不「本」意


呆然


 こんなはずじゃなかった。



 おれの体は石のように固まって動かない。
 だけど、目だけは周囲を見回すためにキョロキョロと動いていた。

 おれの頬を冷や汗がつたう。

「違う。そんなつもりじゃなかった!」

 ここはおれが間借りしている宿の一室。
 周囲には誰もいない。
 でも、言わずにはいられなかった。

 本当に違うんだ。
 そんなつもりでおれはコレを手にしたわけじゃない。

「くそっ!」

 おれはイラだった。

 自分の意思で求めたのならば、おれは全力を持って隠そう。
 だけど、おれは知らなかったんだ。

 でも、そんな言い訳はきっと通らない。

 だから、コレは誰かの目に止まる前に隠さなければいけない。
 おれの本来の意思とは関係なく。

 おれの手からそれがすべり落ち、音をたてた。



 どうしてこんな事になってしまったのだろう。

 そう思いながらも、原因がおれ自身にあることぐらい本当はわかっていた。

 そう。
 おれが、ジルザ=ジュロウジが今の状況を作り出したのだ。

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