妖都美食家その6

 

「ねぇ、なんで至郎田があのビルにいたんだろう?」

弥子がコンビニで買ったパンを食べていた。ここは魔界探偵事務所である。ネウロは椅子に座って、窓のほうを向いていた。時刻は夕方。仕事帰りで道路はダンプだの、トラックだのでごった返していた。

弥子は今日、警察の事情聴取に呼ばれていた。もちろん、至郎田のことしか話していない。ネウロが壬生のことは話すなときつく言われていたからだ。話せば首をきつく絞められるのは目に見えているから、弥子は秘密を守り通した。ただ担当の御厨の眼光が怖くて、口を滑らせそうになったが。

「わかりきっておろう。我輩たちはハメられたのだ。姉守密にな」

姉守密。壬生に素行調査を依頼した弥子の同級生だ。彼はすでに自主退学している。

「おそらく壬生を誘い出すために、あのビルに餌を撒いていたのだろう。そして、我輩たちと戦わせるために、壬生の調査をさせていたのだ」

そういってネウロはくるりと椅子を弥子のほうに向けると、懐から紙を取り出した。B5くらいの大きさで2枚ある。

「こいつは警視庁に保管されてあったドーピングコンソメスープのレシピだ。もう一枚はあのビルの地下にあったものだ。見比べてみろ」

弥子はどうやって手に入れたかは聞かないことにして、机の上に差し出されたDCSのレシピを見比べてみた。

最初は牛スネ肉とか骨付き鶏、タマネギ、ニンジンとか普通の材料だが、後半になると電球の何がしとか、わけのわからない材料で占められていた。最後にはおいしくつくろうという情熱と書かれてある。

今度はもう一枚のレシピを見た。書かれているのはさっきと同じだが、最後のほうに新しい材料が記入されていた。

神便鬼毒酒。

人魚の膏油。

蟠桃。

般若湯。

「何これ?」

弥子は首をひねった。聞いた事のない材料だ。

「新しい材料はこの店で買ったようだ」

ネウロは包装紙を取り出した。

『如月骨董品店』

そう書かれていた。

「あっ、この店知ってる。叶絵に誘われて、2年前に腐らないあんパンとか、ピザを売っていた店だ」

「・・・なぜ、骨董品屋に食べ物が売っているのだ。それも腐らないとは・・・」

「なんでもその食べ物には龍脈の力で、腐敗速度がすごく遅いんだって。だから、1年以上腐らなかったそうだよ。実際食べたけど、おいしかった。しかも格安でおなかいっぱい食べられたよ」

はぁ。

ネウロはため息をついた。さすがのネウロでも骨董品店で売られている食べ物を、平然と食べるとは。弥子らしいといえば、それまでだが。

「思い出した。確か店の冷蔵庫にそんな名前の薬が置いてあったよ。おいしそうだったけど、素人が飲むのは危険だって、店長さんに怒られたけどね」

こいつなら死ななければなんでも飲むだろう。ネウロはそんな表情をしていた。さすがの魔人も弥子の食欲には呆れていた。

「至郎田は我輩たちはともかく、壬生を見ても平常心を保っていた。奴は知っていたのだ、壬生を。おそらく姉守が至郎田を脱獄させ、あのビルの地下室にDCSを作らせていたのだ。その見返りとして壬生を殺すことを約束させたのだろう」

警察の調査で、あの廃ビルの地下には立派な厨房があった。そこで至郎田はDCSを作っていたのだ。DCSの材料もきっちりそろえて。

問題は誰が用意したかである。ビルのオーナーからは、取り壊しを1週間延期してくれと、電話で頼まれたそうだ。その代わりにいつの間にか自分の机の上に大金が置いてあった。きっちり窓は閉めてあったし、気味が悪いので、取り壊しを延期したそうだ。

それに厨房に使われていた寸胴鍋などは、すべてそっち関係の卸売業者のものだが、それも道具が忽然と消えて、代金だけが残っていたのである。

「姉守くんが犯人だとしても、人間にそんなことができるの?」

「できるではないか。サイみたいな人間が」

サイ。弥子に恐怖を体全体にしみこませた怪盗サイ。弥子は少しぶるっと震えた。

「もしかすると壬生の謎は、壬生自身ではなく、姉守が作っていたかも知れんな」

ネウロは再び窓のほうへ向けた。

 

