俺様の恋 1 『たった一人の女子マネージャー』 










自分で言うのもなんだが、俺様は高校生にしては人格者だと思う。
確かに口がイイとは言われた事はないが、大所帯のテニス部を纏め、生徒会では学園も纏め。
他人から文句を言われないよう、俺自身キッチリと仕事をしてきたつもりだ。


だから今まで誰からも非難されたことはない。
裏でコソコソと文句を言うヤツはいたとしても、それは負け犬のするこった。
面と向かって意見して来る奴。


そんなのは、あの女が初めてだった。



「あのねぇ、そのエラソーな態度が気にいらないのよ。」
「たかがマネージャーのお前に、とやかく言われる筋合いはねぇよ。」


「あります。跡部が社長なら、私は秘書なの。分かる?部の予算は、今や私のほうが頭に入ってるんだから。」
「テメェの頭に入ってる程度の事は俺様の頭にも入ってるんだよ。バーカ。」


「あ、バーカと言ったわね!それ、すんごい腹立つって言ったでしょ!」
「バカだから、バカと言ったまでだ。」


「ふん。やっぱりバスは学園のマイクロバスで移動。節約させていただきます。」
「はぁ?俺様に、あのマッチ箱みたいなマイクロバスに乗れってか?冗談じゃねぇ。」


「屋根にでも乗ってれば?広くて涼しいわよ。」
「お前、」



ああ言えばこう言う。本当にムカつく女だ。
こんなマネージャー、さっさと首を切ってしまいたいのは山々。
しかし、入部時には五十人以上いたマネージャーが今や五人しかいない。
それも女は一人。残りは全て男だ。
その中でもトップに立つマネージャーがなのだから、そうはクビに出来ない事情があった。


性格は悪いが、仕事は文句ナシに出来る。何をやらせても隙がねぇ。
俺の考えていることを先読みするかのように動けるのはしかいないのも事実だ。


おまけに男に興味がない。これも好都合だ。
テニス部のマネージャーになろうとする女は部員目当てが多くて辟易していた。
部員とマネージャーの恋愛を禁止、恋仲になったらマネージャーは退部と決めたら、
あっとう間に女のマネージャーは消えていった。



