きらめく青春を過ごす中に -前編-












「わ・・・私、観月が好きなの。」



一世一代の告白だった。
卒業を前に焦っていた私は、自分の中にあるありったけの勇気を欠片まで掻き集めての告白をした。
心臓が耳にあるんじゃないかと思うほど大きな音がする。
顔が燃えるように熱い。なのに握りしめた指先は氷のように冷たかった。


瞳を大きくした観月は私から視線を逸らすと唇をおさえて考え込む。



ああ、やっぱり駄目?
少しは期待していたのに。
友達からの告白に観月は困惑しているよう。



「な、なんてね、冗談。引っ掛かった?」



ハッと顔をあげた観月に精一杯の笑顔を向ける。
目の奥が熱くなるのを堪えて。


頑張れ、私。
長い時間をかけて手にした友達の立場までは失いたくない。
せめて笑って『また、今度ね』と次の約束をして別れたいから。



「冗談?」
「そうそう。私が告白したら観月がどんな顔するかなって。」


「悪い・・・冗談ですね。」



観月が眉根を寄せ、どこかが痛むような顔をした。
けれど私も痛い。心にもない言葉を発するたび、自分が傷を負っていくようだ。



「ごめん。ちょっと、たちが悪かったね。」



観月が口を開く。
その唇が何かを言いかけて閉じる前に、私は勢いよく頭を下げた。



「本当、ゴメン。二度と・・・しない。」



二度と言わない。
ちゃんと友達でいる。



「本当に?」



観月が真顔で呟いた。
その言葉の意味を考えもせずに、私は頷く。


そうして私は長い間あたため続けた観月への恋心を封じ込めた。





ルドルフは全国から生徒が集まっている。
もちろん私もその一人で、卒業後は地元に戻ることになっていた。
優秀な観月は早くに都内の私大に推薦で合格を決めている。


中学から六年間も一緒にいたのに、そうは会えない場所に離れて暮らすことになるなんて信じられない。
だからこそ想いを伝えたかったのだけど、最後の最後に出せなかった勇気が後味の悪い嘘になってしまった。


あんなに悩んで決めたことだったのに、後悔ばかりが私の中に残った。










「観月はじめ。」
「はい。」



観月に馬鹿な告白をした翌日からは卒業式の練習が始まった。
名前を呼ばれ、澄んだ声で観月が返事をするのを聞くだけで涙が溢れそうになる。


これじゃ本番の卒業式がどうなるか分からない。
自分が先に名前を呼ばれることが、せめてもの救い。じゃないと涙声の返事になってしまうところだ。


式場からの退場は左右から中央の通路に向かい、男女が二列で歩く。
嬉しいことに私は観月の背中を直ぐ後ろで見ながら歩ける位置にいた。


ピンと伸びた背中と癖のある髪が揺れる襟足を見つめながら歩ける。
隣に並んで馬鹿を言ってきた私たちだけれど、私は圧倒的に多くを彼の背中を見つめて過ごしてきた。



いつからとか、何かがという切っ掛けはないけれど、いつの間にか好きだった。
あまりに近くて、居心地のいい関係を壊すのが怖くて言えなかったけど、
ずっとずっと好きだった。


義理だと笑って渡す毎年のチョコも、
観月に強請られたからと言い訳して渡す誕生日プレゼントも、全てに私は想いをこめていた。



「あなた、練習から泣いててどうするんですか?」



ホールから出たところで、いつの間にか隣にきた観月が声をかけてくる。
いつの間にか滲んでしまっていた目元を慌てて拭うと呆れた顔をした観月が溜息をつく。



「なんかねぇ、駄目だ。思い出がありすぎて。」
「ああ・・・それは分かりますね。僕たち寮生には、生活の全てが此処でしたから。」


「もう、会えなくなるよね。」



渡り廊下から見上げた校舎さえ愛しい。
感傷的になった私の呟きに、
後から出てくる人たちに背を押されている観月が足を止め、同じように校舎を見上げる。



「会えますよ。」
「本当?」


「お互いが会おうと思えば、いつでも会えるものでしょう?」
「観月は会おうと思ってくれるわけ?」


卒業しても私に会いたいと思ってくれる?



川のように流れていく生徒達の中、観月が私を見て笑った。
ざわめきに掻き消される彼の声。だけれど唇の動きは「もちろん」と四文字を刻む。



だから、私はまた泣いてしまった。




















お題 きらめく青春を過ごす中に -前編-

2008/01/06

なばなしく笑う人
がいをそっと呟いて
どかな時間の幸福
り道ついでに会いに来た
ぐいすみたいに歌う君
きたくなったら呼んでくれ
らめく青春を過ごす中に
きだよ、なんて今更だけど




















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