ボード砦の女戦士


●寄港地・ゴリアテ●

ライムへの航路は、ダムザ砦を発って、クァドリガ砦港町ゴリアテボード砦を経由するルートを取られた。十分な食料とかを積み込めないので、補給の意味も兼ねているんだろう。
ボード砦は違うけど・・・。

久々にゴリアテに戻って来た僕達だったけど、表だって行動できない。僕は、まだバルマムッサの虐殺の首謀者と思われているんだ・・・。
とかいってたらやっぱりだよ。

「お、お前はデニムッ!どこから湧き出したんだ!?・・・だがまあいい。これで3万ゴートは我が物となる。行くぞ、人殺し!」 (ダゴン) 

人殺し・・・好きな事を言ってくれる!

・・・

戦闘は、どうしても狭い路地を通る為、敵のペースで始まった。そして、前衛を固めるドラゴンが進軍を遅らせる。カノープスさんが遊撃に出てくれたのと、システィーナ達の活躍で僕達は敵・ダゴンを倒した。

「ぐふッ・・・さ、3万ゴートさえあれば・・・娘を救えるものを・・・。」 (ダゴン) 

・・・
目の前が眩んだ気がした。
虐殺なんて絶対に許せないと思っていたけど、僕のやっていることは、規模くらいしか違わないんじゃないか?
結局、僕は・・・自分の手が汚れてしまうのが嫌だっただけなんじゃないか・・・?

「はーい、そろそろ次に進めるから、真面目くさった話はその辺でやめれ。」 (天) 

やめれ、って・・・あんた一体何なんですか。

●炎の女戦士●

かと思ったら返答もせずに改題されちゃった。
ゴリアテを出発した僕達はボード砦に向かった。

ゲリラの巣窟はいつでもそうだけど、朽ち果てたってイメージが強いよなぁ。このボード砦もいい加減古そうだけど・・・。高低差が激しくて、攻めるのは難しいな。周囲を海に囲まれている孤島、ってのも強みか。やれやれだなぁ。
一応、僕達の側からは僕と姉さんが行くことにした。・・・なんで姉さんなんだろう?

砦の中に入ると、システィーナは真っ直ぐ僕等を導いていった。
すると、開けた場所に(といっても、砦の中だからたかが知れてるけど)出た。赤いいでたちの女戦士・・・この人がセリエさんだろう。

「どういうつもりだ、賞金首などをアジトに連れ込んで。」 (姉様) 

「彼らは、海賊に捕まってた私を助けてくれたの。」 (システィーナ) 

「海賊に?妙なこと、されなかったか?まだ大丈夫か?」 (姉様) 

「微妙な表現はやめてよ・・・。」 (システィーナ) 

「なんのことだ?それより、戻って来たということは、考え直したのか?」 (姉様) 

「・・・私の考えは変わらない。姉さんを止める為に、私は帰ってきた!」 (システィーナ) 

「・・・ちょっと待ってねシスティーナ。」 (姉様) 

(槍を手に気配を探るセリエ)

「そこかッ!」 (セリエ) 

(ぶすっ)

ギャース!」 (天) 

「・・・お前、今、何かビデオで鑑賞してただろ。正直に言え!」 (セリエ) 

「それを見抜く姉様こそ・・・フォッフォッフォ」 (天) 

誰のせいだと思っとるかッ!」 (セリエ) 

(べしべしべし)←槍の柄でしこたま殴る音

「ぶはーっ!ここはこれまで、即退散!」 (天) 

(消える男)

「・・・チッ、懲りぬ奴め。」 (セリエ) 

「姉さん・・・話、進めていい?」 (システィーナ) 

「駄目だ。このまま進めると会話部分が冗長になるから改題させよう。」 (セリエ) 

はっ・・・。
僕は、いたのか?

「デニム、お茶のおかわり、いる?」 (カチュア) 

あ、うん。

「・・・まあ、よいわ。」 (セリエ) 

●解放戦線の計画●

移動中にも何度か聞いた「計画」なんだけど・・・話が進まないから全然解らない。
システィーナ、頼むよ。

「わかってるわ・・・。姉さん、お願い、考え直して。」 (システィーナ) 

「・・・ここでは姉さんと呼ぶんじゃない。」 (セリエ) 

姉様と呼ぶんですね」 (天) 

「今更、私に考えを変えさせることが出来ると思っているのか?」 (セリエ) 

(うわ、無視・・・)」 (天) 

邪魔になるから、どっかいっててよ。

「うん、そーする♪」 (天) 

・・・よくわからないけど、邪魔な人だなぁ。

「あんな計画、うまくいく筈が無いわ。姉さんの考え方は間違ってる!」 (システィーナ) 

「姉さんと呼ぶんじゃないシスティーナ!・・・だから、強制はしなかった。この計画に賛同できない者はここを去った。そうではなかったのか?」 (セリエ) 

「それはそうだけど・・・。」 (システィーナ) 

・・・一体何を計画しているんだ?

