王女


●そうはいくかい●

バーニシア城の城門を守る山猿を撃退した僕達は、中に突入した。主戦力を除いて、残りを二分して姉さんを探し出して保護するように指示を出す。

「おそらく、ここにはランスロット・タルタロスがおる筈じゃ。カチュアも奴と一緒であろう。」 (バイアン) 

そうかもしれない。そうであって欲しくないけど、多分・・・。
以前、モルーバ様が僕に問い掛けたことを思い出した。僕は姉さんと戦わなきゃいけないのか!?
・・・駄目だ、姉さんに剣を向けるなんて、僕にはできない!

しっかりしろ、デニム!お前は解放軍のリーダーだろうが。」 (カノープス) 

でも・・・!

「悪い方に考えを巡らせていてはどうにもなりませんよ。それでは、助けられるものも助けることができなくなってしまいますよ?」 (ミルディン) 

ミルディンさん・・・。
わかりました。今は、敵を倒すことだけを考えます。
・・・
比較的大き目の部屋に出た。部屋というより、閲兵か何かに使うんじゃないかって構造だ。

「待っていたぞ、デニム・パウエル!」 (騎士) 

おっ、お前は・・・ランスロット・タルタロス!

「・・・いや、デニム・モウンと呼ぶべきか。」 (タルタロス) 

「知っていたのか・・・。だがそんなことはどうでもいい。ベルサリア王女を・・・姉さんを返してもらおう!」 (デニム) 

「返せ、だと?フハハハハ!戯れが過ぎるぞデニムよ。王女は自ら我々と行動を共にしておるのだからな。そもそも、彼女を捨てたのはデニム、お前ではないか。」 (タルタロス) 

「捨ててなんかないッ!姉さんが勝手にそう思い込んでるだけだ!」 (デニム) 

嘘よッ!」 (カチュア) 

(カチュア、タルタロスの隣に姿を見せる)

「あなたは私を必要としてないわッ!私はただ、側にいて欲しかっただけなのにッ!」 (カチュア) 

ね、姉さん・・・!

●姉と弟●

姉さんはやっぱりタルタロスと一緒にいたのか・・・。

「・・・だからって、暗黒騎士団なんかと手を結ばなくても良いじゃないか!姉さんは利用されてるだけだ!」 (デニム) 

「利用されていてもいいわ。少なくとも、あなたより私を必要としてくれている!」 (カチュア) 

「そうだカチュア。我々は何より、ドルガルア王の正統の後継者である王女・ベルサリアを必要としている。すなわちカチュア、君だ。」 (タルタロス) 

「どう?デニム。あなたは彼らほど、私を必要としてるの?」 (カチュア) 

こいつらは嘘を付いている!姉さんが思っている『必要』は、こいつらの『必要』とは違うんだッ!」 (デニム) 

「そんなことはどうだっていいわ!分かってるのは、あなたが私を必要と思ってないってことだけよ!それだけで十分だわ。」 (カチュア) 

(ばっ・・・すたっ)←カチュア、最上段から下へ飛び降りる

戻れカチュア!ここで彼らと戦っても何の得にもならん!」 (タルタロス) 

「臆病風に吹かれたの?大丈夫よ、私があなたの側にいる限り、あの子に勝ち目はないんですから。」 (カチュア) 

「・・・どこからその自信が来るのかさっぱりわからんな。」 (タルタロス) 

姉さん・・・僕が姉さんと戦えないのと違って、姉さんは僕と戦えるんだね・・・。

「わかってたろうが。出てくるぞ、応戦だ!カチュアの足を止めておけ。残りはバケツ連中を一気に殲滅だ!」 (カノープス) 

カノープスさん・・・。

「助けるんだろ?ボケッとしてんじゃねぇぞ!」 (カノープス) 

・・・はい!

●タルタロスとの戦い●

暗黒騎士団のバケツ頭は一見するとみんな同じに見えるから、装備で判断するしかないんだけど・・・。
僕達って、使う時以外は構えもしないんだよね・・・。

「そりゃ便宜上仕方ねぇんだよ。俺だってほれ、バルダーアーマー装備してることになってるだろうが。」 (カノープス) 

(背中の翼をばたつかせてみせる、上半身裸のカノープス)

そうなんだよね。カノープスさんって、鎧が装着できない人種だと思ってたのに、ちゃんと装備できちゃうんだよね。バトルブーツとかも絶対足の形違うのに履いてるし・・・。

「それ以上余計なこと言うな。」 (天) 

ふーんだ。

ともかく、バケツ頭は肉弾戦もこなす上に魔法まで使う奴がいる。しかも誰が誰だか分からないときたもんだ。卑怯者とは連中のことだよな。
でも、僕等だって伊達に死者の宮殿を制覇してはいない。そんなバケツ頭を次々に屠っていく。姉さんにはスロウムーブでチンタラやってきてもらう。

「くっ・・・卑怯よデニム!私と戦うのがそんなに怖いの!?」 (カチュア) 

うん。いろんな意味で怖いよ姉さんは。

「仕方の無い王女様だ。」 (タルタロス) 

「タルタロス・・・!」 (デニム) 

(対峙する両名)

「デニム、我々に従え。我々と戦うということは、ベルサリア王女に刃を突きつけるのに等しい。逆賊の汚名を受けたいか?」 (タルタロス) 

「突きつけるも何も・・・僕達の話を聞かないで感情に任せて戦いを挑んできたのは姉さんじゃないか。今の姉さんはベルサリア王女でも何でもない、ただの我が侭でヒステリーな女だ!」 (デニム) 

言ったわね、デニムッ!タルタロス、構わないから殺しなさいッ!」 (カチュア) 

「・・・ま、それについては否定できんな。」 (タルタロス) 

