アルモリカ城へ戻った僕らを公爵は嬉しそうに迎えてくれた。というより、レオナールさんが無事なのが嬉しかったみたい。
そんな僕達にまた命令が下った。フィダック城へ使者として向かえとのことだけど・・・。
「フィダック城・・・あそこはバクラムの勢力圏・・・あそこへ何故?」 (デニム)
公爵は、バクラムに力を貸している外国勢力・ロスローリアンへの使者として僕達を派遣しようと言うんだ。そんな・・・ロスローリアンは僕達の町を・・・ゴリアテを焼き討ちにした奴等じゃないか!しかも・・・父さんを・・・。
「公爵閣下は、ロスローリアンに屈するつもりなんですか?」 (ヴァイス)
「口が過ぎるぞ。気持ちは同じと言った筈。ガルガスタンを倒すまでだ・・・」 (公爵)
アルモリカを陥としたとはいえ、ウォルスタの戦力はまだガルガスタンと戦うには弱い。そこに第三者であるロスローリアンやバクラムが横槍を入れてこられては困るから、ガルガスタンと戦う間、彼らがウォルスタへ攻め込まないことを宣誓させようというのが公爵の考え。・・・姉さんは特に反発したけど、仕方が無いよね。これが戦争なんだ・・・奇麗事だけじゃできないんだ・・・。
僕達は翌日から早速フィダック城に向かった。とはいえ、その道中は不穏なものだ。ゴルボルザ平原では頭の悪そうなバーサーカーが襲ってきたけど、頭が悪いから突っ込んできたところを袋叩きにしてあげた。
そういえば、なんていう名前だったっけ?
「さあ、別に名乗られたわけでもねぇし、名無しの権兵衛ってことにしとけば?」 (カノープス)
んじゃそうしよう。馬鹿権兵衛、ここに犬死にす、っと・・・。
酷い奴だったな・・・常識論を唱えていた味方の兵士を後ろから切り捨てるなんて・・・死んで当然の奴だよ。
古都ライムでも敵と遭遇したんだけど、これはちょっと様子が違った。
「解放軍の者ではないな・・・。どこの組織だ?」 (レオナール)
「でも、ガルガスタンの連中に追われてますよ。助ける意味はあります!」 (デニム)
「いいだろう。どうせ避けて通るわけには行かない道だ!行くぞ、デニムくん。」 (レオナール)
「はいッ!」 (デニム)
それはそれは酷いものだったよ・・・。いや、彼女がね。彼女ってのは、追われていた戦士だけど、スタンした上にドラゴンブレスで毒に侵され、囲まれてタコ殴り・・・。よく生きてたよなぁ。
「たった一人の女をよってたかってフクロとは、許せん奴等よの。」 (プレザンス)
プレザンスさんがすぐに回復役に回ってくれたからよかったものの・・・
「姉さん!どうして動いてくれなかったんだ!?」 (デニム)
「うるさいわね!私は誰かがダメージ受けるまで動かないのが身上なのよ!」 (カチュア)
ミもフタもないよ姉さん・・・。
戦いは狭い路地でてこずったけど、僕達がガルガスタン人を全滅させて終わった。
「こんなところで・・・せめて・・・彼女に・・・」 (敵リーダー)
妙に自己主張の激しい人だ。この台詞だけで名前が売れるんだから悔い無しだろう。・・・えっと、なんてったっけ?・・・ま、いっか♪
そういえば・・・毒消し、誰も持ってなかったけど、誰が彼女を解毒してあげたんだろう?
その女はシスティーナと名乗り、自分がヴァレリア解放戦線のメンバーだと語った。
「そいつぁまた、厄介な連中と関っちまったなぁ。」 (ヴァイス)
僕達の認識では、ヴァレリア解放戦線は単なる無差別テロ集団に過ぎなかった。ヴァイスが厄介といったのはそういう背景があったからだけど、彼女はそれを否定した。でも結局、彼女はこの場を去っていった。正確には行かざるを得なかったんだけど。
去り際に振り向いた彼女の視線が、僕に注がれていた気がした。何か、言いたいことがまだあったのかな・・・?
とうとう、やってきてしまった・・・。朝から姉さんご機嫌斜め全開(?)だけど、大丈夫かなぁ・・・。大丈夫じゃないと思うけどなぁ・・・。
レオナールさんがダリひげのおっさんに書簡を渡した後、僕達は接見の間に通された。
「こら小姓、今、何を考えた?」 (ダリひげのおっさん)
目が笑ってないよこのおっさん・・・そんなにダリ言われるのが嫌ならやめりゃいいのにブツブツ・・・。・・・小姓!?このおっさん、僕がレオナールさんの太刀持ちとでも思ったのか!?そっちの方が失礼じゃないか!
