黒装束に身を染めて


●狂気の短剣●

よしっ、正門は攻略したぞ。後は・・・中だ!
僕達は正門からフィダック城の中へ突入を始めた。おそらく、レオナールさんの部隊は先行している筈だ。

【その頃のフィダック城内】
デニムの予想通り、レオナール隊はバクラムのフィダック城南門守備隊を撃破し、龍虎武神隊より先にフィダック城になだれ込んだ。

「暗黒騎士団の姿も見当たらないな・・・。既にフィダック城を放棄したのか?」 (ヴォルテール) 

「かもね。ま、その方がこっちにとってはあり難いけど。」 (サラ) 

「二人とも無駄口叩いてる暇はないぞ!城内にはまだバクラム兵が残っているかもしれない。掃討戦に移ろう。」 (タムズ) 

「・・・隊長?」 (フェスタ) 

「ああ、そうしてくれ。」 (レオナール) 

「何か・・・?」 (フェスタ) 

「いや、妙に静かすぎるという気がしないか?」 (レオナール) 

「はぁ・・・。しかし、ヴォルテールも言う様に、既にフィダック城防衛を諦めて陣を退いたのでは・・・?」 (フェスタ) 

「うむ・・・。フェスタも掃討に移ってくれ。私はデニムと合流する。」 (レオナール) 

「は。」 (フェスタ) 

何か気になっていたレオナールはそのまま、フィダック城の奥へと進んでいった。

「もぬけの殻、とは良く言ったものだ。今回ばかりは私の不安も外れたようだな・・・。 ・・・・・・ん?」 (レオナール) 

(奥から黒服に身を包んだ少女が現れ、近づいてくる)

「誰だ・・・?」 (レオナール) 

「・・・・・・レオナール?助けに来てくれたの?」 (黒服の少女) 

「!カチュアか!どうしてこんなところに・・・?」 (レオナール) 

(駆け寄るカチュア)

「私、暗黒騎士団にさらわれてここに連れ込まれたの。」 (カチュア) 

「暗黒騎士団に?一体何故・・・??」 (レオナール) 

「・・・デニムも来てるの?」 (カチュア) 

「ん?ああ、そろそろ突入してくる頃だ。」 (レオナール) 

「そう・・・相変わらず、戦争屋なのね。」 (カチュア) 

「カチュア、気持ちは分かるが・・・。」 (レオナール) 

あ、あれは・・・レオナールさんかな?
レオナールさんッ!

「噂をすればなんとやら、だな。」 (レオナール) 

(振り向くレオナール)

デニ」 (レオナール) 

(どすっ)←レオナールの背中に深々と短剣を突き刺すカチュア

「ッ・・・?!・・・・・・か、カチュア?君は・・・?」 (レオナール) 

「・・・あなたと公爵が、デニムをあんなにしたのよ。」 (カチュア) 

「な・・・にを・・・・・・」 (レオナール) 

・・・!?
レオナールさんの様子が、変だ!?後ろにいるのは誰だ!?

●姉弟の再会●

レオナールさんがゆっくり膝をついて倒れ込む間、僕は距離を詰めた。レオナールさんが敵にあんな無防備な背中を晒すわけが無い。誰かの裏切りに遭ったのか・・・!?
誰だ!あの黒服の女は・・・。

確かに、姉さんに似ているとは思った。でも、姉さんとは思えなかった。
姉さんといえば赤いかぼちゃパンツと頭の中で決め付けていたから、フレアスカートからすらっと伸びるなんて姿をしているわけが無いと頭から決め付けていた。そうしたかった。

けど、目の前にいる、レオナールさんの背中から短剣を引き抜いて血も拭わずに僕を見つめるその女は、姉さんだった。

「デニム・・・・・・。」 (カチュア) 

僕は、姉さんより先にレオナールさんに駆け寄っていた。
・・・レオナールさんッ!しっかりッ!

