Winter Bells 〜前編〜
明日はクリスマスイブ。
景吾は、当然のごとく、と過ごすつもりだった。
をつれて、ホテルの最上階でディナー。
そのあと、できたら・・・。などと、勝手に計画を立てている。
いつも忙しくて、かまってやっていないから。
明日は、たっぷりと可愛がってやろう・・・などと、
とても十代とは思えないことに思いをめぐらせていた。
「なに?もう一遍、言ってみろ。」
「だから。テニス部のクリスマス会に行くの。景ちゃんも行くんでしょ?」
「・・・・・誰に、誘われたんだ?」
「忍足君。テニス部のレギュラーが集まるパーティーだから、おいでって。」
あの野郎・・・。
心の中で、舌打ちする。
もう随分前、忍足には「俺は、いかねぇ」と告げてあった。
「あっ、そう。残念やな。」
やけにおとなしく引っ込んだと思えば・・・俺の行動を見越して、を誘ったな。
くえねぇ奴だ。
「。テニス部のクリスマス会より、俺と飯を食いに行くぞ。ディナーを予約してある。」
「えー!ダメよ!先に、忍足君と約束したもの。
それに、テニス部の部長がクリスマス会に出ないわけにいかないでしょっ。」
「あれは勝手にあいつらが企画したもので、俺には関係がねぇんだよ。」
「ダメ。上に立つ者は、ちゃんと普段からコミュニケーションを深めておかなくちゃ。
それじゃなくても、景ちゃんはワンマンなんだから。」
「はあ?なに生意気なこと言ってんだ。いい加減にしろよ。」
の額を、ピンと人差し指で突くと、がよろける。
その体を、さっと支えると、景吾はため息をつく。
「ふらふらすんな。まったく・・・」
「急におでこを突かれたら、誰だってふらっとするよ!」
「ふん。その、ふらふらじゃねぇ!」
それだけ言うと、景吾はぷいっと背を向けた。
先を歩いていってしまう景吾を見つめながら、も内心複雑だ。
クリスマスイブ当日の今日まで、忙しそうにしていた景吾は、何ひとつ誘ってこなかった。
25日は、毎年跡部家のクリスマスパーティーがある。
跡取りの景吾は、絶対出席しなくてはならないから、一緒に過ごすなら今日しかなかった。
けれど、クリスマスのク・・・さえ口にしない景吾に、は寂しい思いを抱いていたのだ。
そこに忍足の誘いを受けた。
24日に景吾が誘ってくれなかったのは『テニス部のクリスマス会』があったからなのだと分かった。
けれど、自分はテニス部でもないし・・・景吾に誘われたわけでもない。
はじめは断わった。でも・・・
『跡部も来るから。なっ、ちゃんも、おいで。』
そう、誘われて・・・。つい、頷いてしまったのだ。
まさか、当日の今日になって、ディナーに誘われるとは思ってもいなかった。
ちょっと・・・いや、結構嬉しかった。
けれど、テニス部のクリスマス会に部長が出ないのは、問題だと思う。
性格的にキツイ所があるし・・・
みんなと仲良くやるためには、こういう集まりも大事にしなくては・・・・。
は、なりに、景吾のことを想っていた。
「あれぇ。なんで、跡部も来るん?今日は、用事があるんやなかったか?」
「お前・・・分かってて、言ってるだろ?ああ?」
忍足と景吾の間で、火花が散る。
クリスマス会場になるカラオケボックスに行きながらの会話は、棘がありまくりだった。
「お前、汚ねえ手を使ってんじゃねぇぞ。」
「何のことやろ?部室出る前に、手は洗うたで。」
宍戸は、二人から2メートルほど離れて、大きな鳳の後ろに隠れて歩いている。
「止めなくていいんでしょうか?宍戸さん。」
「ほっとけ。下手に首を突っ込むと、大変なことになるぞ。」
「はぁ。」
ぞろぞろと氷帝学園テニス部のレギュラーが歩く。
すれ違う人々が振り返っていくが、誰も気にとめない。
見られることなど、慣れているからだ。
忍足ご用達のカラオケボックスにつく。
受付をし始める忍足の後ろで
『なんだぁ?こんな小汚いとこで、パーティーもなにも、ねぇだろ。』
なとど、景吾が文句をたれている。
忍足が、くるっと振り返るとニッコリ笑う。
「跡部お坊ちゃま。うちら、庶民はこういう小汚い部屋に集まるんですよぉ。
貴重な体験できたなぁ。
どーも、その小汚い部屋に、先にちゃんが来てるみたいやで。」
それを聞くなり景吾は、先を歩き始める。
わかりやすいやっちゃな・・・と、忍足がほくそえんだ。
一番広いパーティールームのドアを、最初に開けたのは、景吾だ。
「あっ、景ちゃん。」
広い部屋にポツンと待っていた、が嬉しそうに立ち上がった。
景吾は、の姿を見て眉根を寄せる。
「、お前・・・」
「おっ。ちゃん!うわっ。めちゃめちゃ可愛いやん。ワンピースが似合うてるでぇ。」
