ネギまVS魔人学園その8【最終回】

 

「それでは美里先生お別れパーティを始めまーす!!」

椎名桜子が音頭を取ると、3−Aの生徒たちは一斉に乾杯した。

ここはマミーズ麻帆良学園店、美里は3−A主催のお別れパーティに出席していた。

美里の教育実習最終日に全員なぜか寮で眠りこけていたのだ。肝心の美里はすでに帰ってしまっていたので、休日に改めてパーティを開くことになったのである。

美里はなぜ自分が寝てしまったのかわからなかった。ローゼンクロイツの件はすでに壬生たちが解決したと聞かされたとき、美里は仲間はずれにされた悲しかったが、仲間たちがこの件に参加し、緋勇龍麻がそれを指揮をしていたことを聞いたとき、とてもうれしかった。ただ緋勇がローゼンクロイツの幹部と通じていたことは壬生や御門など一部の仲間しか知らない。また彼らもわざわざ教えるつもりもない。

 

「それでは美里先生、クラスのみんなで出し合った花束を受け取ってください」

雪広あやかがクラスの代表として美里に花束を贈った。美里の目から涙がこぼれる。うれし涙だ。彼女はハンカチを取り出すと、涙を拭いた。つられて一部の生徒ももらい泣き。

「でも、なんであの日僕たち寝ちゃってたんだろ?ふっしぎー!」

「お姉ちゃん、はりきりすぎて眠っちゃったですよ」

「それにしてもみんながみんな寝ちゃうなんて不思議だよね」

鳴滝姉妹と春日美空が不思議がってる。真相を知っているのは一部の生徒のみだ。もちろんテロリストが学園を襲撃したなど誰も信じるわけがない。超鈴音や葉加瀬聡美は楽しかったと言ってるが、宮崎のどかびくびくしている。彼女はテロ撃退に協力しているからなおさらだ。ネギと明日菜も一応協力していた。

「そうそう、みなさんには感謝しています。なれない私に色々気遣ってくれて。無事に実習を済ませられたのはみなさんのおかげだと思っています」

美里は立ち上がり、彼女たちに感謝の言葉を述べた。

「ですが実習中でまだ話せなかった子が二人ほどいました。私はその人たちと仲良く出来なかったのが残念でなりません」

「その二人は?」

ネギがたずねた。

「その人は出席番号1番相坂さよさん、25番長谷千雨さんです」

 

その頃寮では長谷川千雨が自室でパソコンをいじっていた。彼女だけパーティに参加しなかった、彼女は人ごみが嫌いで群れるのが苦手なのだ。

(大体変人どもと教室が一緒なのも嫌なのに、パーティなんかじょうだんじゃねぇっての)

千雨は用意した衣装に着替えると、デジカメの前に立ってポーズを決めた。

「オッケー!今日もちうはきれいだぴょーん!!」

普段は地味で目立たない彼女も、ネットの世界ではアイドルなのだ。ネットアイドルちうはネット世界では1の実力を持つ。今日も彼女は新しい写真に力を注いでいるのだ。

「まーったく、あんな変人どもと集まるなんて冗談じゃないぴょーん!でも美里先生はまともだったから、そこだけはましだったぴょーん!!」

ぱしゃぱしゃとフラッシュを焚くたびに、千雨はポーズを変えている。写真はあとで修整するのだ。にきびとか胸とか。彼女自身は普通の女子中学生だと思っている。委員長や他のクラスメートのような輝きはない。それにネットだと恥ずかしくないから大胆になれるのだ。ある意味ネット依存症なのかもしれない。

とんとん。

ノックの音がした。

どっきーん!!千雨の心臓が飛び出るくらい驚いた。

(だ、誰だよ!!)

千雨は心の中で毒づいた。せっかく興が乗っていたのに、台無しにされた気分だ。

「長谷川さん、いませんかー?僕です、ネギです!」

(げっ、子供教師!!)

正直彼女はネギが嫌いであった。10歳なのに教師、労働基準法をまるっきり無視している不条理な存在。そもそもあのクラスには変人が多すぎるのだ。留学生はまだわかるが、4人もいるのは多すぎる。さらに身長が180センチ超えてる者や、幼稚園児にしかみえない者。

極めつけは絡繰茶々丸。彼女はどう見てもロボにしか見えない。手足の関節とか、耳の飾りとか。なのに誰も突っ込まない。さらに今年の3学期から担任になった子供教師。千雨は心の中でつぶやいた。

『私の普通の学園生活を返せ』と。

とんとん。

ノックの音はまだ続いている。

「美里先生のお別れパーティがあるんです。美里先生もぜひ長谷川さんに来て欲しいって。あのぉ、長谷川さんいないんですか?」

千雨は居留守を使っている。美里のパーティはともかく、あのクラスの連中とだけはいやであった。

「えーい、勝手にあけちゃえ!!」

「のわぁぁ!!」

ネギがとんでもないことを口走ると、千雨はドアに向かって走った!この格好を見られるわけにはいかないのだ!!