「すると鴉室さんは今回のことは関知してないわけですね?」

壬生が鴉室に問いただした。

ここはおでんの屋台。小田の店である。

もうすっかり日は沈んでおり、真っ暗であった。小田の屋台だけ、街灯に照らされており、そばにあるポリバケツにはホームレスが中のものを漁っていた。小田は新聞を読んでいた。

「ああ、知らないぜ。まさか、そんなものが出てくるとはねぇ」

鴉室はおでんを食べながら答えた。

「それより陰陽師関係の線はどうでしたか?」

壬生は話を切り替えた。

「そっち関係を調べてみたが、ノータッチのようだ。式神なんざ専門家でなくても、少しかじってりゃ誰でも作れるからな」

もちろん、一般人では作れない。それなりに人ならざる力を持ってなくては作れないのだ。

「2年前の事件では、力を持つ者が急増したが、ある時期を境に急激に力が弱まっていったみたいだ。龍脈が活性している間だけの期間限定ってところだな」

壬生もその事件の当事者であった。確かに当時は異常なまでに気が高まっていた。今ではかなり落ち着いている。力自体は失っていなかった。そもそも壬生は力に目覚める以前に、気の扱いを習っている。元からある力が強化されただけなのだ。よほどの事故でも遭わない限り、人間は言葉を忘れることはない。体が覚えているのだ。

「式神を作るための、式神羅写はどうですか?」

式神羅写とは式神を作るための土台だ。もちろんただの紙ではない。特殊な紙で作られている。すでに如月に聞いてみたが、店には在庫がないそうだ。それにあったとしても宮内庁陰陽寮以外に卸すことはないそうである。

「そっちのほうはまだだったな。調べてみるよ」

鴉室はそう言った。酒をぐびぐびと飲んだ。

「そういや、以前、刑事がここに来ていたぜ。顔見知りみたいだったけどさ」

鴉室が小田に尋ねた。

「ああ、あいつの親父さんがよくここに来てくれてね。息子もたまに来てくれるのさ」

小田は新聞に目を離さず答えた。壬生はどうでもいいと思っているらしく、代金を置くとすたすたと去っていった。

「狭い日本そんなに急いでどこへいく・・・、か」

小田は新聞を読み終えると、屋台のほうへ戻ってきた。

「とはいえ鴉室。あんたは少し働くべきだな。レクイエムみたいにとは言わんが」

「ははは」

鴉室はおでんを食べている。

ごとり。

ポリバケツが倒れる音がした。そっちに目をやるとごみを漁っていたホームレスがじっとこちらを見ていた。目は淀んでおり、口からよだれが流れていた。

ぐぉぉぉ。

ホームレスの口が裂けた。耳まで裂けた。両手の爪は猛禽類のように鋭くなっていた。しかし、屋台の二人は平然としていた。おでんを食べ、世間話をしていたのだ。

「・・・闇に当てられてしまったか」

「年間の行方不明者はそうやって消えていくそうだ。中には北に拉致されたと誤解されることも多いそうだぜ」

「前に中国人が数人、鬼になったよ」

「鬼になって、それからどうした?」

ぐぉぉぉぉ!!

ホームレスが牙をむき出して襲ってきた。

小田は箸を取り出すと、しゅっと二本ともホームレスのほうへ投げた。

ぶす、ぶすぅ!!

ぐぇぇぇ。

箸はホームレスの眼球に刺さった。苦しそうにもがくホームレス。そこへ小田が焼酎のビンを持って、ホームレスに近づいた。

ぐびぐびと中のものを口の中に含むと、ぶばぁとホームレスに吹きかけた。

ぎゃあぁぁぁ!!