っと、レオナールさんが緊張してる。どうしたんだろうと思ってたら、部屋に誰かが入ってきた。長い黒髪・・・ちょっと紫が入ってるけど、染めてるのかなぁ?あと・・・右目に・・・あれ、なんて言うんだっけ・・・。
「野球軍だな。」 (謎の騎士)
「裸がユニフォームじゃなかったのか?」 (謎の侍)
「あれ、いつまで主力ヘリなんだろうな。」 (天)
「違う違う、主力ヘリにアパッチって名前つけるんだ。」 (謎の戦士)
誰だあんた達は。全く、人の頭の中でわけのわからないこと口走らないでよ。
えーっと、もとい、眼帯・・・
「アイパー、アパカーッ!」 (謎のムエタイ戦士)
「レェディ〜、ゴォーッ!」 (謎のレフェリー)
「立てぇ、立つんだジョオ〜ッ!」 (謎のセコンド)
もういいですわかったから先に行かせて下さい。
間違いない、こいつがランスロット・タルタロス!僕はこの人から目を離すことができなくなってしまった。
・・・眼帯してるということは、目が悪いってことだよな。一体何をやって悪くしたんだろう?生まれつきかな?ありきたりなのは戦闘中に切られたとかだけど、それはつまんないよね。
うーん、実はアレルギーで目を掻きすぎて・・・いやいや、階上から誰かが落としたゴミが偶然上を向いた時に目に入って悪化したとか・・・イマイチだなぁ・・・。
そういえば、眼帯してるからいろんな呼び方があるんだろうなぁ。段平なんてオーソドックスかな?後は・・・まぁとにかくたくさんありそうだ。そう考えると楽しくて仕方が無い。
なんて考えてたら僕達の方を見てきたぞ。何だろう?
「ゴリアテの英雄とは、貴君のことであったか。」 (タルタロス)
あっ、僕のことだ。って、なんでそんな呼ばれ方してるんだ僕??
「・・・どこかで遭ったかな?」 (タルタロス)
「い、いえ・・・」 (デニム)
ふう、凄いプレッシャーだなぁ。さすがだ。
「直接の面識はありませんが、二年前、あの日あなたは・・・」 (カチュア)
ねっ、姉さんそのことに触れるのはヤバイよ!ああもう、どっ、どうしよう!?
「よさないか、カチュア。私怨は捨てろ!」 (レオナール)
「でも!こいつらはゴリアテを・・・父さんを・・・!」 (カチュア)
「よそう、姉さん。これはもう、僕達だけの問題じゃ無くなったんだ・・・。」 (デニム)
「デニム・・・。」 (カチュア)
お・・・おとなしくなってくれた。
この後、ランスロットは意外な行動に出た。ゴリアテの焼き討ちの非を詫びた上、僕達に頭を下げたんだ!でも・・・姉さんは相変わらず睨み付けたままだ。『そんな三文芝居でごまかされないわよ』とあからさまに言ってる目だ・・・。
「お、おやめ下さいランスロット卿。・・・で、では我等はこれで失礼します。」 (レオナール)
レオナールさんも大変だ。中間管理職っていうのは胃に穴がたくさん開いていそうで不健康だよなぁ。
「デニムくん、余計なことを考えてないでさっさと来るんだ!」 (レオナール)
・・・レオナールさんも僕の考えてることがわかるの!?
【レオナール達の去った室内】
(バールゼフォン、外に目をやりつつ)
「何も、あそこまでしなくてもよいではありませんか。」 (バールゼフォン)
(暫くの間)
「ふふ・・・いやなに、あの二人を見ていたらな・・・」 (タルタロス)
「は?」 (バールゼフォン)
「・・・デニム・パウエル、と言ったな。あの神父の子がゴリアテの英雄とは。」 (タルタロス)
「確かに、出来すぎた話のように思えますが・・・」 (バールゼフォン)
「獲物を狙う鷹の様な目だった。親の仇を前にしていながら、なかなかの男だ。」 (タルタロス)
「・・・。」 (バールゼフォン)
「ハボリムを覚えているか?」 (タルタロス)
「は?はい。聞き分けの無い愚かな弟でしたが、頼りにはなる弟でした。・・・今ごろなにをしておるやら。」 (バールゼフォン)
「ふふ・・・仲の良い兄弟であったな。丁度、あの姉弟の様に・・・。」 (タルタロス)
「・・・。」 (バールゼフォン)
「ところで、いつまでそこに隠れておるおつもりかな、翁。」 (タルタロス)
お、バレてしまいましたか。
(どろんっ)←煙と共に室内に姿をあらわすウォーレン
「お・・・おのれ面妖な・・・何奴!」 (バールゼフォン)
(びゅんっ)
おっと
(ふわり)←鋭い槍の突きを難なく交わすウォーレン
「フハハハハ!バールゼフォンの槍をかわすとは大した翁だ。」 (タルタロス)
「お褒めいただき恐悦至極。されどここはこれまで。またお会いいたしましょう。星の定めに身を任せ〜♪」 (ウォーレン)
(どろん)←二度姿を消すウォーレン
「ええい、わけのわからんジジイめッ!」 (バールゼフォン)
「フフフ・・・楽しくなりそうだなバールゼフォン。」 (タルタロス)
「団長!」 (バールゼフォン)
「フハハハハ!冗談だ。」 (タルタロス)
ふむ、ランスロット・タルタロスは魅惑の奨ヴォイスで奥様方腰砕け、と(めもめも)。
以上、天井からぬらりひょん、ウォーレン・ムーンがお送りいたしました。
「あれ、ウォーレンさん・・・?」 (デニム)
「はぁ?爺さんがここにいるわけねーだろーがデニム。大丈夫かお前。」 (ヴァイス)
(どぼす)←ヴァイスの鳩尾深くに拳を埋めるカチュア
「デニムのことより、自分の身の心配をすべきじゃない?ヴァイス。」 (カチュア)
(くずおれるヴァイス)
姉さん・・・暫く近づかないでおこう・・・怖い・・・。