驚愕でもなさそうな事実


●天使の加護●

ブリガンテス城・・・まだ雪の残る北側の地区にある城だな・・・。
ジルマのおかげでウェオブリ火山をはじめとするバーナム山脈も問題なく通り抜けられるようになった。

やっほー♪デニム、元気〜?」 (ジルマ) 

ああ、おかげさまでね。

「あのね、今日はプレゼントがあるの♪」 (ジルマ) 

「僕にかい?」 (デニム) 

「うん。・・・んーっと・・・じあ〜ん♪」 (ジルマ) 

(ジルマ、指輪を取り出す)

「・・・指輪?」 (デニム) 

(こくこく)←肯くジルマ

「・・・僕に?」 (デニム) 

(こくこくこくこく)←肯くジルマ

「いや・・・嬉しいけど、僕は君の想いには応えられないよ・・・。」 (デニム) 

ちっがーう!」 (ジルマ) 

(すぱーん!)←巨大なハリセンがデニムの後頭部に炸裂

〜〜〜〜〜っ。
・・・最初っからボケを誘ってたくせに。

「えへへへへへ〜♪でも、その指輪は私のすっっっごく大事な人からデニムへのプレゼントだよ。大事にしてね♪」 (ジルマ) 

ジルマの大事な人・・・?ちょっと待って、誰のこと・・・?ってジルマ?!
・・・もうどっか行っちゃった。
誰なんだろう・・・?

●ガルガスタンの残党●

ともかく、ブリガンテス城に近づくに連れ、雪もちらついてきた。
カノープスさん、寒くないんですか?

「俺達は人間とはちーっと違うからな。ま、鍛え方も違うがな。」 (カノープス) 

「鍛えてどうにかなるかどうかはさておき、人間離れはしてますからね。」 (ミルディン) 

「お前最近饒舌だなぁ。」 (カノープス) 

「滅相もありませんよ。」 (ミルディン) 

(相変わらず爽やかな笑みを浮かべるミルディン)

どっちにしろ、カノープスさんを見てる方が寒いや・・・。

さて、バハンナ高原に到着した僕達はガルガスタンの残党に待ち伏せを受けたんだ!またか!

「レオナール隊長の口癖ではないが、ガルガスタンのしつこさには呆れるばかりだな。」 (ヴォルテール) 

「同感ね〜。」 (サラ) 

 

「この時を待っていたぞ、デニムッ!今こそ猊下のご無念を晴らさせてもらうッ!」 (ウラム) 

ヴォルテールの意見には全く非がないなぁ。ついでに、ボスの名前がまた「怨む」だ。お近付きになりたくないよな、ホント。

やかましいわ!」 (ウラム) 

・・・
寒い土地柄での戦闘には慣れていなかったけど、ここまで修羅場をくぐってきた僕達の敵ではなかった。

「・・・?デニム、あそこ見て。」 (システィーナ) 

「ん・・・・・・?誰だ、あれは。」 (デニム) 

見ると、更に高い場所に立ってこっちを見ている人がいた。鎧姿のシルエットが竜騎兵・ドラグーンに見えるけど・・・いつから見ていたんだ?

誰だ!?」 (デニム) 

(間)

「失礼した。覗き見するつもりはなかったのだが・・・君達に危害を加えるつもりはない。私もすぐに立ち去る。」 (竜騎兵) 

そういうと、その人はどこかに立ち去っていった。妙に味わい深い渋い声音ながらもよく通る声だった。一体誰だったんだろう?

●ブリガンテスの女僧侶●

さて、と。いよいよブリガンテス城だ。フィラーハ教団の指導者が、一体どんな要件で僕を呼んだんだろう?