「姉さんだからね。」 (デニム) 

なっとく。」 (デニム+タルタロス) 

納得してんじゃないわよッ!」 (カチュア) 

タルタロスはさすがに強かった。けど、僕だって伊達に今まで戦い抜いてきたわけじゃない。それに、もう殆どバケツ頭が残ってないタルタロスに対して、僕にはみんながいる。勝てない筈が無い。

「・・・それは、フクロではないのか?」 (タルタロス) 

「決闘かなんかと勘違いしてるんじゃないか?」 (デニム) 

「フハハハ・・・確かにな。仕方あるまい、ここは退かせて頂こう。」 (タルタロス) 

(タルタロス、転移石を取り出す)

「ちょっ・・・私はどうなるのよタルタロス!」 (カチュア) 

「さらばだデニム。王女は好きに使ってくれて結構だ。」 (タルタロス) 

(タルタロス、消える)

「・・・・・・そんな・・・。」 (カチュア) 

姉さん・・・。

●説得工作●

タルタロスは姉さんをおいて逃げ出した。それはつまり、姉さんの存在が彼らにとってどういうものかを、姉さんに知らしめた・・・と思う。

こないでッ!・・・私をどうするつもり!?」 (カチュア) 

「どうって・・・姉さん、僕と一緒は嫌なの?」 (デニム) 

(デニム、カチュアを見つめる)

「い、嫌ってわけじゃないけど・・・けど・・・私はあなたの許へは戻れないわ。」 (カチュア) 

「どうして?」 (デニム) 

「だって・・・私はレオナールを・・・・・・」 (カチュア) 

「姉さん、レオナールさんは暗黒騎士団の奴等に殺されたんだ。姉さんが気に病むことはないんだよ。」 (デニム) 

「デニム・・・デニムはどうなの?私を許せるの?」 (カチュア) 

「・・・何がどうなったって、姉さんは僕の姉さんだよ。 姉さん、父さんが言っていたよ。自分を『父さん』と呼んでくれる姉さんを、実の娘以上に愛しく思ったって。僕も、父さんも、姉さんのことを愛しているんだ。」 (デニム) 

「デニム・・・。」 (カチュア) 

姉さん!」 (デニム) 

(二人、歩み寄って抱き合う)

 

「いいシーンだねぇ。」 (カノープス) 

「ええ。血の繋がりが無くても、彼らは姉弟なんですね。」 (ミルディン) 

「・・・ちょっと、様子がおかしい気がしない?」 (オリアス) 

 

「愛してくれるのね、私を・・・。」 (カチュア) 

「当たり前じゃないか、姉さん。」 (デニム) 

「・・・私とあなたの間には血の繋がりが無い、ってことは承知してるわよね?」 (カチュア) 

「え?うん・・・何を改まって言い出すかと思えば・・・。」 (デニム) 

「つまりは、相思相愛ってことよね。」 (カチュア) 

「ねっ・・・姉さん?カチュア姉さんッ!?」 (デニム) 

カチュアで構わないわ、デニムッ!」 (カチュア) 

うわーっ!?なんて展開!?

(ぷすっ)←カチュアの首筋に細い針が刺さる

「ウ・・・?」 (カチュア) 

(どさっ)←カチュア、倒れる

姉さんッ!?こ、これは一体・・・?

「危ないところだったな、デニム。」 (影) 

(離れた場所で吹き矢を構えている影)

影?姉さんに何をしたんだ!

「おいおい、助けてやったお礼くらい言ってもいいだろう。心配するな、気を失っているだけだ。暫く安静にしていればじきに気がつく。」 (影) 

本当だな!?・・・しかし、僕は姉さんに対して、これからどう接したらいいんだ・・・。

「棟梁、これって巨像も一撃で眠るほどの麻酔なんじゃないですか?」 (忍A) 

「うむ?ま、ものがカチュアだけに心配はあるまい。」 (影) 

うわっははは!」 (影+忍A) 

なんだって!?
姉さん、姉さんッ!?

●次なる話へ●

なんだかんだいって姉さんは命に別状はなかった。でも、医者の見立てでは2〜3日は目を覚まさないだろうって話だ。仕方が無いなぁ・・・。

「2〜3日か。丁度いいな。」 (影) 

何がだよ、この暗殺者!

「何を怒ってるんだ。まあ聞け。この先の町でな、沈没船の引き上げが行なわれているのだが、その引き上げ作業に暗黒騎士団が関わっているらしい。」 (影) 

「暗黒騎士団が?ただの沈没船じゃない、ってことか・・・。」 (デニム) 

「うむ。その中にはコマンド級騎士の姿もあったらしい。グリムスビーはさして離れているわけじゃない。一仕事したら丁度帰ってきた頃にカチュアも目を覚ますという算段だ。」 (影) 

元を正せば、お前が姉さんをそうしたんだろうが。
・・・暗黒騎士団とバクラム軍は?

「バクラム軍はセリエ隊の進軍を阻止するのに手いっぱいだ。暗黒騎士団は相変わらず動きを見せない。余程今回のことが癪に障ったらしい。」 (忍B) 

今回のことって・・・やっぱりあの情報って、そういうことか。
まだ動きを見せないということは、バーニシア以東には今回の僕らの動きはまだ届いてないってことか。或いは・・・見捨てられたのか?グリムスビーのコマンド級騎士は。

まあいい、いずれにせよ気になる。姉さんはここに安静にしといてくれ。僕たちはグリムスビーへ向かう。

「じゃあ、私達が残ってるわね。」 (システィーナ) 

「デニム・・・。」 (オリビア) 

・・・・・・どことなく不安は残るけど、まあいいか。

暗黒騎士団と沈没船・・・一体何を運んできたんだ?

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