その晩、僕達はアルモリカ城に駐留した。少しゆっくりしているのは、僕の方へ新たな情報も届いていないことを確認して、今の膠着状態は暫く続くだろうと判断した為でもある。
ただ・・・。
「君達が別の調査もやってることは分かるけど、なんでいつも仕分けてくれないんだ?」 (デニム)
「ふむ、浮気というキーワードはお気に召さぬか。」 (影)
ええい、お気に召したらどうするつもりなんだ全く。
でも、そんな中にまっとうな情報が混ざってたりするからうっかり見逃すこともできない。厄介な話だ。
・・・・・・ん?
エクシター島で謎の爆発?
詳しい話を聞くと、どうやらそれは魔法によるもの、と考えられているらしい。でも、それよりも僕達の気を引きつけたのは、数週間前にそのエクシター島にやってきた、ある魔術師のこと。
その魔術師の名は、ニバス・オブデロード!
奴の名前を聞いて、黙っていられるわけが無い。僕達はフィダック城に戻らず、ニバスが根城にしていると目される、エクシター島の地下大迷宮、通称『死者の宮殿』へ向かうことにした。
エクシター島。
ここに到着するまでに結構余計な邪魔も入ったけど、大して被害があったわけでもないし、割愛するね。
「気をつけることね。死者の宮殿の財宝とかを狙っての盗掘者たちはもとより、バクラム軍も来ているかもしれないから。」 (シェリー)
「・・・なんでまたバクラム軍が?」 (デニム)
「死者の宮殿には、強大な力を有するアイテムや魔術書が眠っているとされるの。捨て置く筈がないでしょ?」 (シェリー)
なるほど、そういう話なら納得もいく。
・・・
で、死者の宮殿にやってきたんだけど・・・。砂嵐が酷くて・・・。
「ずんっ、ちゃ〜ちゃら〜らら〜、ちゃら〜らら〜、ちゃ〜ら〜ら〜♪」 (天)
・・・それって塔でしょ?
(間)
「うわっはははは!」 (天)
(脱兎する天の声)
なにがしたいんだ全く・・・。あ、砂嵐まで止んだ。
ともかく、死者の宮殿の入り口はすぐにそれとわかった。バクラム軍の地上部隊が周囲の警戒をしていたからだ。
・・・
数もそれほど多くなかったから楽勝だったけど、宮殿を降りていくとすぐに敵本隊らしき部隊と遭遇した。
「おやおや、解放軍もやってきたのかい・・・。やれやれだねぇ。」 (ファルファデ)
「貴様らの思い通りにはさせないぞ。」 (デニム)
「大方、竜言語魔法が目当てだろうけど、ありゃあたしの獲物さね。」 (ファルファデ)
勝手なこといってら。
・・・
死者の宮殿は毒性の強いガス沼にところどころ侵食されてて、それだけでも大変なところだ。おまけにこのファルファデっておばさん、毒使いときたもんだ。厄介さも倍増って感じだ。
でも、スロウムーブやら何やらで周りの連中を潰しておいて最後に止めを刺すのは、そんなに難しくはなかった。
「これは役に立つな・・・。」 (フォルカス)
んー・・・?これって、ワープリング?へー、バクラム軍って結構いいもの支給されてるんだね。僕等も結構凄いと思ってたけど、上には上がいるもんだ。
さて、先に進もう・・・っと、下に降りようっていうのが正確かな。
多分、地下2階だけど、部屋に入ると何か争ってるような物音がする。
「しまった、こいつらは神聖系魔法でないと・・・!」 (男)
・・・誰かが戦ってるみたいだ。よくみれば、アンデッド達にウォーロック風の男が囲まれてた。
「こんなところに一人で入り込むなんて、どういう神経をしているんだ?」 (アロセール)
神経はともかく、放っておけないよ。取り敢えず助けてやらないと・・・。
「わしの出番だな。」 (プレザンス)
・・・気のせいか、嬉しそうに見える。
プレザンスさんの働きで、ここに巣食っていたアンデッドは浄化された。一撃で終わるって言うのは楽でいいね。
「ありがとう、助かったよ。」 (男)
彼はラドラムと名のった。彼も竜言語魔法を手に入れる為にここにやってきたといってるけど、一人はさすがに無茶だよなぁ。
「だって、友達いないんだもん。・・・そうだ、君達と一緒に行かせてもらおう。」 (ラドラム)
「ええ?ちょ、ちょっと待って下さい。僕達は・・・。」 (デニム)
「知ってるよ、解放軍だろう? 僕の目的は竜言語魔法を手に入れることだけど、僕を仲間にしてくれたら、ここを出た後も君達の戦いに力を貸そう。竜言語魔法は強力な術だ。僕ほどの魔術師になれば、桁外れの威力を発揮する。戦いの役に立つと思うよ?」 (ラドラム)
うーん・・・・・・この人を放っておいて、もし死なれたら後味悪いもんなぁ・・・。
「いいでしょう。」 (デニム)
「うん、それでいい。僕が仲間になれば100人力・・・いや、100人チカラ?」 (ラドラム)
「どっかで聞いたようなフレーズだなぁ。」 (カノープス)
「はっはっは。気のせいでしょう。」 (ラドラム)
意外ととぼけた人だなぁ。
次の階に進んだ僕達は、おびただしい数の石像が鎮座している、広いフロアに出た。
しかし・・・なんとも悪趣味な石像だ。今にも叫び出しそうなのや、何かに助けを求めるように手を伸ばしているのとか、まるで・・・。
「シッ!・・・誰か居るわ。」 (システィーナ)
「!?」 (デニム)
(一つの石像の影ですすり泣いている少女)
「・・・・・・君は?」 (デニム)
「・・・。」 (少女)
一体、彼女はどうしてこんなところに・・・?
