You belong to me 1
越前君は高校二年の春にアメリカから転入してきた男の子。
私は高校からの外部入学で青学に入ったから知らなかったけど、
中等部の時に在籍していた彼はテニス部では有名な存在だったらしい。
噂ではアメリカ留学した手塚先輩にも負けない実力があるんだとか。
そんな彼は青学テニス部の全国制覇を目指すために帰ってきたんだと噂されていた。
「越前君、あの・・これ。資料なんだけど目を通しておいてくれる?」
「あ?いいよ、が目を通してあるんだろ。だったら問題ないでショ?」
「そんな、問題大有りかもしれないし。」
「大有りなんだ。へぇ」
「ち、違うけど。ほら、私一人じゃ自信がないし」
越前君って、ちょっと意地悪。
大きな瞳でチラッと私を見てから、サッと書類を取り上げて目を通し始める。
私は背の高い越前君を見上げるみたいにして彼が読み終わるのを待っていた。
勝気そうな目が文字を追っていく。
漆黒の髪が窓から入る風に吹かれて揺れるのが気持ち良さそうに見えた。
中学生の時はチビだったって、誰かが言ってたけど信じられない。
テニスで鍛えられた肩は逞しくて、身長だって男のコの中でも後ろの方だ。
カッコイイ人。
「ね、そんなに見つめられると困るんだけど。そんなに心配なわけ?」
「え?」
「そんな直すようなとこもないけど?」
「あ、ああ、そ、そう?ヨカッタ。うん、ありがとう。じゃあ、先生に見せてくるね。」
差し出された資料を受け取って、笑って誤魔化したけど赤面しそう。
どうもどうもと、ペコペコ頭を下げると逃げるようにして教室を飛び出した。
走ってはいけない廊下を走って、角を曲がると足が止まった。
資料を胸に抱きしめて、壁に背中を預ける。
カァ・・と頬が熱いのが分かって、思わず片手で触れた。
ダメだ、心臓が壊れる。
それぐらいドキドキしてる。
私の片想い。
運良く同じクラスになれて、運良く同じ図書委員になれたというだけ。
それでも好きになってしまったの。
ぶっきら棒でクールな越前君。
だけど、ホンのちょっと優しいところがあるの。
いつもは眠そうな顔ばかりしているのに、テニスをしている時は眩しいほどのイキイキした瞳を見せる。
少しだけ笑ったりして。
そんなところも大好き。
とてもじゃないけど手の届かない人。
でも、片想いするぐらいはいいよね?
* * * * *
委員会の資料を手渡されて目を通す。
相変わらず俺の前じゃ緊張してるんだ。
本気で見る気もないんだけど、が作った資料だから目を通す。
そこら辺が分かってるんだろうか。なんか、全然分かってなさそう。
あのさぁ、すごく視線が痛い。というか、気になる。
そんなにジッと見つめられたら穴が空きそうなんだけど。
そう指摘したら、一瞬でが赤くなった。
へぇ・・・なんか、可愛いの。
はシドロモドロの言い訳をして教室を飛び出していく。
俺にしたら「あ、逃げられちゃった」って思わず呟いたんだけど、聞こえるはずもない。
期待してもイイのかなって思う。
久しぶりに日本へ戻ったら、学校は窮屈だし退屈だし性に合わない。
けど手塚部長が残していったテニス部は、やっぱ楽しい。
桃先輩とかは相変わらずだし、青学の柱うんぬんは別にしてもテニス部はスキダ。
目的はテニス部だったし、学校生活には期待してなかった。
けど、見つけた。
ちょっと気になるコ。
はじめは同じクラスだって事も知らなかった。
昼休みに裏庭でネコを撫でてる女のコを見かけた、それがだった。
まだ小さい子ネコを抱き上げ、人にでも話しかけるように優しく声をかけていた。
あったかい陽だまりの中、子ネコを抱いて微笑んでる姿に惹かれた。
その日の午後、授業中に初めてクラスメイトだと気づいたんだけどね。
「あ、さんだ。彼女、可愛いな。色が白くて、なんか色素が薄いのが好み。」
「堀尾君って面食いだね。彼女、人気があるんだよ?
カレシは居ないみたいだけど、先輩たちも気にしてるし。」
ふーん、そうなんだ。
遠くの渡り廊下を歩くを目で追いながらの会話。
話には乗らないけど、シッカリ聞いた。
なるほどね。
手に入れるなら早いほうがいいんだ。
ということで、俺は同じ図書委員になった。
まだ好きだとか、そんなんじゃないし。
でも、なんとなく気になる。可愛いと思う。
さて、ここからどうしようかな。
こういうのって苦手だから、もう少し様子見かな。
ちょっと学校が楽しくなった。
You belong to me. 1
2006.09.25
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