戦う理由


●蜂起促進●

フィダック城から帰還した僕達は、休む間も無く次の任務を与えられた。思うんだけど、なんでこんな生活してるんだろう僕達。

「フヌケたかデニム!俺達はウォルスタの為に戦ってんだろうが!」 (ヴァイス) 

確かにそうだけど・・・ウォルスタに兵無し、ってバルバトスが言ってるらしいけど、あたってるのかもなあって。

「てめぇ・・・ガルガスタンの連中が言うことに惑わされてんのか?!しっかりしろよ、おめーは隊長だろうが!そんなこっちゃ駄目じゃねぇかよ!ったく・・・」 (ヴァイス) 

あ・・・言うだけ言ってどこにいくんだよヴァイス・・・。なんだよまったく。

そして次の僕達の任務は、バルマムッサにいるウォルスタ人に蜂起を促すことだった。バルマムッサはガルガスタンが用意した、ウォルスタ人の自治区。けど、実際にはそこはガルガスタンの強制収容所、ウォルスタ人はそこで奴隷同然の扱いを受けているんだ。
収容されている五千人近いウォルスタ人を助け出すのは無理だ。彼らに、武装蜂起を促せばガルガスタンとの戦いが俄然有利に進む筈だ。・・・と公爵はおっしゃっていた。

「デニム・・・誰も戦いたいなんて思っていないのよ。どうやってあの人達を説得するつもりなの?」 (カチュア) 

姉さんはすっかり厭戦気味だ。元々、戦争否定の立場にいたから仕方が無いけど、どんどん酷くなっていく気がする。
でも、姉さんの言う通り、本当は戦争なんかしない方がいいに決まっているんだ。それを押し付けることが、僕に出来るのだろうか・・・。
そうだ、ランスロットさんなら何か教えてくれるかもしれない。僕の取るべき道も・・・。

●白騎士●

「おお、デニムじゃないか。久しぶりだな、元気だったか!」 (ギルダス) 

(ばしっ、ばしっ)←デニムの背を激しく叩くギルダス

ぎ、ギルダスさん・・・そんなに叩いたら元気な人でも壊れちゃいますよ。

「んー?なんだ弱いなぁ。身体鍛えてねーからだぞ、そんなの。」 (ギルダス) 

「はっはっは。あなたの次元で鍛え方を語られてはデニムくんが可愛そうですよ。」 (ミルディン) 

「そうかぁ?うーん・・・。」 (ギルダス) 

「ところで、どうしたんですかデニムくん。何かあったんですか?」 (ミルディン) 

ミルディンさん・・・無口だって聞いてたけどなぁ・・・。ま、いっか。
僕はミルディンさんやギルダスさんに、戦う理由を聞いてみた。

「おー?そうだなぁ、俺は戦うことでしか人の役には立てない人種だからさ。」 (ギルダス) 

「物騒な人種ですね。」 (ミルディン) 

「うるせーなー、お前は何だよそれじゃあよ。」 (ギルダス) 

「私は・・・私もさほど違いませんね。」 (ミルディン) 

「それみろ。」 (ギルダス) 

「誰かを守りたい、救いたい、そう思った時、私は剣を振るっていたんですよ。今は・・・大切な仲間の為、ですかね。」 (ミルディン) 

「かっこつけやがって・・・その仲間には、俺も入っているのか?」 (ギルダス) 

(ミルディン、にこやかに杯を傾ける)

「ちっ、とぼけやがって。ま、そういう話だったら、ウチの団長に聞くのが一番良いだろうな。今時分なら西門の方にいると思うから探してみな。」 (ギルダス) 

あ、はい。ありがとうございますギルダスさん、ミルディンさん。
・・・?ウォーレンさんはどこにいってるんだろう?

●オルゴール●

西門に出てみると、たたずんでいるランスロットさんがすぐ見つけられた。僕は近くに寄って声をかけた。

「デニムくんか。どうしたね?」 (ランスロット) 

ギルダスさんがここだろう、って・・・。
・・・・・・。ランスロットさん?戦いってどういう感じですか?

「・・・戦うのが嫌になったかね?」 (ランスロット) 

そうかもしれない。ガルガスタン人とはいえ、僕は沢山の人を傷付けてきた。トドメは刺してないけど・・・。

「戦うのは、怖くないですか?ランスロットさんくらいになると、死の恐怖を感じたりしないんですか?」 (デニム) 

「・・・そんなことはないさ。いつだって戦う時は怖いものだ。」 (ランスロット) 

「僕はこの前まで、ウォルスタの為なら・・・って思っていました。けど・・・」 (デニム) 

「早送り」 (天) 

(ピッ)

わあっ!?なんだなんだ!?あっ、あんた!あんた一体誰なんだ!?

「通りすがりの不老林アクティブ。薬局薬店でお求め下さい。ピンポン♪」 (天) 

「ええい、懲りぬ奴めッ!」 (ランスロット) 

(ずぶしゃ)

ぬを〜ッ」 (天) 

(消える謎の男)

「・・・チッ、逃したか。」 (ランスロット) 

ら、ランスロットさんもご存知なんですね。あの人のこと。

腐れ縁というのは断ち切れぬものだ・・・。どこまで行ったかな・・・おお、そうだ。」 (ランスロット) 

(懐からオルゴールを取り出し、鳴らしはじめる)

・・・それは?

「妻の形見なんだ。これを聴く度に思い知らされる。死ぬわけにはいかない、生きなければならない。命という名の責任を、剣とともに手にしていることを。」 (ランスロット) 

「命という名の・・・責任・・・?」 (デニム) 

「死ぬことはた易い。しかし、誰かの為に、生きなければならない。そう思えば、死ねはしないさ。」 (ランスロット) 

誰かの為に・・・。

「・・・。君の様な若者が、戦わなくても良い世界にしたいものだ。」 (ランスロット) 

そういってランスロットさんは暮れゆく夕日を見つめた。優しくて、本当に強い心を持った人の横顔だった。
僕も、ランスロットさんみたいな人になれるんだろうか?

翌朝、僕達はバルマムッサに向けて出発した。
・・・そういえば、レオナールさんは後続部隊でくるのに、ヴォルテールさんもサラさんも僕の部隊にいてくれてるけど、いいのかな?

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