翌朝、僕たち龍虎武神隊はレオナール隊を救出する為に出撃した。ランスロットさんのいった通りトレーニングしたし(もっとやってもよかったけど、ヴァイスや姉さんがね・・・)、これでバッチリだよ!
「では、行って来ます。」 (デニム)
「うむ、頼むぞ。レオナールはわしの腹心じゃ。あれに万が一のことがあれば・・・」 (公爵)
ええっ!?そんな大事な人だったの!?ヤバイよーヤバイよー姉さんどーしよー!
「はッ、必ずお救いします。お任せ下さい公爵様。」 (ヴァイス)
「頼もしい限りじゃ。吉報を待つ。」 (公爵)
ヴァイス・・・やっぱりこんなときは頼りになるなぁ・・・。
【アルモリカ城。一室から、龍虎武神隊の出陣を見守るランスロットとカノープスの姿があった。】
「デニム君、死ぬんじゃないぞ。」
「心配性だな、ランスロット。」
(カノープス、室内へ。一瞥をくれるランスロット)
「心配か・・・ああいう若者を見ると、つい奴のことを思い出すんだ。」
「ヘッ。年寄りみたいなこというなよ、まだ40年も生きてねぇくせに。」
「そういうお前こそ、人生経験の長さに相応しい言動をしてもらいたいものだな。」
「いいじゃねぇか、見た目なんかまだお前等で言えば二十歳そこそこだぜ?気持ちだって若くなるってもんじゃねぇか。」
「・・・それはそうと、どこに行くつもりだ?」
(見ればしっかり武装しているカノープス)
「ん?ああ、ちょっと空の散歩にでも行こうかな、ってよ。久しぶりだからな。」
「散歩にそれだけの装備は必要ないと思うがな。」
(ランスロット、言いつつ口元を緩ませる)
「うっせーなー。いーじゃねーか俺の好きだろうが。」
(カノープス、憮然と言い放ち、かすかに笑む)
「気をつけるんだな。この周囲もまだ完全には公爵の勢力圏には置けていない。特にお前は目立つからな、調子に乗って高度を上げると狙われるぞ。」
「チッ。舎弟の分際でいっちょ前な事を言いやがる。」
「誰がお前の舎弟になったんだ。」
「・・・ま、フラッと行ってくるぜ。低めをな。」
(そのまま室外に飛び出すカノープス。暫くそれを見守ってランスロット)
「フッ・・・どっちが心配性なんだか。」
以上、同じ部屋のテーブルの下から覗き見のウォーレン・ムーンがお届けしました。
結成したばかりだけど、重要な任務を帯びていることで士気は(少なくとも僕は)高かった。配属された兵もトレーニングを通して十分理解しあえたし(みんな結構修羅場をくぐった猛者らしい)、部隊としては文句無いんじゃないかな?
とか感慨にふけっていたら、兵の一人が敵影を見つけたらしい。こんなところで・・・?
「見えるか、デニム。」 (一般兵)
それは僕にも見えた。そして、それがガルガスタン軍だということもわかった。
「だろうな。今ここを通るんならそれしかいないか。」 (ヴァイス)
「連中が前の丘に差し掛かったら、襲撃しよう!」 (デニム)
前の丘はタインマウスの丘というんだけど、連中が中央の窪地に差し掛かる前に僕は飛び出してしまった。もう少し我慢すればよかったんだけど・・・やってしまった以上、このままいくしかない!
「ほう、ウォルスタのブタどもとぶつかるとはな。アルモリカは確かに陥ちたらしいな・・・。」 (魔術師)
(部隊長らしい魔術師がつぶやく)
「詮無き事!かくなる上は連中に、枢機卿へのせめてもの手土産になっていただこう!」 (魔術師)
「オルバだ。魔法を使ってくるぞ、間合いに注意しろ。」 (一般兵)
ガルガスタン軍でもそれなりに名の通った魔術師らしい。僕は知らなかったけど。
「・・・あら?」 (カチュア)
カチュア姉さんが何か見つけたみたいだ。それは僕にも見えた。カノープスさんだ!