ホームレスは見る見るうちに溶けていった。焼酎には魔を払う聖水が含まれており、この程度の魔物なら、簡単に溶かしてしまうのである。後に残るのはホームレスが着ていたぼろ着のみであった。

「迷わず成仏しろよ。ナンマイダ、ナンマイダ・・・」

小田は両手を合わせて、お経を唱えた。

「おや、小田さん。何をしているのですか?」

後ろから声がした。御厨である。

「なぁに、ちょいとしたおまじないさ。今日もおでんを食いに来たんだろう?」

「ええ。最近ちょっと厄介な事件がありまして、その帰りなんですよ」

「ほう。厄介な事件なら泊りがけでもしてそうだが、周りに止められたかね?」

「そうです。少しは体を労われとね。親父みたいになるぞと、言われました」

「あっはっは。なら、おでんを食って、がーっと寝ちまえ。刑事は体が資本だ。壊しちまったらなーんにもならねぇ」

そういって小田は御厨におでんを差し出した。

その横を鴉室がちびちびと酒を飲んでいた。

 

乃木坂恵は夜道を歩いていた。

部活の帰りである。今日は終わった後、瀬能たちと会ってラーメンを食べた。

夜道は危険だからと、瀬能が送っていくと言ってくれたが、遠慮した。萱野は帰り道が逆方向だし、瀬能とふたりきりは少し恥ずかしいし、意識してしまいそうだからである。

だが数分後彼女は後悔した。この時間の住宅街は本当に寂しいのだ。東京なのに、車があんまり通らない道があるとは信じられない。まあ、どんな町でも車がひっきりなしに通る道と、通らない道はある。いわゆる血管みたいなものだ。車という血液がここにはあまり流れてこないのである。

(瀬能くんに送ってもらえばよかった)

乃木坂はぼやいたが、過ぎたことを気にしても仕方がない。さっさと帰ることにした。

風が冷たいが制服の下には手編みのセーターに、マフラーがある。以前壬生からもらったものだ。

乃木坂は後ろから誰かに見られている感じがしてならなかった。

一体、誰だろうか?

以前、乃木坂はしょうけらという妖怪に憑りつかれていた。そのおかげでノイローゼになり、自殺未遂を起こしそうになった。それを壬生に助けてもらったのだ。

乃木坂は歩く速度を速めた。

すると視線の主は彼女を追いかけ始めたのだ。

世にも恐ろしい追いかけっこが始まった。止まれば、そいつに頭からかじられる。そんな気がした。水泳で言えばタールの中を泳いでいる感覚だと思った。どこまでは素人も泳ごうとも、思ったようにいかないのだ。

「まてぇ!!」

「え?」

突如、後ろから声をかけられた。乃木坂は振り向くと、なにやら風が吹きぬけた。

ずばぁ!!

彼女の後ろにある壁が横に切断された。髪の毛もほんのちょっぴり切れ、ぱらぱらと落ちた。乃木坂はものすごく怖くなった。怖くて、腰が抜けてしまった。

乃木坂の目の前に恐ろしい相手が立っていた。

そいつは真っ裸だった。左手は長巻が握っていた。だが恐ろしいのは露出狂だからではない。そいつの頭部はなぜかコアラだ。オーストラリアに住む動物だ。あまりにへんてこな、得体の知れない存在であった。

「拙者の名前はコアラ抜刀斎。お主の命をもらうでござるよ」

コアラ抜刀斎はハスキーな声で律儀に名乗ったが、乃木坂にしてみれば、その後の死刑宣告に背筋が凍っていた。以前、事件に巻き込まれたとき、壬生が妖怪を退治するところを見たことあるが、コアラ抜刀斎のようなシュールな感じはしなかった。妖怪とは違う、異質の恐ろしさを感じるのだ。

「いくぞ!!」

コアラ抜刀斎は長巻を構えた。長巻は、柄を短くした薙刀のような武器である。おそらく林崎甚助に習ったのだろう。長巻を抜刀術に用いたのは林崎甚助が最初なのだ。

コアラ抜刀斎は乃木坂に一歩ずつ近づいていった。長巻を水平に構えている。間合いに入れば乃木坂は肩からばっさり薙ぎおとされるだろう。それに彼女は一歩も下がることができない。目の前の化け物に飲み込まれているのだ。まさに乃木坂の命は風前の灯であった。

「こっ、来ないで!!」

乃木坂はやっと声を絞り出した。頭の中がこんがらがり、ろくに思考が定まらない。

「だめでござる。怨むなら壬生紅葉を怨むでござる」

コアラ抜刀斎は平淡と答えた。

(壬生さん?どうしてここに壬生さんの名前が・・・?)