「みんな死んでしまったわ・・・。冷たい冷たい、石になってしまったの・・・。」 (少女)
「石・・・?って・・・・・・まさかこの石像!?」 (デニム)
「でも、仕方が無いわ。この聖地に邪な考えを抱いて足を踏み入れたんですもの・・・。」 (少女)
「聖地・・・?」 (デニム)
「ここはアスモデ神の神殿。使徒だけが入ることを許された聖なる場所。足を踏み入れたあなた達が悪いのよ・・・。」 (少女)
(徐々に表面皮膚や頭髪に変化を見せていく少女)
「き・・・君は、いや、お前は一体!?」 (デニム)
(ぼんっ)←煙。中の少女は既に変貌を遂げていた
「私の名はザドバ。お前達も物言わぬ石像になるがいいッ!」 (ザドバ)
ごっ、ゴーゴン!?
彼女の変身をきっかけに、どこからともなく得体の知れない戦士達が現れた。くそっ、用意周到待っていたのか!
(ザドバの眼の黒目が奇妙に変化する)
「イーヴル・アイズ!」 (ザドバ)
(カッ!)←ザドバの眼から怪光線
「デニムッ!」 (カノープス)
くっ・・・!?
咄嗟に盾を構えた僕は、それでも強い衝撃波を受けた。他のみんなも盾を構えた人は大丈夫だったけど、幾人かが石化し始めている!
これは・・・噂に聞いた邪眼・・・!!
・・・
初めて相対する敵だったけど、戦力差というものが元々あるから僕等の方が押していった。ザドバの能力も、盾をかざせば防げることが分かったので、もう後はザドバを倒すだけとなった。
(どかっ)←ザドバに致命の一撃
「ごふっ!」 (ザドバ)
(吐血し床に倒れ込むザドバ)
「あ・・・!」 (デニム)
(見る間に少女の姿に戻るザドバ)
それを見た僕は、彼女に近寄っていた。
「く・・・苦しいよ・・・た、助け・・て・・・・」 (ザドバ)
彼女は、ひょっとして・・・?
(ラドラム、いつのまにかザドバの側に)
「そうだ、元々はただの人間だ。」 (ラドラム)
ラドラムさん?・・・いつの間に。
(ラドラム、ザドバを抱きかかえ、額に手をかざす)
「あ・・・・・・」 (ザドバ)
(苦悶の表情が消え、安らいだ表情になるザドバ)
「あり・・が・・・と・・・・・やく・・そ・・・」 (ザドバ)
(そのまま事切れるザドバ)
「・・・ごく普通の少女だったろうに。」 (ラドラム)
(ラドラム、ザドバをゆっくり横たえる)
・・・一体、どういうことなんだ。
「この死者の宮殿は本来、彼女の言った通りアスモデ神の神殿だ。ここの真の番人が、彼女を何らかの形で捕らえ、浅い階層の番人に仕立て上げたんだろう。」 (ラドラム)
「真の、番人・・・?」 (デニム)
(ラドラム、溜め息)
「君はこの死者の宮殿のことを知らずにやってきたのか?認めたくないものだな、若さゆえの無鉄砲というのは。」 (ラドラム)
「・・・お前の縁故関係か?」 (カノープス)
「違うわ馬鹿。」 (天)
「・・・というと、この更に下に通じる道が隠されてるわけね?」 (シェリー)
「・・・本当に知らないのだな。まったく呆れ返るばかりだ。」 (ラドラム)
「(むっ)じゃあ教えてよ。どうせ私達は何も知らないわよ。」 (シェリー)
「何を拗ねているんだ。・・・ほら、そこの壁。」 (ラドラム)
「え・・・?これか?」 (フォルカス)
(フォルカス、壁の前に立つと大きな音と共に壁が引き戸の様に開いて行く)
「・・・和風、ですか?」 (デニム)
「なにがだい?」 (ラドラム)
ま、ともかく奥に進もう。元々の目的はニバスなんだから・・・。