「デニム、本当に一人で行くの?」 (システィーナ) 

「せめて護衛くらい連れて行け。一軍の指導者ともあろうものが、たった一人で歩き回るのは聞こえが悪いぞ。」 (バイアン) 

そうかなぁ・・・。大丈夫だよ、攻撃する為じゃないんだから。
・・・

止まれ!何者だ!」 (兵士A) 

「・・・?これは閣下、はるばるよくおいでくださいました。」 (兵士B) 

「閣下・・・?デニム閣下でありますか!これは失礼しました!」(兵士A)

・・・うーん、あんまり閣下閣下って呼ばれてかしずかれたりするのって、まだ慣れないなぁ。多分、慣れることはないと思うけど・・・。
番兵に先導されて道を進んでいくと、門前に青い装束を身に纏った女性が見えてきた。・・・雪が降りしきる中、あの胸元スリットでは寒いんじゃないかなぁ・・・?

「・・・?」 (青い服の女) 

(青い服の女、少し身を引く)

・・・・・・あ、今の僕の目線、やばかったかな!?

やがて僕は彼女の前に到着した。番兵の彼らも、彼女にはきちっと礼を取っている。ただの娘じゃないな・・・。
・・・君が、教団の指導者?

「いいえ、違います。私は教団の僧侶で、オリビア・・・と申します。 我が教団の指導者プランシーがお待ちしております。」 (オリビア) 

プランシー!?まさか・・・まさかその人は!?」 (デニム) 

「あなたのお父上です。」 (オリビア) 

父さん・・・!と、いうことは、セリエさんが助け出してくれたのか・・・。あの人のおかげで随分誤解を受けて厄介な目に遭ったけど、今は感謝の気持ちしか湧いてこないや!

でも、助け出されたといっても、暗黒騎士団の連中はきっと酷い仕打ちをしていたに違いない。きっとここから動けないんだろう。だから父さんは僕に来るように言ったんだ。
言葉さえも紡ぎ出せないほど消耗しているかもしれない。下手をしたら、死の床についているかも・・・!?
オリビアとか言ったね!?父さんの容体はどうなんだッ!

(オリビアの両肩を掴んで激しく揺さぶる)

「お、落ち着いて下さい!気をしっかり持って・・・」 (オリビア) 

落ち着いて気をしっかり・・・?やっぱり父さんはもう・・・!?
父さんッ!

(デニム、オリビアを置いて城内へ駆け入る)

「あ、ちょっと・・・!?」 (オリビア) 

ええいっ、時間がないというのに何を呑気な・・・!

(デニム、取って返してオリビアの腕をひっ掴まえて道案内をさせる)

「ちょっ・・・あの、私の話をちゃんと・・・」 (オリビア) 

そんな暇があるかッ!父さんはどこだッ!」 (デニム) 

●父と息子●

オリビアの道案内で、父さんのいる部屋に到着した。部屋に入った僕は、父さんの姿を見つけた。

「おおっ、よくきたデニムッ!元気そうでなによりだ。」 (プランシー) 

・・・オリビア?

「はい?」 (オリビア) 

見た感じ、今にも死にそうな風にはみえないんだけど、どういうことだ?

「だから、人の話を聞けって何度も言ったじゃない。勝手な妄想を膨らませて暴走したのはあなたでしょう?」 (オリビア) 

だって!落ち着けとか気をしっかり持てとかいうから、余計不安になったんじゃないか!

「ええい、落ち着けデニム!人のせいにするんじゃない。」 (プランシー) 

「父さん・・・。」 (デニム) 

「うむ、それでよい。・・・よくここまで頑張ったなデニム。だが、まだ仕事は残っておる。」 (プランシー) 

「わかってるけど、その前に・・・」 (デニム) 

「うむ、カチュアのことだな。」 (プランシー) 

父さんは、姉さんのことを包み隠さず教えてくれた。本当の母親であるマナフロアのこと、産まれてきた姉さんを引き取ったブランタのこと、それを父さんが実の娘として育てたこと・・・。
そして、やがて実の娘の様に思うようになり、ドルガルア王の王子が亡くなった時にもこのことを言い出せずにいたということも。

「・・・わしはカチュアを愛しておる。実の娘と同じに・・・。できれば、普通の娘のままでいて欲しかったが、こうなってはやむを得まい。デニムよ、カチュアを助けてやってくれ。」 (プランシー) 

「わかってるよ。僕もそのつもりだから、心配しないで。」 (デニム) 

「・・・もう一つ、大神官のモルーバ様を探し出すのだ。ええっと・・・あとは・・・。」 (プランシー) 

あとは?