逆に乃木坂の頭がすっきりした。この化け物は自分が壬生の知り合いだと知っている。そして、自分が襲われているのは、壬生のせいだと言っているのだ。

(今まで斃した妖怪たちの敵討ち?でも、あいつは妖怪に見えない・・・)

その間にコアラ抜刀斎は長巻を乃木坂に振り下ろそうとした。そのとき!!

「この変態がぁ!!」

がすぅ!!

コアラ抜刀斎は後ろから誰かに殴られた。頭を抑え、うずくまった。その後ろには男が立っていた。手には鉄パイプが握られていた。

「あいつに電話で指示されて、来てみりゃ、なんだぁてめぇは?コアラの被り物で顔を隠してよぉ」

男はどこか暴力団の臭いがした。男は吾代忍であった。今日も仕事を終えた帰り道、この凶事に遭遇したのである。だが電話で指示されたといっていたから、誰かの進言でここに来たのだろう。もちろん、相手はネウロだ。

「くっ、くくくくく。吾代かぁ」

コアラ抜刀斎は頭を押さえながら言った。

「ああん?変態がなんで俺の名前を知ってるんだよ!!」

「知っているも何も、拙者は早乙女國春を殺した犯人だからでござるよ」

「!?」

吾代は動揺した。早乙女國春は吾代が勤めていた早乙女金融の社長の名前だ。犯人は社長代行の鷲尾という男で、今も逃亡中である。

「正確にはお主が社長を殺した犯人をイメージしたものでござるがな」

「イメージだと?わけのわからないことを言いやがって!死ね!!」

吾代はコアラ抜刀斎に殴りかかった。今日はくしゃくしゃすることがあったので、こいつで憂さを晴らすために絡んだのだ。吾代はこれでも刀を持った相手と何度も戦ったことがある。変態には負けない自信があった。

すぱぁ、ずばぁ!!

コアラ抜刀斎は長巻を振るった。吾代はそれを避けている。下手に受ければ武器を弾かれる危険があるからだ。刀は結構衝撃にもろい。調子に乗って時代劇みたいな真似をすれば、刀は折れてしまう。

「くっくっく、貴様を殺す理由がないから、殺さないでござる。殺すのはそこにいる乃木坂恵だけでござるよ」

「それがどうした!俺には関係ねぇ!!俺はてめぇをぶっ殺してストレス解消するんだよ!!」

吾代は鉄パイプの先端をコアラ抜刀斎に向け、突進してきた。刀も斬られたら死ぬが、斬られなければいいのだ。

吾代はコアラ抜刀斎の頭を思い切り叩いた。ぱかりと頭蓋骨が砕けるいやな音がすると、抜刀斎は消えていった。

「てめぇなんぞ、あいつらに比べれば屁でもねぇんだよ」

吾代はつばを吐くと、腰を抜かした乃木坂を見た。まだガクガク震えている。

「へっ、いいストレス解消になったぜ。じゃあな」

「後ろ!!」

吾代が立ち去ろうとしたら、乃木坂が大声を上げた。

「クエェェ・・・」

後ろには、いつの間にか人が大勢立っていた。正確には人の頭だ。頭だけに鳥の足が二本ついていた。吾代にはその顔が誰だかわかっていた。

「鷲尾!!」

それは早乙女金融の社長を殺した犯人、鷲尾であった。しかし、目の前の鷲尾は化け物であった。

「クエエ!!」

鷲尾は足をばたばたさせて攻撃してきた。

「死ねぇ!!」

吾代は鉄パイプで鷲尾を叩いた。情けない声を上げて鷲尾は消えた。だが、鷲尾は一匹だけではない、大勢いるのだ。寂しかった路上には鷲尾でいっぱいになった。

「クエエ!!」「クエエ!!」「クエエ!!」

多勢に無勢とはこのことで、いくら一匹が弱くても、対処できなくなった。

「ちくしょう!なんで鷲尾が首だけで、こんなにいっぱいいるんだよ!!」

吾代はだんだん疲れてきた。鉄パイプを握る力がどんどん弱くなってきた。別の鷲尾たちは乃木坂に迫ってきた。

(せめてアヤ・エイジアの新曲を買ってから死にたかった)

吾代がそう思った、その時!!