「でにム君・・・後を・・・・・・頼む」 (レオナール) 

(デニムの腕の中で事切れるレオナール)

レオナールさんッ!!

「あなたを戦争屋に仕立て上げた仕掛け人の一人よ・・・。死んで当然の男よ。」 (カチュア) 

・・・・・・!!

「駄目よ、そんな怖い顔しても。レオナールが死んだのは、あなたのせいなんですからね、デニム。」 (カチュア) 

僕の・・・?

「あなたが私より戦争屋を選んだんですもの・・・。デニムなら、私を置いていったりはしない筈だったのに・・・公爵とレオナールのせいで、あなたはすっかり戦争屋になってしまったのよ。あなたが気づかないうちに。」 (カチュア) 

なにを・・・言っているんだ、姉さん・・・?
僕が戦うのは、僕の意志だ!ヴァレリアに平和をもたらす為に、僕が選んだ道だ!

「そうかしら? あなたは変わっていったわ。ランスロットやレオナールみたいなろくでもない戦争屋に触発されて、いつしか自分の本当の意志を封じ込められていったのよ。
そして、あなたは私を捨てたわ。」 (カチュア) 

姉さん・・・ッ!

「でも、それでもいいわ。また私の元に戻ってくるなら・・・。 さあ、私と一緒にきなさい、デニム。」 (カチュア) 

姉さん・・・一体なにが・・・・・・?

●ロスローリアン●

「こんなところにいたのか、カチュア。」 (?) 

はっ・・・誰だ?!この声・・・まさか!

「タルタロス・・・。」 (カチュア) 

!!
姉さん、まさか・・・あいつらに・・・・・・!?

「戻ってこい、カチュア。ここは引き払う。」 (タルタロス) 

 

「・・・わかったわ。デニム、もし生きていたら、私の元へ戻ってきなさい。」 (カチュア) 

(カチュア、退く)

姉さんッ!」 (デニム) 

 

「ランスロット様、お急ぎ下さい。外でダーリンが待機しております。」 (オズマ) 

「はっはっは。あまりその呼び名を公で使うなよ、オズマ。」 (タルタロス) 

「あ・・・これは別に他意は・・・。」 (オズマ) 

ランスロット・タルタロス!それに、お前はあの時のテンプルコマンド・・・。

「・・・生きていたな、デニムッ!愛しい弟の仇ッ!ここで獲らせて貰おうかッ!」 (オズマ) 

「オズマ、事はエレガントに運んでくれよ。」 (タルタロス) 

ハッ!」 (オズマ) 

(ビシッ)←束ねた鞭を鳴らすオズマ

(それを合図にわらわらと出てくるバケツ達)

「無理をするなよ、オズマ。」 (タルタロス) 

(タルタロス、上がってきたカチュアを連れて脱出)

どうエレガントなんだ・・・。

「デニムッ!」 (カノープス) 

カノープスさんッ!みんなッ!
こんなところで死ぬわけにはいかないッ!覚悟しろ女王様!

「誰が女王様だ!」 (オズマ) 

「ハッ、オズマ様以外にはいらっしゃらないかと。」 (バケツ) 

やかましいッ!」 (オズマ) 

(ばしぴしーっ)←しこたまバケツを鞭でうちつける

「ああっ、女王様〜っ」 (バケツ) 

(どた)←断末魔

・・・・・・やっぱりこういう系統になるんですね。

「あたぼうよ。」 (天) 

●仇討ち、返り討ち●

まず、目の前にいる敵を倒さなければ、この先はない。
それにしても、まだセリエさん達のせいで勘違いされてるよ。おかげでこんなところで戦わなきゃいけないことになって・・・。いい迷惑だなホント。
・・・レオナールさんは?!

「・・・・・・」 (オリアス) 

(首を横に振るオリアス)

・・・・・・そうか。君達はレオナールさんを外へ。
姉さん・・・くそっ!