「よっ、なんかお前等が気になってな・・・。助太刀するぜデニム!」 (カノープス)
「カノープスさん!」 (デニム)
カノープスさんが加わってくれれば百人力だよ!いや、百人は大袈裟かもしれないけど、十人分くらいは・・・。
「よぉーっし!カチュア達は後ろから援護を頼む、残りは俺達に続け!」 (ヴァイス)
相変わらず血の気が多いなぁ。
僕たちは弓で相手を弱らせて、接近戦で止めを刺していく戦法を取った。中央の窪地を避けて、両サイドから進行させる。片翼はヴァイスが、もう片翼は僕が、カノープスさんは・・・どんどん突っ込んでいくなあ。強いからできる中央突破。結構理想的なのかな?
「何だ、あのホークマンは・・・いや、少し違うな・・・しかし、強い!ええい、厄介な奴め。くらえ、ファイアストーム!」 (オルバ)
(ずごーっ)←カノープスにファイアストーム炸裂
「くっ・・・ちぃぃ、奴の間合いに入ったか・・・。」 (カノープス)
戦場に妙に香ばしい香りが・・・あっ!別に悪気があるわけじゃないよカノープスさん!
「わかったそういうことにしといてやるから」 (カノープス)
(そこに接近戦を挑むガルガスタン兵)
「くたばれぃ焼き鳥の出来損ない!」 (兵)
「や・・・」 (カノープス)
(どぶしゅ)
「ぐはぁっ・・・」 (兵)
(倒れるガルガスタン兵)
「おいこら、ホンットに懲りねぇ奴だな貴様という奴はよ。」 (カノープス)
「誉めるなよ。」 (天)
「くそ、火炎系呪文は必ずそのネタに繋がるんだよな、嫌な敵だ。速攻ぶちしばく!」 (カノープス)
・・・誰と喋ってるんだろうカノープスさん。・・・どこかで見た気もするけど、それよりも・・・
「カノープスさん、前に出過ぎないで!」 (デニム)
「心配するな、後ろはお前等に任せる!俺はオルバを殺る!」 (カノープス)
しかし、本当に機敏な動きだなぁ。おまけに力も体力もある。カノープスさん一人でも勝ったんじゃないかなぁ?
僕たちは周りのガルガスタン兵を倒していった。僕たちの方も多少の被害は出たけど、みんな矢の一本や二本じゃ死なないよ。さすが修羅場をくぐってるだけはあるね。
なんて言っているうちにカノープスさんがオルバに迫っていた。ヴァイスも近くまで来ていたけど、カノープスさんの方がやっぱり早かったみたいだ。
「ぬうう、猪口才な、ファイ・・・」 (オルバ)
(ずばしゅ)
「ばっ・・・馬鹿な・・・このオルバが・・・」 (オルバ)
「お前とは鍛え方が違うんだよ。」 (カノープス)
やった!さっすがカノープスさん!
無傷というわけにはいかなかったので、僕たちはこの場で応急手当を始めた。
「カノープスさん、怪我は・・・。」 (デニム)
「んー?今、お願いしてもらったとこだ。」 (カノープス)
「意外と、無茶な戦い方をするんですね。」 (カチュア)
あんまり戦いが好きじゃない姉さんだけど、ちゃんと協力してくれるんだよな。
「独断専行も実力あってのことだぜ、お嬢さん。」 (カノープス)
「はい、いいですよ。あと、そのだらしないズボンの履き方、なんとかしてください。どうやって腰でちゃんととまってるのか気になって仕方ありません。」 (カチュア)
確かに僕も気にはなってたんだよね・・・カノープスさん達の種族って、ちょっと構造違うのかなあ?
「んー?これでちゃんとなってんだからいーじゃねーか。どこみてんのよ、エッチ♪」 (カノープス)
あ、やな予感・・・
(ばきっ)
「ってー」 (カノープス)
やっぱり・・・あーゆーのはもっと嫌いだからな、姉さん。
「もー全然大丈夫みたいね。他は大丈夫?」 (カチュア)
「うん、みんな幾らか負傷してるけど、大した傷じゃないよ。それに、一日経ったらどんな大ダメージ受けてても全快するんだからね。」 (デニム)
「石一個ぶつけられたら死んじまう様な奴でも平気でフィールドを駆け回ったり剣を振るったり魔法使ったりできるからなぁ。俺達ってホントに人間なのかなぁ。」 (ヴァイス)
「あんた達、それ以上余計なこと言い出したらホントにただじゃおかないからね。」 (カチュア)
わかったから、その背後のオーラと擬音、外してよ姉さん・・・。
こうして僕たちはタインマウスの丘を過ぎた辺りで野営した。明日にはクリザローの町に入る。間に合ってくれればいいんだけど・・・。