今日も忍足がに絡んでいる。



なぁ、こんな男前がぎょうさんいるのに萌えへんのか?」
「あははは!忍足君ったら冗談ばっかり。男前なんか、どこにいるの?どこ?」


「いや、そこにもココにも、目の前にも。」
「へ?忍足君?ぎゃはははは!それ、ギャグ?」



モテ男・忍足の軽口に腹を抱えて笑うに呆れた。口、開けすぎだろ。



「な、なら、跡部は、どうや?学校一の美形やで?」
「そうだったんだ。でも、キョーミない。っていうか、どっちかって言うと嫌いな顔ね。」


「テメェに好かれようなんざ思ってもねぇよ。
 忍足も美的感覚の欠損した女に、くだらねぇ事を聞くな!」


「失礼な!私の美術は素晴らしい成績よ!」
「そりゃ、成績つけてる教師に問題があるんだな。」


「待ちって。じゃあな、が好きなタイプは?ほら、タレントとアイドルとか色々あるやろ?」
「うーん、そうねぇ。」



ふん。名前を口にした途端に鼻で笑ってやるぜ。



「ガッツ石松」



・・・・・あまりのことに鼻で笑うのも忘れちまったじゃねぇか。



「ギャグか?」


「ううん、あのボクトツとしたところが萌えなのよ。
 だからかな。カバジ君を見てると、時々胸がキュンとするのよねぇ。」



うっとりとしているに、こいつは俺らが引退するまでマネージャーとして居座り続けることを確信した俺だった。



どう考えても、は変わり者。
しかし時には俺が驚くような頭のキレを見せたりもする。



「ちょっと。跡部、来て。」
「あ?練習中の俺様に『来て』とは、なんだ?」


「うだうだ言わずに来て!鳳クンが気になる。」



言いながら視線を離れたコートに立つ鳳に走らせる。
その真剣なの表情に俺は黙って足を踏み出した。



「今、サーブを打つわ。よく見て、肘の角度・・・おかしくない?」



歩きながら鳳のフォームを確認する。・・・確かに。



「この二日くらい、サーブのコントロールが数センチずつだけどズレてる。」


「チッ。、今すぐ鳳を俺が手配する病院に連れて行け。」
「跡部・・・やっぱり?」


「本人でさえ僅かな違和感ぐらいにしか感じてねぇだろが・・・今なら直ぐに治せる。」
「分かった。鳳クンーっ!ちょっと、コッチに来て!」



隣でが大きく手を振れば、呼ばれた鳳がキョトンとしていた。
ペアを組んでいる宍戸だって気づいていない。そして、俺も言われるまで気づかなかった。



「お前、なんで気がついた?」


「そんなの当たり前でしょ?いつも、皆のフォームを見てるもの。
 それに鳳クンが何となく納得できない顔で練習してるのが気になってたの。」


「ふーん。」



俺は内心、感心していた。
なのにコイツはいつも最後に必ず余計なことを言いやがるんだ。



「ふふん。跡部のインサントも私のインサントには敵わないわね。なんか、優越感♪」
「・・・言ってろ!」



案の定、鳳は肘に炎症を起こしていた。
暫しの安静と内服で治癒することが分かり、俺もホッとする。


こんなんだから皆がを頼りにして、
いつの間にか腹が立つくらいエラソウな女子マネが出来上がってしまったというわけだ。



今日も俺が最後まで部室に残る。
全ての記録などに目を通し、戸締りをして部室を出た。
外は既に真っ暗だ。


明日の練習メニューを考えながら、待たせてある車に向かって歩いていたら暗闇の中に動く人影があった。
目を凝らしてみればテニス部の倉庫前にが立っている。



「オイ。何、してるんだ?」
「ギャッ!び、ビックリした。私を心臓発作で殺すつもり?」


「お前がコレぐらいで死ぬわきゃないだろ。まだ帰ってなかったのか?」
「今から帰るとこよ。でも、鍵がうまく出来なくてさ。跡部、やってみて。ホレ、」


「それが人にモノを頼む態度かよ?お願いします、跡部君と頭を下げたら、やってやるぜ。」
「オネガイシマス、アトベクン」


「棒読みかよ」



呆れつつ、の手から鍵を奪った。
確かに暗闇の中で小さな南京錠に鍵を差し込むのは大変だな。
おまけに鍵が古くなってるのかハマリが悪い。



「鍵ぐらい新しいの買えよ!」
「ホントにねぇ。でもさ、使えないわけでもないしとか思うと勿体無くて。」


「こんなもん数百円で買えるだろうが?ケチケチするな!」
「数百円あったら週刊ジ○ンプが買えるもの。」


「・・・鍵は俺が買ってやる。」
「跡部、太っ腹!さすがお金持ち!」



コイツと話してると本当に頭が痛くなる。
何とか鍵を閉め、じゃあなと歩き出して気がついた。も後ろから付いて来る。



「付いて来るなよ。」
「だって私も帰るんだもん。校門までは同じ方向でしょう?それとも私に遠回りをしろと?」


「・・・いや。」



二人で歩いているのに、タテに並んで歩くのも不思議な感じだ。
おまけに変人でも女一人だ。何かあっては、と頭を掠める。



「お前、家はどこだ?」


「え?嫌がらせされたらイヤだから教えない。」
「テメェはバカか?暗いから送ってやろうかって言ってるんだよ!」


「またバカって言う。バカって言った方がバカなんだからね?バカ!
 送ってくれなくて結構よ。極力、跡部には借りを作りたくないから。」



可愛くねぇ。
こんな女を襲うなんざ、野犬ぐらいしかいねぇだろ。
そう考えて、俺はを無視して車に乗り込むことにした。


別れ際、が眉間に皺を寄せ深刻そうに言う。



「跡部。車なんかで帰ってたら、足の老化が早まるよ?」



溜息と一緒に窓を閉めた。


我が部に唯一の女子マネージャー。
この女に恋人が出来た日には、赤飯でもケーキでも何でも俺が買ってやるぜ。
そんなモノ好きがいれば・・・の話だがな。


ふん、顔が見てみたいもんだぜ。
その時は絶対『変わり者だ』と腹の底から笑ってやろうと心に決めた俺だった。




















俺様の恋『たった一人の女子マネージャー』 

2006.08.16




















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