一度、口にした言葉は戻ることがない。


当たり前のこと。


なのに、俺は。口にしてしまった。



『お前の代わりなんか、いくらでもおんねんっ』



時計の針が戻せるのなら。


ごめん・・・な。










俺の・・・ 前編










その日も。俺は、を探していた。
暇な時間があったら、を探してる。それが、最近の俺。


自他とも認めるモテ男。ええ加減に遊んできたけれど。
とうとう。本気の恋に嵌ってしまった。それは、底なし沼。もう、彼女に溺れてしまって這い上がれない。


好きで。好きで。自分でも呆れるほどの独占力で、彼女を自分のものにしている。



今日は監督に呼ばれて、岳人との新しいフォーメーションについて打ち合わせがあった。
だから、昼ごはんは別に食べることになっていたけれど。
思いのほか、早くに済んで。なら、彼女と一緒に食べたくなるのが人情というもの。


なのに。携帯は繋がらないし。メールの返事もない。
教室に戻ってみたら、携帯が机の中で鳴っていた。


それで、を探し回ってる。


食堂にも、屋上にもいない。とうとう、外に出た。
よく膝枕をしてもらう中庭。人気のない裏庭へ・・・と。


そこで、見てしまった。テニス部の部室前に立っている、


嬉々として近付こうとして、気がついた。の前には、誰かが立っている。
は背伸びをして、その男にマフラーを巻いてやっていた。


一目で分かる。それは、がいつも巻いている、お気に入りのマフラー。


マフラーを巻いてもらった男は、黙って立っている。
は、結んだ後。男から少し離れて眺めて。


また、近付いて。男の襟元を直す。


男が微笑んだ。



そいつは・・・跡部だった。



俺は踵を返す。何を見たのか?分かっているけれど、心が拒否をしている。
鼓動がドクドクと耳に響いてくる。


なんでや?なんで、跡部?やっぱり、跡部が好きやったんか?


は、始め。跡部のことが好きなんだと思っていた。
それでも、好きだったから・・・猛烈アタックして。


そしたら。俺のことが好きや・・・って言うてくれて。


跡部のことは、好きじゃない。ずっと、俺を見てた・・・って。あれは、嘘やったんか?



頭の中をぐるぐるまわる思い。
ぎゅうぎゅうと。胸が締め付けられて痛む。


なんで?何で?そればかり。


俺。騙されてたんやろうか?





その後。屋上で、ぼんやりしてたら携帯が鳴った。


着信は、。しばらく、見つめて。それから、電話に出た。



「もしもし」
『侑士。どこにいるの?』


「お前こそ。どこにおった?」     頼む。正直に言うてくれ。なんか、理由があるんやろ?
『あ・・・ちょっと。』


「ちょっと・・・て?」     。嘘をつくな。
『あ・・うん。友達と、中庭でご飯食べてた。』


「その後は?」     正直に。跡部に会ってたって。
『え?図書館に行って本読んでた。』


「ずっと?」     なんで?嘘をつく?
『ずっと。』



目を閉じて。空を仰いだ。視界は、太陽の陽射しで赤くなる。



「嘘つくな。お前、跡部とおったやろ?」
『侑士?』


「俺、見てしもうたんや。お前が、跡部にマフラー巻いてるの。」
『違うっ、あれは、』


「違わんやろ?俺、ずっと見てたんやもん。・・・やるなぁ。二股かけてたんか?」
『そんなことっ』



俺は傷ついてた。初めて本気になった女に裏切られたと思い込んで、自棄になってた。



「べつにええよ。」
『侑士、聞いて?あのね、実は・・・』


「ええって言うてるやろっ?お前の代わりなんか、いくらでもおんねんっ」



その後。は、一言も言葉を発しなかった。
俺は、ほんとのことを暴かれて。言葉のひとつも出ないのだろう・・・と思った。



「切るで。跡部も、遊び人やから。気をつけたほうがええで。」



捨て台詞を吐いて。電話を切って。電源まで落とした。


の言葉を聞こうともせずに。俺だけが傷ついたと思って。と跡部を恨みながら、放課後まで過ごした。



放課後になって。カバンを取りに教室に戻る。今日は、部活で跡部の顔を見るのも嫌だ。
サボろうと思って。それでも、相棒の岳人だけには連絡しておこう・・・と携帯にかけた。


プチッと相手が出た音に。



「俺やけど。今日、悪いけど休むな。跡部には、腹こわしたとでも言うといてくれ。」
『はぁ?ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。今すぐ、部室に来いッ』


「なっ・・跡部?なんで、お前がっ」
『つべこべ言わずに来やがれっ。お前、まさか・・・デートだとか、ぬかすつもりじゃねぇだろうな?あーん?』



デート?
カチンときた。人の彼女を横取りしておいて、デートもなにもないだろう?



「デートのわけないやろ?人の大事なもん取って、楽しいかっ?」
『は?何のことだ?』


のことやっ」  



ああ・・・みっともない。けど、一度口にしたら止まらない。



『意味がわからねぇ。』
「とぼけるなっ。俺、昼休みに見たんやっ」


『・・・・・。』 



跡部が黙り込む。ほら。なにも言い返せんやろ?



『お前・・・馬鹿だな。』
「なんやとーっ」


『はぁ。とにかく、部室に来い。話してやるからよ。』



プツ。と、人の返事も聞かずに携帯が切られた。


彼女をとられたうえに。馬鹿呼ばわり。一言ぐらい言ってやらないと気がすまない。


俺は、ムカムカしながら部室に向かった。




















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