●事実●

わしとブランタの関係、気にならんか?」 (プランシー) 

父さんとブランタの・・・?確かに、何故ブランタが父さんと関わり合いを持つんだ?

「うむ、それは単に、わしらが兄弟だからだ。」 (プランシー) 

兄弟?なるほど、それなら確かに関わり合いが・・・。・・・・・・。待って父さん、それって・・・?

「因みにわしのカミさんもバクラム人だ。必然的に、お前もバクラム人だ。」 (プランシー) 

僕が!?え?だって父さんと僕等の姓はパウエルでゴリアテがハイムのデコっぱちだから・・・。
な、なんでそんなことを・・・!?そんなこといきなり言われたって・・・!!

「今のお前なら、それを受け入れられる筈だ。それとも何か?お前はウォルスタ人の為だけにしか戦えんのか?お前は何を目指して戦っておるのだ? お前が何人であるかは些細な問題に過ぎない。
肝心なのは、お前が何をするかだ。お前がしようとしていることは、人種の違いで揺らぐようなちっぽけなものか?ん?」 (プランシー) 

・・・・・・。
確かに、僕がバクラム人であろうと、今の僕にとっては関係ない
でも、さすがにショックだろう、とは思うでしょ?父さん。

「うむ、そりゃまあそうだろう。すまん。」 (プランシー) 

しかし・・・そうすると、僕がゴリアテに引っ越す前って、ハイムにいたの?

「そうだ。」 (プランシー) 

「・・・覚えていますか?あなたはハイムの教会で、よく私達と遊んでいたのです。」 (オリビア) 

私達・・・?」 (デニム) 

「そう、私達姉妹は、あなたの遊び相手でした。とりわけ仲が良かったのが、同い年の子・・・。 ある日、湖のほとりで遊んでいたら、二人は足を滑らせて湖に落ちてしまった・・・。」 (オリビア) 

・・・確かに、湖に落ちておぼれかけたのは覚えている。それが、ハイムでの出来事だったのか・・・。それじゃ、君があの時の・・・?

「そう。その時の傷が、まだ残っているわ・・・。」 (オリビア) 

(オリビア、左側の髪をかきあげ、額の傷を見せる)

そうだったのか・・・。その僕達を助けてくれたのが、カチュア姉さんだったのか?

「いいえ、私達を助けたのは一番上の姉さんよ。」 (オリビア) 

あれ?確か、僕を助けてくれたのは姉さんだった様な・・・。

「(くすっ)デニムは私の姉さんでも『お姉ちゃん』って呼んでたわ。」 (オリビア) 

あ・・・そういうことか。

「はっはっは。思いの他冷静に受け止めてくれて嬉しいぞ。ではオリビア、後のことは君がよろしくやってくれ。」 (プランシー) 

「はい、叔父様。じゃあ、よろしくねデニム♪」 (オリビア) 

「デニム、わしも一緒にいきたいところだが、わしも一応教団指導者という立場があるのでな・・・。簡単には動けんのだ。オリビアがわしの代わりだ。」 (プランシー) 

わかったよ父さん・・・。

「デニム、これまでも辛い選択を強いられてきたろうが、現実を見据えて、理想を実現する為のより良い選択を行なうのだ。カチュアのこと、くれぐれも頼むぞ。」 (プランシー) 

はい。・・・父さん、行ってきます。

僕達は、父さんのいる部屋を後に、みんなの待機している場所に向かっていった。

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