「大丈夫か、乃木坂!!」

一人の男が鷲尾たちを正拳突きで倒していった。

「お前・・・、瀬能か?」

「吾代さん、大丈夫だったか?」

瀬能であった。心強い援軍に吾代はやる気を出した。そして、数十分後には鷲尾たちを全滅させることができたのである。

「いったい、なんだったんだろうね?あんな妖怪は知らないなぁ」

萱野あずさであった。彼は腰を抜かした乃木坂を介抱していた。

「あんがとな。おかげで助かったが・・・。なんでここがわかった?」

「ああ、あんたの知り合いの探偵がここで乃木坂が襲われていると電話で教えてくれたんだよ」

「電話で?あいつらに番号を教えたのか?」

「いや、教えていない。なんでだろうな?」

答えはネウロの魔界能力のおかげであった。その3で吾代と瀬能が仲良く話していたとき、ネウロが瀬能にイビルストーカーをとりつかせたのである。微妙な謎の気配を感じたからだ。そして乃木坂が襲われていたので、吾代に助けさせ、瀬能たちを呼んだのである。

 

「助けたお礼に一発やらせてもらうつもりだったのだろう?」

ネウロが言った。

「いいいいいい一発だとっ!!なっ、ななななななんて破廉恥な!!」

瀬能が真っ赤になった。

ここは桂木弥子魔界探偵事務所。あのあと吾代の携帯に、ネウロが3人を事務所に連れて来いと命令したのである。もちろん、吾代は家に帰って寝たかったのだが、逆らえば永遠に目覚めることのない眠りに陥る羽目になるので、連れて来た。

「吾代。この小僧に見覚えはないか?」

ネウロが写真を手にして、見せた。姉守の写真である。

「ああん、誰だコイツ・・・、んん?」

吾代は写真をじっくり見た。

「そういや見たことあるな・・・。そうだ、会社の帰りに一度ぶつかってきた餓鬼だ。俺がメンチ切ってもびびらないで、にやにや笑っていたからよく覚えていたんだ」

吾代のメンチは早乙女金融時代では脅威の兵器だった。今はへし折られてガラクタと化している。

「前にビルで見たWHO太は我輩が人員を確保しようと思ったときに思い浮かんだものだ。吾代。お前が戦ったコアラ抜刀斎と、鷲尾も頭の中で思い浮かんだものだろう?」

「・・・なんで、名前を知っているのかは聞かないが、言われてみれば確かにそうだな」

「・・・どういうこと?」

弥子が訊いた。

「姉守は人がイメージしたものを具現化する力を持っているのだ。人間がこのような力を持っているとは・・・」

ネウロは感心していた。

「コアラ抜刀斎はそこの女を殺そうとした。しかも壬生のせいだといって。自分の悪行を他人に擦り付ける。素晴らしいな」

ネウロは感心していた。瀬能たちは理解に苦しんでいたが、弥子たちは慣れっこであった。

 

魔界探偵事務所の向かいにあるビルの屋上に一人の少年が立っていた。少年の手には双眼鏡が握られていた。少年はそれで向こうの様子を見ていた。そしてにやにや笑っているのだ。見るものを不快にする笑みであった。

「くくく・・・、壬生ぅ、お前に関わるやつは徹底的に不幸にしてやる。僕を苦しめた報いを受けるがいいさ。くっくっく・・・」

 

続く

 
 
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あとがき

 

今回はかなりぐだぐだな展開になっています。

妖都側は乃木坂を出しましたが、ネウロ側はコアラ抜刀斎と鷲尾を出しました。

どうも最初と考えたのと、違う展開になりそうです。

 

20061125