【また廃屋】
公爵とレオナールは、デニム達龍虎武神隊からの連絡を待っていた。
(ばたんっ)
「報告します!龍虎武神隊はライム駐留軍を撃破、ライム奪還に成功しました!」 (兵士)
「うむ、さすがゴリアテの英雄だ。引き続き残敵掃討に移っておるな?」 (公爵)
「ハッ。目下、レオナール様の別働隊と連携し、敵哨戒部隊と交戦中ですが、殲滅は時間の問題です。」 (兵士)
「ご苦労。・・・後は暗黒騎士団とのかけひきとなりますな。」 (レオナール)
「うむ。ランスロットでないのが残念だが、あの男でも十分だろう。」 (公爵)
(キンッ、ガキンッ、ざくっ)←奥から剣戟の音
「しまった!迂闊!」 (レオナール)
(レオナール、騎士を連れて奥の部屋へ)
(ばたんっ)
「クッ・・・逃げられたか。なんということだ・・・。」 (レオナール)
(ばたんっ、どんっ、ガキッ、ズドッ、バシュッ)←またも剣戟の音
「何だと!?まさかッ!」 (レオナール)
(駆け戻るレオナール)
(ばたんっ)
「・・・お前は!」 (レオナール)
「ヘッ、ざまぁねえな公爵さんよォ・・・」 (ヴァイス)
(公爵を捕らえ、喉元に刃を当てているヴァイス)
「よ、よさんかヴァイスッ!剣を向ける相手が違おうがッ!」 (公爵)
「ヴァイスよせッ!なにをしているのか判っているのか!」 (レオナール)
「うるせぇッ!人を道具の様に使っておいて、貴様らに何を言う権利があるんだッ!」 (ヴァイス)
「落ち着けヴァイス!そうだ、お前にかかっていた懸賞金を取り下げよう!再び騎士として遇してやる!だから剣を収めろ!」 (公爵)
「ケッ!それでお前を許すとでも思うのかよッ!」 (ヴァイス)
ヴァイスッ!
「・・・よぉ、英雄様のお出ましか。ったくテメーはどこまでいっても俺の邪魔をしやがるんだな。」 (ヴァイス)
「馬鹿な真似はよせ、ヴァイスッ!こんなことをしてもなんにならないぞ!」 (デニム)
「それ以上近づくんじゃねぇッ!公爵の命が惜しいならな・・・。」 (ヴァイス)
(ヴァイス、公爵を捕らえたままじりじりと外へと向かう)
「よ、よさんかヴァイスッ!そうだ、戦争が終わったら郡主にしてやるッ!だから馬鹿な真似はよせッ!」 (公爵)
「・・・うるせぇんだよこのジジイがッ!」 (ヴァイス)
(どすっ)←公爵の心臓に剣を埋めるヴァイス
「ぐっ・・・」 (公爵)
(どさっ)←倒れる公爵
「公爵!」 (レオナール)
「ヴァイスッ!お前ッ!」 (デニム)
「ハーッハハハハ!俺を馬鹿にした奴はこーやって死んでいくのさ!レオナール、デニムッ!てめぇらもその内殺してやるからな!うわーっははは!」 (ヴァイス)
(逃走するヴァイス)
「追えッ!生かして帰すなッ!殺せッ!」 (レオナール)
・・・くッ!