「あっホントだ。、かっわいEーっ!」
ちっ・・・と景吾が舌打ちをする。
のワンピースは、グレーのシンプルな物だったが、細い黒のリボンが手首と首元に結ばれた
可愛らしいデザインだった。
それでいて、ほんの少し広めに開いた襟元からは、華奢な鎖骨が見えて綺麗だ。
はっきり言って・・・可愛らしい。
ここに誰も居なかったら、自分の膝に乗せるところだ。
そんな可愛いを、何が悲しくて、他の野郎どもに見せなくてはならないのか。
こんなところに、んな格好してきやがって。と、勝手にムカムカする景吾をよそに、
他のメンバーもを褒める。
もう、不機嫌極めたり・・・の表情で、どっかとソファーに座る景吾。
それでも、しっかり・・・の隣をキープした。
樺地を使い、を挟んで、他のレギュラーからを守る。
楽しいクリスマスパーティーが始まった。
体育会系のノリのよさ。
盛り上げ上手の忍足もいて、大盛り上がりだった。
はじめは面倒臭そうにしていた景吾も、ついつい本気でゲームに参加したり、
マイクを握ったりと楽しい時間を過ごした。
クラブに入っていない、も、初めての経験が楽しくて、よく笑った。
「そろそろ残り時間も少ないし、プレゼント交換と行こうか。
じゃあ、クジ作るから、みんな引いてな。」
はしゃいだジローが大喜びで一番クジをひく。
そのあとから、順番にクジを引いていった。
「よっしゃ。開いてええで。自分の番号と同じプレゼントをとってな。」
「あっ、俺!1番だっ。やりぃ!」
「岳人。1番だからって、いいものだとは限らないよ。」
岳人は、冷静な滝に言われている。
景吾は、3番だった。
開けると、派手な袋の中から冬季限定のお菓子が山のように出て来た。
「・・・・ジロー。お前だな?、やる。」
「えー!コンビニの新商品、片っ端から集めたんだから。跡部がいらないなら、俺が食べるっ!」
隣で樺地が、ガラスのオルゴールを手に固まっていた。
「あっ。樺地君の、私が選んだんだよ。気に入ってくれた?」
「ウ・・・ウス。」
「オルゴール?何の曲ですか?」
覗き込んだ鳳が、ネジを巻くと・・・乙女の祈りが流れてきた。
心なし、樺地の顔色が悪い。
「綺麗でしょ。大事にしてね。」
「・・・・・・・・ウス。」
みんな、笑いをかみ殺すのに必死だった。
「おいっ!跡部!これ、なんだよっ!」
宍戸が跡部に食ってかかる。
手には、一枚のカード。表には、跡部景吾様へ・・・と書かれてあった。
「あー。今朝、机の上に置かれてたやつだ。いらねぇから。」
「いるとか、いらないって問題じゃねぇだろう!なんで、自分がもらった物をプ
レゼント交換に出すんだよっ。信じられねぇ!」
「ふん。いらないなら、捨てろ。」
「捨てろ・・・って、あっ!時計じゃん。げっ、欲しかったやつだ・・・。」
宍戸は、欲しかった時計を手に・・・ジレンマに苦しんでいた。
「わあ・・・可愛い。」
の声に、振り向くと・・・。は、雪の結晶がデザインされたネックレスを手に喜んでいた。
「ああ。それ、俺が出したんや。いや、よかったわぁ。ちゃんに当たって。」
そこにいた全員が「おいっ」と心の中で突っ込んだ。
男ばかりのパーティーに、ネックレスを選ぶか?
クジを作ったのは忍足だ。絶対、を狙っての細工があったとバレバレだ。
何も考えない、は、早速ネックレスを自分で首につけた。
「おっ、今日の服によう似合うてんで。ずっーーーーと、つけてな。」
その時、宍戸の目にはブリザードが見えていた。寒い・・・。
景吾が、恐ろしいほど冷たい殺気を放っていた。
景吾の真ん前に座っていた日吉は、トイレに席を立った。
きっと、耐えられなかったのだろう。
「じゃあ、プレゼント交換も終わったし、そろそろお開きちゅうことで。」
忍足の言葉が終わる前に、景吾がの腕を掴んで席を立つ。
「。帰るぞ。」
「え?景ちゃん?」
「あれぇ。跡部。次には、行かんの?」
「お前らは、勝手に宇宙の果てでも、どこでも行って来いっ!!ぐずぐずすんなっ!」
「あ・・・うん。それじゃあ、みんな。お先に。忍足君、ありがとう!大事にするね。」
が、ニコニコと言うが・・・ぐいっと無理矢理に手をひかれ、よろけながら景吾に着いていった。
滝がため息混じりに言う。
「どうしてそう・・・意地悪するのかねぇ。」
「なんや。面白いんよ。やめられんわ。」
「気持ちは分からないでもないけど・・・彼女が被害を受けるんだよ。」
「あ・・・・。」
しまった。と言う顔の忍足に、滝は肩をすくめた。
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