ。
「が転校するって聞いた時は心配したんだ。沖縄って遠いし、比嘉高って怖いイメージもあって。」
「え?俺らのコト、知ってたのか?」
「沖縄の比嘉高っていったら、中学から全国大会の常連校だもの。
ガラが悪いから気をつけろとか、宍戸君とか忍足君に吹き込まれてたし。」
「氷帝の跡部も十分にエラそうでガラ悪いぜ?」
あはははと明るく笑ったハルちゃんは青空に向かって手を伸ばした。
には負けるだろうが白くて細い腕が空色に映えて綺麗だ。
空を見上げるハルちゃんは健康的で、沖縄の雰囲気によく合っていた。
「が楽しそうで安心した。
平古場君、すごくを大事にしてくれてるみたいだし良かったぁ。」
「大事にしすぎで、近くにいる俺はアテられっぱなしだけどな。」
「確かに。なんかから聞いてた平古場君のイメージと違ったな。
ぶっきら棒で気分屋のところがあるのかと思ってた。」
「ああ、それ当たり。が、が凛を変えたな。」
「ええ?」
「それぐらい尻に敷かれてるってことだろ。」
目の前でアイスクリームをねだるに頷く凛の横顔を見て、俺たちは笑った。
お互いに親友が幸せなのは嬉しいものだと思う。
そんな思いもあって、出会って直ぐに俺たちは打ち解けて話せるようになっていた。
「ゴーヤバーガーは止めとけって。」
「だって、せっかく沖縄に来たんだもの。名産品を食べないと。」
「ファーストフードに名産品も何もないだろう?」
「だって、東京にはゴーヤバーガーもぬーやるバーガーもないよ?」
「そりゃないだろうけど。」
凛と二人でヤメロヤメロと言うのに、とハルちゃんは面白がって頼んでしまった。
案の定ゴーヤバーガーを大きな口で齧っておいて無口になってる。
凛はテーブルに肘をついて呆れ顔のままにドリンクを差し出し、俺はこみあげる笑いを腹を押さえて耐えた。
するとハルちゃんが涙目で俺を睨み「甲斐クンの意地悪」と言う。
うわぁ〜なんか可愛いさぁ。
久々にドキドキして顔が赤らむのを感じた。
笑うのを我慢して赤くなったと誤魔化しつつ、俺はクルクルと変わるハルちゃんの表情に見惚れていた。
紹介された当日から、暗くなるまで四人で遊んだ。
こんな短時間で気軽に話ができるようになるなんて俺にとってはありえない。
確かに凛やが一緒なのもあっただろうけど、ハルちゃんは明るくて俺との話もすごく合った。
クラスメイトとは違う新鮮な感覚。
時々見せるハルちゃんの女のコらしい仕草と言葉の可愛らしさ。
たった一日。
だけど俺はハルちゃんがとても気にいってしまっていた。
君がいれば楽園 甲斐編 1
2007.07.25
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