「お前達の知ったことではない。」 (セリエ) 

ロンウェー公爵の暗殺よ。」 (システィーナ) 

システィーナッ!」 (セリエ) 

「・・・公爵を殺したくらいで、戦争は終わらないんじゃない?」 (カチュア) 

「・・・まあいい。いずれこのままではガルガスタンはウォルスタに吸収されるだろう。そうなればバクラムとほぼ五分の戦力だ。そうなったら、権力者は戦争による疲弊を懸念し、お互いに保身に走る。」 (セリエ) 

「手を結ぶ、とでも・・・?」 (デニム) 

「そうだ。だが、それでは何も変わらん。公爵を暗殺すれば、戦力バランスは一気にバクラムに傾く。ヴァレリアを支配するほどにな。そうなれば、今度はブランタだ・・・。」 (セリエ) 

「そ、そんな無茶な・・・そんな計画がうまくいくわけが・・・。」 (カチュア) 

いくとも!その算段があればこそ計画を実行に移すのだ。」 (セリエ) 

・・・確かに、それが可能ならいい計画だけど・・・どう考えればそんな無茶な算段ができるんだろう・・・。ん?

●急転直下●

なんか、騒がしくなってきたな・・・?

(ばたんっ)

「たったいま、早馬が到着しました!・・・はぁ、はぁ。」 (兵士) 

「何故お前が息を切らせるのだ・・・。通せ。」 (セリエ) 

「はッ!」 (兵士) 

(兵士、手招き。馬登場。)

ひひーん」 (馬) 

・・・何故、使者ではなく馬が?

「ご苦労、ゆっくり休め。」 (セリエ) 

「ひんひん」 (馬) 

(ぽっくりぽっくり)

なんですと!?

バルバトス枢機卿が処刑されたそうだ。お前達の相手をしている暇がなくなったな・・・。」 (セリエ) 

すっ、すいませんセリエさんッ!今の、どーしても納得いきませんッ!

「納得いかなくても、いずれ慣れる。」 (セリエ) 

は・・・はい?

「それはともかくとして・・・どうだ?お前達も参加せぬか?このままではお前達はいつまでたっても賞金首だ。それでお前の理想が叶うのか?」 (セリエ) 

「でも、公爵やブランタを殺したって、思い通りに行く筈ないわ。結局民衆を犠牲にするだけよッ!」 (システィーナ) 

「違う。こうしなければ、関係のない民衆の血がより多く流されるのだ。理想を追うものは、得てしてそれが余計に民衆の血を流すということが見えなくなる。それがお前だ、システィーナ!」 (セリエ) 

「・・・姉さんは間違ってるわッ!」 (システィーナ) 

(システィーナ、外へ)

あっ、システィーナ!せ、セリエさん・・・

「あれは、理想を追い求めるあまり、現実を見失ってしまっている。・・・今のお前に似ている。」 (セリエ) 

僕に・・・?

「お前は理想の為に、その手を汚せなかったのだろう?だが、お前の理想がどうであれ、戦えば誰かの血が流れるのだ。お互い、悩むもの同士・・・システィーナの助けになってくれ。我々が行きつく先は、必ず一つになる筈だ。・・・それまで、妹を頼む。」

セリエさん・・・。

●砦の上●

僕は、システィーナを追っていった。しかし・・・ボード砦って、結構高低差があって怖いよね・・・。よくあんなところに立っていられるなぁシスティーナ・・・。

「姉さんは、理想を捨ててしまったんだろうか・・・。目的の為に手段を選ばないなんて、奴等と同じじゃない、姉さん・・・。」 (システィーナ) 

「システィーナ・・・。僕と一緒に行こう。」 (デニム) 

ちょーっと待ったーッ!」 (フォルカス) 

わーっ!?

「一緒に行こうとはどういうつもりだ!さては貴様、最初から彼女が目当てか!」 (フォルカス) 

「湧いてるんですか、脳が!」 (デニム) 

「確かに君には世話になったが、これは私のものだ!誰にもやらん!」 (フォルカス) 

(システィーナを抱き寄せるフォルカス)

「・・・誰があんたのものよッ!」 (システィーナ) 

(ばくっ)←裏拳がフォルカスに炸裂

「ごふっ!」 (フォルカス) 

「でりゃあーッ!」 (システィーナ) 

(一本背負い・場外)

「ぬ・・・ぬわーッ!!だがしかし、見事な技だ!さすがは私の・・・」 (フォルカス) 

(べしゃ)

ふぉ、フォルカスさんッ!?・・・し、死んだ、かな・・・こりゃ。

「このくらいで死ぬなら苦労はしないわ。」

そ、そーなの?

「・・・初めて会った時から、あなたには近いものを感じていたわ。」

(システィーナ、デニムの手をぎゅっと握る)

おおっ、こ、この展開は・・・

危ない、デニムッ!

・・・は?
(鈍い音。暗転)

【デニム昏倒後】

「だから危ないっていったのに。」 (カチュア) 

「でっ、デニム!?こんな巨大な岩、どこから・・・」 (システィーナ) 

「・・・あなた、ウチの弟に何するつもり?あなたにはフォルカスという立派な恋人が居るじゃないの。」 (カチュア) 

「ど、どうって・・・私は別に・・・あなたこそ何か勘違いを・・・」 (システィーナ) 

「誤魔化しても無駄よ。さっきの瞳の輝き、私が見逃すと思って?」 (カチュア) 

「ちょ、ちょっと待ってよ。人の話を・・・」 (システィーナ) 

「いいこと?あなたみたいなアバズレ女、デニムには指一本たりと触れさせないわ!」 (カチュア) 

「あば・・・ちょっ・・・」 (システィーナ) 

(カチュア、高笑いしつつ立ち去る)

「な、なんなのよ一体・・・(はっ)デニム!?デニムッ!!」 (システィーナ) 

以上、パラシュート降下中にウォーレンムーンがお贈りしました。

う・・・ウォーレンさんの声が・・・するようなしないような・・・。
で、僕は一体どうなったんだろう・・・???

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