「なーんて、勝手に開けたりしたらまずいよね」

ずこー!!

千雨は勢いあまりドアを開いてしまった。スライングするように。

「なーんだ、長谷川さんいたんですね」

「・・・」

結局千雨はネギに強引に連れて行かれてしまった。もちろん衣装は着替えないまま。

 

「それ、ちうの新作ですよね。長谷川さんのホームページは日記とか色々あるし、感心しちゃいますよ」

「・・・そりゃどうも」

ここはマミーズ、千雨はネギに連れられてたのだ。変人たちと一緒にいるのはつらいし、眼鏡がないと人前には出られないので、あまりこういった集まりは苦手なのだ。まあネギが自分のファンだと知り、少しは優越感があるが。ただ椎名桜子たちに衣装の事を聞かれたりしたのは、苦痛であったが。

(まあ、たまにはいいかな・・・)

そう思った矢先、

「これ長谷川さんなんですよ。綺麗でしょう?」

ネギがノートパソコンでチアリーディングのメンバーに、ちうのホームページを見せていた。

「うひゃー、千雨ちゃんきれー!いつもこの格好で学校来たらいいのに!!」

「でも鼻とか胸とか細工してるよね。本人とは別人だもの」

「つーか、ネットとはいえよくこんな恥ずかしい格好できるよね。あたしにはまねできないや」

桜子、美砂、円はあっはっはと大声で笑った。それを見た千雨は。

(てめぇらいつか殺す!!)

心の中で殺意を膨らませていた。

「残るは相坂さんね。彼女いつも寂しそうにしているから、せめて最後にみんなとお別れがしたかったわ」

美里のつぶやきにネギが反応した。

「あ、相坂さんはちょっと・・・」

ネギはあわてている。何か人にはいえないことでもあるのだろうか?

「彼女なら私の隣にいるんだけどね・・・」

朝倉和美が答える。彼女の隣には那波千鶴と村上夏美がいるが、その間に一人ぶんの席が空いていた。そこには一人の少女が座っていた。一人だけ違う制服を着ている、影の薄そうな女の子。相坂さよである。

「・・・どうもです」

さよはぺこりとお辞儀した。

「あら、相坂さん来てくれたのね。嬉しいわ」

美里は本当に嬉しそうだ。しかし、さよはどことなく暗い。

「私相坂さんが気になっていたの。だってクラスのみんなと打ち解けてないし、みんなにも無視されてるみたいだから。それに私の知り合いにもさよって人がいるし、漢字で紗夜と書くのだけれど・・・」

「打ち解けるわけないと思うけどな〜、それに見えなきゃわからないし・・・」

和美は不思議なことを言っている。そこへ。

「あ〜、葵ちゃんだ〜」

甲高い声が響く。声の主はすぐわかった。髪は赤茶でロールがかかり、どことなくぼやっとした表情を浮かべている。目元の泣きほくろがチャームだ。彼女は高見沢舞子。かつて美里と同じく東京を護るために戦った仲間である。その隣には同じく仲間の比良坂紗夜もいた。二人とも看護婦の格好をしていた。彼女らが勤める桜ヶ丘中央病院の制服である。

「二人とも!どうしてここに?」

「う〜んと、舞子はね〜、院長先生に言われて、ここの看護学校の講師に来たの〜」

「院長先生は今日は私用で来れないので、私たちが代理できたのですよ」

桜ヶ丘は霊的治療で有名な病院である。かのローマ法王のお墨付きもついているのだ。かつて高見沢は新宿区にある鈴蘭看護学校の出身だが、霊的素質のあるごく一部の生徒は、学校に近い桜ヶ丘へ医療現場見学会に行くことになっている。麻帆良学園は魔法使いが大勢いる学園都市だが、全員魔法の資質があるわけではない。看護学校でも講師をするのは魔法や霊的な素質のある生徒のみを厳選したのだろう。

「講義が終わったから帰ろうかと思ったんだけど〜、途中で葵ちゃんを見つけたから〜、声をかけたの〜。えへ」

高見沢は屈託のない笑みを浮かべた。とても嬉しそうだ。比良坂も釣られて笑う。彼女らもローゼンクロイツ襲撃に待機していたという。戦闘ではなく回復役として。幸い怪我人も少なく大事には至らなかったそうだ。

