公爵を失ったことで、解放軍はそれ以上の侵攻に大きな支障をきたした。リーダー不在の軍の脆さは、万国共通のものだ。
僕達は、少なくとも目的意識の統一をしなければならなかった。
軍議は慎重派と強行派に分かれた。というか、軍議で意見が割れるとすれば大概そうなるという定番の様な気もする。
それで、事態が深刻であればあるほど、平行線を辿って決着が付かなくなるんだよね・・・。
それをまとめるのがリーダー、ロンウェー公爵だったんだけど・・・。
そこでレオナールさんが立ち上がった。
「もういい。これ以上はどこまでいっても平行線を辿るだけだ。それに、内輪でもめている場合でもない筈だ。」 (レオナール)
「しかし・・・それではどうすれば・・・?」 (兵士)
「・・・公爵の志は何であったか?我々の追い求めるものは何か?思い出してみよ。
我々の倒してきた敵は誰だ?
そう、彼らは民を虐げ、民を苦しめた者どもだ!
我等は民衆の為に戦うのだ!
正義は我々にある。故に我々は進まなければならないのだ。」 (レオナール)
レオナールさん・・・いつになく語るなぁ。
でも、その場では僕もその勢いに流されていた。
「確かに、ここで手をこまねいていても始まらないな。」 (兵士)
「レオナール様、我等にご命令を!」 (兵士)
(中央の椅子に再び腰を下ろすレオナール)
「我々はフィダック城攻略に向かう!敵はバクラム兵だ。恐れることはない。
問題は暗黒騎士団だが、フィダック城を二手に分かれて同時に攻略を開始すれば奴等とて簡単には手を出せまい。
デニム、君の龍虎武神隊にはこの一方を担ってもらう。攻略ルートは南と西があるが、どちらを選んでもらってもいい。」 (レオナール)
了解しました。
レオナールさんがリーダーに収まったところで、解放軍の士気は再び盛り上がった。この士気というのは不思議なもので、下がっていたものが盛り上がるとやけに必要以上の力が出ることが多い。
でも、今回はリーダーになったのがレオナールさんだから余計に士気が上がるんじゃないかな。
僕達は西から攻めることにした。フィダック城で考えれば、西口は真正面に当たる。自慢じゃないけど、僕達の龍虎武神隊は解放軍の中でもきっぱりトップに位置する軍備を整えていると思う。
でも、だから余計に辛い戦場を選ばざるを得なくなるんだけどね・・・。
「ちょっとくらい負けてランク落としてみるか?」 (カノープス)
「あまり気の効いた冗談ではありませんね。」 (ミルディン)
ははは・・・実績があるから簡単じゃないですよ、カノープスさん。
「なんにせよ、暗黒騎士団とはきっぱり対立関係になっちゃったんだから、心していかないとね。」 (システィーナ)
「嫌な響きだな・・・。僕はいつも君と一緒だよ、システィーナ。」 (フォルカス)
「だから風呂も覗くと、こうおっしゃるわけ?ふーん。」 (システィーナ)
「心外だな。僕が風呂場の前で立っていたら、君達が勝手に風呂に入ってくるんじゃないか。」 (フォルカス)
「計画的犯行なだけじゃないの。」 (オリアス)
「問題のある男だなこいつは。」 (ヴォルテール)
フォルカスの痴漢行為についてはそっちで解決してくれよ、システィーナ。
さて・・・。
フィダック城の西には案の定バクラム兵が布陣している。というか、自分の領内だから当たり前なんだけどね。
でも、真正面だけあって、まともに攻めるのは難しい。
「デニム君、守備隊のボスはあの剣士のようだ。奴は私に任せてもらおう。」 (ハボリム)
え?ああ、ソードマスターですね。でも、この場は急いでリーダーを倒さないでおきたいんです。奴は牽制する程度に留めておいて下さい。
「ふむ?いいだろう、君の意見に従う。」 (ハボリム)
いきなり倒されても困るからね・・・。
「フン、真正面から攻めてくるとはな。その度胸だけは誉めてやる。」 (マーキュリー)
「・・・・・・。亜美ちゃん?」 (天)
「何です、それ。」 (デニム)
「いや、はっはっは。」 (天)
(立ち去る天)
「スッケベジジイ・・・。」 (オリアス)
「男は所詮バカなのだ。」 (デボルド)
なんなんだ全く・・・。
「そろそろ良いかな?では、適当に皆殺しにさせて頂こうか。」 (マーキュリー)
「それはこっちの台詞だ髭ジジイ。」 (カノープス)
「呼びましたかな?」 (ウォーレン)
「わしもか。」 (バイアン)
「・・・なんか、髭伸ばしてる奴大概ジジイだな。」 (カノープス)
「俺は別にそいつらみたいな枯すすきじゃねぇ!ソードマスターは髭が命なんだから仕方がねぇだろうが!」 (マーキュリー)
「いつからそうなったんだ・・・。」 (ハボリム)
押し問答してないでさっさと動いてよ・・・。ホントに緊張感が無いなぁ。
城壁の上とか、基本的に高台にいるのにバクラム軍は意外と脆い。
それというのも、僕達はウィングリングなどで高さをものともしない用兵ができる。高低差で圧倒的に不利な立場にいても、すぐに対等以上に持ち込める。まして、必要以上に整地された城門前の地形なんかで後れを取ることはない。
「貴様の剣は泣いている。そういうことだ。」 (ハボリム)
「な・・・何を知った風な口を・・・。」 (マーキュリー)
あーあ、ハボリムさんってば、結構気が短いのねー。他を倒しきるまで、生きてるかなあいつ。
「デニムッ!後ろだ!」 (カノープス)
うし・・・?
と思った瞬間、僕は闇に包まれた。不覚、敵の増援がきていたなんて・・・。
【フィダック城・西】
「ったく・・・なにをボーっとしてやがったんだあの馬鹿。」 (カノープス)
「仕方ありません、オリアスさん、デニムを頼みます!・・・フォローお願いします。」 (ミルディン)
(城門前からデニムの背後にウィングリングで移動)
「あ・・・ったく、どーすんだよここをよォ。」 (カノープス)
(ドラゴンと対峙中のカノープス)
「む・・・?」 (ハボリム)
「・・・ふん、どうやら増援がやっと到着したようだな。これで・・・形勢は逆転する!」 (マーキュリー)
「戦は数ではない。他人に頼っている様では、貴様の剣は竹光だな。」 (ハボリム)
「何ィ!?言わせておけばこの・・・!」 (マーキュリー)
(ざしゅっ)←ハボリムの刀がマーキュリーを袈裟懸けに斬りつける
「はぐっ・・・」 (マーキュリー)
(どさっ)
「・・・詰まらぬ勝利だ。我が剣もまた泣いておるやも知れぬ。」 (ハボリム)
はっ・・・。
なんだろう、悪夢にうなされていた気がする・・・。
「正気に戻った?デニム。」 (オリアス)
オリアス・・・そうか、確か僕は不意を突かれて・・・戦いは!?
「気がつきましたか。ではそろそろ幕にしましょう。」 (ミルディン)
(ざくっ)←最後のバクラム兵を倒すミルディン
・・・わざわざ待ってたんですか?
「ただの偶然ですよ。」 (ミルディン)
(あくまでも爽やかに口元をほころばせるミルディン)
うっ・・・気のせいか今、かすかに開いた口から覗いている歯が輝いたような・・・。
さて。正門は突破した。レオナールさん達の方がどうなったか心配だけど、正面がこの程度ならもう突破しているかもしれないな・・・。僕達も急いで合流しよう!