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定価

税込2,860円(本体2,600円)

出版社
青娥書房
webショップリンク

『小悪魔の大辞典:機知と諧謔の断章たち』(2025年6月刊行)
内容

46冊の著作を持つ博覧強記の作家・福井栄一が世に問う、見出し語7,500を擁する大辞典。
エスプリ、諧謔、蘊蓄、イチビリの連射砲──これであなたは来世まで話題に困らない。

この本は、質・量ともに圧倒的である。
最初にこの企画が持ち込まれた時、編集部一同は盛大に首を振った。
「150万字? 7,500見出し? 1,500ページを優に超えます。この出版不況にとても無理です。勘弁してください……」
しかし、時はAI時代。ベテラン作家からの印刷原稿持ち込みならぬ、Eメールによる原稿投下。(ワードで1200ページ超え)読み始めると、実に面白い。これが、そのボリュームゆえに世に出ないのは文化的損失ではないか──そう思わされた。

弊社はこれまで、串田孫一や金子光晴の名作を埋もらせぬよう、初版を刷り続けてきた。
そして今、彼らの書籍は容易に全国の図書館で読むことができる。
では、福井氏のこの超大作(量的には間違いなくそうである)を、このまま埋もれさせてよいのか?
いや、よくない。

そこで我々は、紙の本専門の出版社としての禁を破り、初の電子書籍出版に踏み切った。
この本があまりに長大であるため、後から企画した6冊に発行順を抜かれたが、これは紛れもなく中核に位置づけられる一冊である。

著者がインスパイアされたというアンブローズ・ビアスの名著『悪魔の辞典』の見出し語は約1,000。
日本文学史上最初の大作たる『万葉集』が4,500首。
かたや本書は7,500見出し──そう、「小悪魔の大辞典」と名乗りたくもなる。
"小悪魔"としたのは、先達ビアスへの敬意からであり、
"大辞典"の方は、本作にこそふさわしいと自負している。

本書の7,500見出しは、いくつかの系統に分類可能だ。
編集者の視点から見れば──蘊蓄系、皮肉系、諧謔系、イチビリ系(著者は"上方文化評論家"を自称)、ブラックユーモア系、お笑い系、エスプリ系、肩すかし系(普通に解説しているが、かすかに捻りあり)などなど。
それらを一々説明するよりは、ネタバレ覚悟で4項目だけ抜粋する。7,500あるうちの4つである。どうかご容赦いただきたい。

死(し)
若者の背後、老人の眼前にある。
(諧謔系、いや"グサリ系"とでもいうべきか)

インスタ(いんすた)
食べる前ではなく、食べ終わってからの料理皿の写真をアップしてくれた方が、撮影者の人となりを理解しやすい。
(イチビリ系)

方向(ほうこう)
看護師:「先生、大変です。当院の健康診断で『異常なし』と言われた男性が、玄関を出た途端に倒れて亡くなりました」
医師:「落ち着きなさい。すぐ玄関へ行って、彼の身体の向きを変えておきなさい。当院へ"入ろうとしていた"ように見せかけるんだぞ」
(ブラックユーモア系)

メンバー(めんばー)
地獄のサッカーチームが天国に挑戦状を叩きつけた。天使が言った。
「君らは忘れているようだが、名選手はみんなこっちのチームにいるんだぞ」
すると悪魔が曰く、「それがどうした。審判は全員、こっちのチームにいるんだぞ」
(ユーモア系)

「方向」と「メンバー」については、見出し語がそのままの形では一度も本文中に出てこない。
どうやってこの解説が導き出されたのか──作者の天才を感じざるを得ない2項である。

福井栄一氏は、京都大学法学部大学院を修了後、メガバンクに就職。
ある日、上方舞を観て一念発起、銀行を退職し、文筆の道へ。
文芸書の編集に携わるなかで、知識人と呼ばれる方々に数多くお会いしてきたが、
福井先生ほどの博覧強記の人物には出会ったことがない。
そのライフワークを、我々が電子書籍という形で世に問えるのは、非常な光栄である。

ライフワークと記したが、先生はまだお若い。
──実は、まだ続きがあるそうである。恐ろしや。

目次
まえがき
本文は、「あ〜を」の五十音順配列
あとがき
著者略歴
奥付
(全1,617頁)
マスコミ
●2025年7月2日(水)箕面FMラジオ・タッキー81.6『植田洋子 と tea for two』で紹介されました。