道草の時間ー秋(3)(2007)


コナギ

コナギ
Monochoria vaginalis (Burm. f.) C. Presl ex Kunth

日本、中国、東南アジアに分布する。青紫色の可愛い花をつける植物だが、繁殖の旺盛な水田雑草として知られている。ただし、農薬には弱く、駆除は比較的容易なので、水田よりも休耕田のような湿地で増えているようだ。そのほうが、この植物にとっても安心できる環境であろう。



ホシアサガオ

ホシアサガオ
Ipomea triloba L.

アメリカ大陸が原産と考えられているヒルガオ科の帰化植物。アサガオという名の割には、花はごく小さい。20数年前にすでに見ているのだが、忘れかけている植物であった。しかしこの数年、秋になると、散歩道の同じ場所で見かけるようになり、無視できない植物になった。この写真の花は花冠の中心が紫だが、以前にスケッチしたことがあり、それを見ると、花冠の色は赤紫色であった。色の違いは遺伝的なものか、生理的なものか、知りたいのだが。



カマツカ



カマツカ
Pourthiaea villosa Decne.

10月も半ばを過ぎると、カマツカの実が赤く色づき、里山に秋の色を添える。花も実も葉も、とても素朴な感じのする木である。カマツカは鎌柄の意で、材質が丈夫なので、鎌の柄に使われたことに由来するらしい。そういう性質もこの木の持ち味で好もしい。日本全土にごく普通な植物だが、派手ではないので、一般にはあまり知られていないかもしれない。




イヌタデ




イヌタデ
Polygonum longisetum De Bruyn

いうまでもなく、アカノマンマとして親しまれているタデ科の雑草で、秋の野を散策すれば、無数に目に入る植物である。「北の国ではもう秋だ/あかのまんまの/つゆくさの/鴉揚羽の八月は/秋は夏のをはりです」(三好達治 北の国では)とあるように、アカノマンマは秋の始まりをつげる花であり、秋の深まりとともに、野に咲き乱れる。そして大量の種子をまき散らして秋の終焉ととも一生を終える。



クマツヅラ



クマツヅラ2

クマツヅラ
Verbena officinalis L.

4年前に散歩道の一ヶ所でクマツヅラの群生をみた。ところが翌年、同じ場所をさがしても、一本も見つけることができなかった。次の年も、次の年も。ところが先日、同じ場所を訪れたところ、数本のクマツヅラが生えているのを見つけた。多年草だから、多分細々と生き続けたのだろう。草むらの中だから、私が見落としていた可能性が大きい。私の散歩道ではめったに見られないが、他所ではそんなにめずらしくない植物かもしれない。



アレチハナガサ


アレチハナガサ
Verbena brasiliensis Vell.

クマツヅラのことを書いたので、ついでに住宅の造成予定地の草むらのなかに見つけたアレチハナガサを紹介する。こちらの植物は、やはりクマツヅラ属の植物で、南アメリカ原産の帰化植物。クマツヅラに似ているかといえば似ているが、容易に区別できる。葉は長楕円で切れ込みがなく、鋸歯がある。また、クマツヅラより大柄である。残念ながら写真はいささかピンぼけである。



キツネノマゴ




キツネノマゴ
Justicia procumbens L. var. leucantha Honda

夏から秋の終りまで咲いている、畦道や道端にごく普通の植物。なぜキツネノマゴと名付けられたのか。由来は分からないが、穂先がキツネの尻尾に似ているからか。なるほど、キツネの息子にしては小さすぎる。花が小さいから、よく見ようと思ったら、しゃがみこまねばならない。まさに道草である。



ヨメナ

ヨメナ
Kalimeris yomena Kitam.

野山に花の少なくなった晩秋、まだせい一杯咲いているのはヨメナやノコンギク、いわゆる野菊である。日本人に愛される花。「遠い山から吹いてくる こ寒い風にゆれながら・・・」という文部省唱歌の歌詞にあるとおり、野菊は「きれいな、やさしい、明るい」姿の花である。

追記(訂正)(2007.12):この写真の植物をヨメナと書いてしまったが、その後図鑑等には、ヨメナは中部以西の植物で、関東で田の畦などに普通の野菊はカントウヨメナ(Kalimeris pseudoyomena Kitam.)であることが記載されていることを知った。きちんと同定していないが、写真のものはカントウヨメナであろう。訂正させていただく。






ノコンギク

ノコンギク
Aster ageratoides Tercz. var. ovatus (Fr. et Sav.) Nakai

ヨメナと比べると、ノコンギクの方は意外に少ない。やや日かげが好きなので、ヨメナの陽気さと比べて、少しおとなしい。ノコンギクは花の大きさや色など、変異にとんでいる。写真のものの舌状花は、薄紫というより白に近い。



ムラサキシキブ




ムラサキシキブ
Callicarpa japonica Thunb.

11月も中旬を過ぎ、平地でも紅葉が始まっている。ふと林のへりに、ムラサキシキブの実を見つける。紫の実と枯れかかった葉が初冬のこの時期でなければ見られない絵模様を作り出している。やがて葉は落ち、季節は移り、紫の実だけが枝に残る。



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