「実はさっき醍醐さんにも会ったんですよ。なんでも大学部のプロレス同好会に呼ばれたとかで」

「もうすぐくると思うよ〜」

そう話しているうちに醍醐がやってきた。彼は身長が190近くある、それにプロレスで体を鍛えているから筋肉の質が違う。生徒たちはまるで山が歩いてきたのかと思った。鳴滝姉妹は巨人だ、なんだとべたべた醍醐の体に触っている。お山へ登るぞー!と風香が醍醐に登ろうとしたりと、場が盛り上がった。

「ひさしぶりだな、美里」

「・・・醍醐くんも元気そうね」

美里の声に覇気がない。おそらくこの間のローゼンクロイツ襲撃のことだろう。醍醐もかつての仲間が仲間はずれした後ろめたさがあった。

「俺は龍麻が美里を護りたいからと頼まれて来たんだ。まあお前が人に護られる事を嫌っているのは十分承知だ。だが龍麻はお前に危険な目にあわせたくないと思って・・・」

「ううん、いいの。確かに仲間はずれにされたのは悔しいわ。でもみんなが私のために戦ってくれたことが嬉しいの」

高校を卒業して4年。彼女も成長したのだ。醍醐は愚問であったと反省した。ただ緋勇があまりにも敵の動向を的確に把握したのはおかしいなと感じた。だが美里が無事だったのだ。緋勇には彼なりの考えが合ったのだろう。醍醐はそう解釈した。

「おや?君だけ制服が違うね?」

醍醐はさよを見つけてたずねた。どことなく陽炎の如くうっすらに見えるのだ。

「へぇ〜、私以外にもはっきり見える人っているんだね〜」

「そうなんですか、朝倉さん」

2年近く隣の席だったから、相性がいいみたいだよ。とりつかれたというべきかな?」

和美は頬をぽりぽりかきながら、答えた。

「はっきり見える人?どういうことだ?」

醍醐は和美の言っていることがわからなかった。目の前にいる彼女が見えないのはどういうことだ?

「あれ〜、醍醐君この子幽霊さんだよ〜、知らなかったの〜?」

高見沢が答えた。その瞬間醍醐の顔が青くなった。

「どうも・・・、相坂さよです。60年近く幽霊をやってます」

さよはぺこりとお辞儀した。良く見ると彼女の後ろには青白い火の玉が浮かんでいた。だが真昼のファミレスにはまったくミスマッチに見える。

「・・・道理でみんなに無視されていると思ったわ」

美里はすべてのなぞが解けた気がした。彼女は菩薩眼の力を持っており、多少の霊を見ることが出来る。たださよのようなはっきりとした自我を持つ幽霊は初めてであった。和美に言わせれば彼女はドジっ娘で、足がないのに転んだりするのだという。友達募集中だが、人には見えず、写真に写ろうとしても悪霊っぽく写るので、なかなか友達ができなかったというのだ。

うーん。

醍醐が倒れた。眼を丸くして気絶したのだ。プロレス世界ではそれなりの有名人も、幽霊にはまだまだかなわないようであった。集合写真を撮ったが、さよの部分だけ心霊写真になったしまったのを、後日美里が友人の婦警に見せ、大いに驚かせた。

 

その後パーティはお開きとなった。美里も大学へ戻り、いつもどおりの生活に戻った。来年は真神学園、彼女が希望している高校だ。だが彼女は知らなかった。学園に再び人ならざる力を持つものの戦いが始まることに。そして学園にかつて自分を手に入れようとした鬼道衆の家臣の子孫たちが転校してくることを。

だが実際彼女がそれに関わることはないので、関係ないのだが。

 

終わり

 
外伝に続く

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あとがき

やっと完結しました。しかし、最終回にしてはあっさりしすぎな気がします。

どうも私は最終回があんまり盛り上げることができないようです。その7のほうが最終回に相応しい気がしますね。まあ醍醐とさよの絡みは前から書きたいと思ってましたから、実現できてよかったです。

魔人キャラやネギまキャラは一通り出しましたが、最後に婦警だけは文章だけ出しました。

こちらは外伝にでも出すことにします。第一登場が無理やりなキャラもいましたからね。

企画としては犬上小太郎が犬神に喧嘩を売る話か、エヴァ、1997年に麻帆良にやってきたマリアとの対立とかを考えてます。

長い間ありがとうございました。外伝でお会いしましょう。

江保場狂壱