エピソード　301～305

エピソード301（履歴書）
極道から足を洗って一般社会に1から出直す時、もちろん就職活動をするわけだが履歴書を書かなければならない。
俺なんて１６歳で高校を中退し社会に出てから３年程しかまともに会社勤めをした事が無く、人生の再出発は３０歳だった。
１０年近くの空白を埋めるのに必死で色々考えて履歴書を書く事で頭が悪いので半日が潰れた(笑)。まず、少しでも空白の年数を埋める為に高校は中退ではなくモチロン卒業した事にする(笑)。
そして次に３年程しか働いていない会社を５年くらい働いていた事にして、その後は適当にトラックの持ち込み（自分所有のトラック）で緑ナンバー（営業ナンバー）を借りて、またしても５年くらい働いていたが会社が倒産してしまってなどと偽り、会社名は実際に倒産した運送屋の名前を適当に書いておき、電話連絡で前の会社に問い合わせされても大丈夫なようにして東海エリアに潜伏した。
幸い、現在いる会社には履歴書すら出さずに潜り込んでマジメに働いている(笑)

エピソード302（取り立てられる側）
現役の極道であるうちはサラ金なんかから借金しまくったりカードで金目の物を買いまくって質屋にブチ込んだりしても一切クレジット会社に支払いなんてする事もなく、借金申し込みの際にわざと組事務所の電話番号を連絡先にしたりする者もいて取り立て屋が電話してきても電話に出た当番者が「テメェどこに電話かけてんのか分かってんのかコラァ！」で借金は帳消し状態になる事もあったし（笑）、借りた後に引っ越して住民票を移動しなければ取り立て屋もさすがに追ってはこれない。もちろん国からの住民税の請求書すらこない（笑）。
しかし・・・それはあくまでも現役の不良街道まっしぐらならではの話で、一転して俺のように変な気を起こしてマジメに人生1からやり直そうなんて事を試みようなんて思うと、よくまぁこんなに年月が経っているのに覚えてるんですね！と思うくらい次から次へと借金取りから「借りた金返せよ」の催促がバンバンくる。
テレビのCMでは綺麗なオネエさん方が宣伝しているサラ金も返すもん返さなきゃ、むさ苦しいオッサンから雪だるま式に膨れ上がった金利を含めて「早く返さんかい！金利払いたくないなら今すぐ元金だけでも一括で払え！」だのとヤクザ者のように怒鳴ってくる。
今まで取り立てる側しか経験してないのに、マジメ人間になった瞬間から取り立てられる側になっちゃうんだから嫌になる（笑）。
そーゆー時はどうしたのか？決まってるじゃないですかっ！逆に脅して月々5千円の分割で金利全てカットで示談しましたサラ金会社3社分・・・笑！
皆さん安易な気持ちで極道になったり極道辞めるのはやめましょう！爆。

エピソード303（誰ですか？）
極道になって間もない頃、本部事務所で電話番をやり始めて数日目の事。
トゥルルルル♪
俺「○○本部っ！」
謎のX「おう！俺だっ！」
俺「ご苦労さんですっ！」
謎のX「オマエ誰だ？」
俺「哀川ですが・・・」
謎のX「知らんなあ・・・そんな奴・・・まぁいいやっ！親分いるか？」
俺「あの・・・失礼ですがどちら様でしょうか？」
謎のX「なにぃ！俺を知らんのかっ！○○だっ！」
知らねえよ！そんな奴！ムカツクなぁコイツ！という俺の心の中の叫びか聞こえたのかどうかは知らないが・・・
謎のX「あのなぁ・・・君の親分の親分だっ！もういいっ！」
ツーツーツー電話が切れた。ふざけた野郎だっ！なにが君の親分の親分だなんてアホかっ！・・・
ん？ふざけたアホは俺なのであった！親分の親分という事は先代の親分なのであった（笑）
先代の親分の名字が今の親分と違うし、名前すら聞いた事もない極道なりたて数日目の電話番の俺がその事で怒られはしなかったが気付いてから冷汗がドッと出た出来事だった（笑）

エピソード304（痛かった視線）
義理(葬儀)の日取りなどは大抵、前もって各任侠団体から通知で知らされる。
だから自分の組からも前もってこの日は義理だから用意しておけと伝達がくる・・・はずがっ！その日に限って行く筈だった若衆がドタキャンした為、急遽兄貴分と俺も行く事になってしまった。
本部事務所に詰めてる時で礼服も無く、まさに普段着用スーツ状態の俺・・・兄貴分に金を渡され近くの紳士服の大型チェーン店へダッシュ！急いで着替えて車に乗り込み道中半ばである事に気付いた。
やばいっ！革靴の色が黒ではあるが目立つ金色のマークが・・・！
俺「兄貴・・・自分の靴、黒マジックでマーク塗り潰さないとヤバイですよねえ？」
兄貴分「あ？別にそのくらい誰も見てねえから大丈夫だ」
えーっ！？そーゆーもんっすか？普通・・・内心そう思いながら現地に着いてしまったのだが、さすが関東の名門組織の葬儀なだけに大勢の極道が集まっている会場内に入ると一斉に皆の視線がこちらに向けられ小声で「ありゃ、どこ一家だ？」「○○一家じゃねえか？」「ばか！それはさっき来たじゃねえかっ！ありゃ△△一家だろう」という、ざわめきが聞こえてきた。
一斉に集まる視線に靴だけは目立たぬように歩いて冷や汗だらだらだった(笑)早く帰りてえ！そればかりが脳裏をグルグルしていると・・・ガビーン！！！案内の人が見えて「御苦労様です！どうぞこちらにお上がり下さい」・・・事もあろうか座敷に案内されてしまったのだ。
当然、靴を脱ぐ羽目になりズラーッと並ぶ黒い革靴の中に、ひときわキラキラ輝く俺の革靴のマーク・・・それに気付いた他団体の人達の痛い視線・・・「オマエ！なめとんのか！」って殺されるんじゃないかと思いながら終始冷や汗をかきっぱなしの最悪な義理場でした(笑)いえ俺にとっては笑い事じゃなかったんですギャハハッ！