・・・

オズマ率いる暗黒騎士の部隊は、確かに手強かった。でもそこはそれ、ウチにだって歴戦の猛者がたくさんいる。装備面でもこっちが勝っているし、負けろという方が無理だ。
レベルが上がる度にダメージ値が大きくなってビビるけど、レベルの低い頃に換算すれば2〜30点もいってないんだ。大した事はない。

でも、いくら強いといっても連戦ではその力も思うように発揮できない。バケツごときに苦戦させられるという苦汁を味わいながらも、じっくり確実に敵を追いつめていった。

「オズマ!敢えて言わせてもらうが、僕はオズを殺していない!」 (デニム) 

「ふん、我々暗黒騎士団の精鋭一個師団を、ヴァレリア解放戦線の戦士たった三人で壊滅させたというのを真に受けろとでも言うつもりかッ!」 (オズマ) 

・・・もうッ!今度会ったら愚痴たれてやるッ!
オズマの武器・ラプチャーローズは鞭だけど、オズマほどの使い手なら十分殺人用武器となる。戦うとこれほど厄介なものとは思わなかった。
でも、どうにか戦っている内にオズマが先にへたばってきた。鍛え方が違うから、僕はまだ大丈夫。

「・・・お、おのれ・・・小僧の癖に生意気な・・・!」 (オズマ) 

これで終わりだッ!

(ざくっ)

「ぐ・・・ッ・・・・・・ば・・・ぁる・・・・・・」 (オズマ) 

(どしゃ)

ふうっ・・・。やれやれだ。
みんなの方も片付いたようだ。どうにか、フィダック城は陥落させられたな。

●幕●

バクラム兵を追撃していたレオナール隊のみんなも戻って来た。レオナールさんが死んでしまったことは、激しいショックを与えてしまった。でも、隠しておけることじゃないし・・・。
それに、姉さんのことはやっぱり僕にはショックだった。
どうしてなんだ、姉さん・・・。

そして、僕はこれからどうすればいいんです?レオナールさん・・・。

・・・・・・

「やっとかね。」

「やっとだな。」

「君には失望させられたよ。」

「うむ、この失態、どう取り返すつもりなのかね?」

「もはや猶予は残ってはおらんのだ。まだ可能と言い張るのかね?」

「その為の・・・」

まだ言うか、このッ!

(どげっどげっ・・・)

「君もいい加減エヴァという歳でもあるまい。」

「どこら辺がエヴァなんだこれの。」

黄色い薔薇の花束とかケーキとか、その辺りだろう。」

「ええい、見よ!君が失態を重ねる度にいい加減度数が高まっておるのだぞ!」

「君に軌道修正ができるのかね?」

「その為の・・・」

(ぼかっ)

貴様もわざわざネタフリする必要あるまいッ!

「今回は長いなぁ。」

「うむ。長いといえば今章も長かったな。分量といわず、期間もだが。」

「独自性を詰め込もうという努力の跡は少々見受けられるな。」

「ありがとうございます。」

「だが、大筋を外しておらず、なおかつ登場キャラクターの選定が無分別に過ぎるきらいがある。わかっておるのかね。」

「大体、何かねあの、あからさまに妙な連中の登場は。必要があるとでも言うのかね?」

「その為の・・・」

もーええっちゅーに!

(どんがらがっしゃーん)

綾波育成計画を発動せよ!

(ぐわらごらぐわきーん)

ハッパー!

やかましい貴様らーッ!

(どてぽきぐしゃ)

「珍しく俺そっちのけだな。 ま、そろそろ締めるか。ジジイ!

は。では僭越ながら三章の幕引きは小粒でぴりりと辛いウォーレン・ムーンが・・・。
ぃよーっ♪
【ちょん】


(地面に倒れ込んでいるデニム)
だ・・・だんだん人が増えてきているような気もするし・・・。
ああ、だ・・・駄目だ・・・意識が朦朧としてくる・・・・・・。

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