「はぁ・・・はぁ・・・ヘッ、ざまぁ見ろってんだ。・・・ん?」 (ヴァイス)
(進行方向に一人の女)
「お前・・・・・・。」 (ヴァイス)
「心配するな、デニム達とは関係ない。」 (女)
「ほう、そうかい。」 (ヴァイス)
(ヴァイス、気にせず先を急ぐ)
「バルマムッサで、お前に戦いを挑んできた騎士がいたそうだな。」 (女)
(ヴァイス、止まる)
「・・・ああ、いたさ。」 (ヴァイス)
「ろくに歩けない様な奴がいたろう?」 (女)
「よく知ってるな。ま、あれじゃどの道死んでたさ。」 (ヴァイス)
「お前が、殺したのか?」 (女)
「・・・・・・ああ、殺したとも。」 (ヴァイス)
(振り向くヴァイス。女、弓をヴァイスに向けている)
「お前の兄貴だったんだな。だがな、連中の死は、ちゃんとウォルスタの為になったんだ。無駄死にじゃねぇ。俺のやったことは正しかった。そうだろ?」 (ヴァイス)
(間)
「確かにそうかもね。」 (女)
(弓をおろす女)
「物分かりが良いじゃないか。もう少し早けりゃ、いい仲間になったかもな。」 (ヴァイス)
(ヴァイス、背を向けて去る)
(ひゅっ、どっ)←矢がヴァイスの脳天を貫く
「・・・!」 (ヴァイス)
(どさっ)←ヴァイス、倒れる
「・・・・・・。」 (女)
以上、あんまりあちこち場面展開して欲しくない年寄りがお贈りしました。
「ならすんなや。」 (天)
「あなたにいわれたくはありませんよ。」 (年寄り)
(間)
「ふぉーっふぉっふぉっふぉ!」 (天・年寄り)
僕はその場に居合わせた誰よりも早くヴァイスの追跡に移った。ニンジャっていいよなぁ。AGiはカードとかじゃ増やせないもんなぁ。
ヴァイスが先行している分、見失ってもたついたけど、長年の付き合いだからヴァイスの行きそうなルートを大体見当つけて追っていったんだけど・・・。
ヴァイスッ・・・!あそこに倒れているのはヴァイスだ!しまった、誰かに先を越されたのか!?
「・・・久しぶりね、デニム。元気そうじゃない。」 (アロセール)
僕は、目の前のアーチャーが一瞬誰だか分からなかった。
どうして君が・・・?何故ヴァイスを・・・。
「どうしてって・・・ヴァイスが兄を殺したってだけじゃ駄目?」 (アロセール)
ヴァイスが・・・。そうか、自業自得とはこのことか。
「ちったぁフォローしろや!」 (ヴァイス)
「おとなしく死んでなさいっての!」 (アロセール)
(どかっ)←ヴァイスを蹴るアロセール
「ごぶっ!」 (ヴァイス)
(どてっ)←再び死体に戻るヴァイス
ヴァイス・・・?
・・・
返事が無い、ただの屍の様だ。
(起き上がるヴァイス)
「ムクロだ。」 (ヴァイス)
(ばたっ)←また死体に戻る
どう違うんだ。
「・・・さて、と。用も済んだし、引き上げるか。」 (アロセール)
ま、待ってアロセール!
「何よ。私に何か用事でもあるの?私にはないけど・・・。」 (アロセール)
「また、一緒に戦ってはくれないか?」 (デニム)
「・・・それはちょっとどうかしらね?少なくとも、レオナールと一緒に戦うってのは多分できないわね。」 (アロセール)
そう・・・。君がいれば何かと心強いんだけど・・・。
「・・・できれば、人殺しはこれを最後にしたいわ。」 (アロセール)
人殺し・・・それじゃ仕方が無いね。
「・・・・・・。ま、せいぜい頑張るのね。もう私には関係の無い話だわ。」 (アロセール)
関係ない、って・・・。
「じゃあね、デニム。」 (アロセール)
(アロセール、いずことも無く駆け去る)
アロセール・・・。
僕は、アロセールを追わず、ヴァイスの死体と対面した。
さっきまでちょくちょく動いてた筈だけど、やっぱり死んでいる。
不思議と、悲しいという感覚が襲ってこなかった。ただ、呆然とするだけだった。涙も流れない。
もう、ヴァイスが何をどう思っていたのかは、知ることができない。
気が付いたら、僕はヴァイスを抱えてレオナールさん達の元へ戻っていた。
その時、僕は涙を流していたそうだけど、僕は泣いた記憶が無い。
公爵を失った解放軍は、このままフィダック城へ攻め入るどころではなくなってしまった。意見が完全に分かれてしまったからだ。
レオナールさんは、ライムに守備隊を残して、一旦アルモリカ城へ戻ろうと提案。反対意見もあったけど、今の状態ではそれしか方法が無いのは明白だった。